浸透してきたTOBYOプロジェクト

ajisai

新宿御苑では紫陽花が咲き始め、ホトトギスが鳴いている。6月。早いもので、もう今年も一年の半分が過ぎようとしている。だが、振り返って懐かしい過去などベンチャーにはない。ひたすら前へ、全速前進であれ匍匐前進であれ、とにかく前進しなければならない。

「闘病体験の共有と傾聴」を旗印とする私たちのTOBYOプロジェクトは、いよいよdimensionsの来月サービスインへ向け秒読み段階だ。しかし、この時期に来てプログラマがダウンしてしまい入院。早い回復を祈るのみだが、残りの工程は見えているので、予定通り来月サービスインするつもりだ。

最近いろいろな人から聞くのだが、どうやらTOBYOがビジネス界とくに製薬業界でかなり知られてきているらしく、TOBYOを仕事に利用している方も多いとのことである。うれしいことである。それもTOBYOがというよりも、TOBYOを介して、闘病ユニバースに公開された闘病体験ドキュメントに対する関心が高まっていることがうれしい。これらドキュメントは本来、闘病者のみならず、医療関係者にとっても非常に高い価値をもつデータでありながら、これまで効率よく利用する手段がなかったのである。私たちが着目したのはこの「手段」を何らかの形で提供することであった。そして、TOBYOは闘病者のために闘病体験を共有する手段であり、dimensionsはプロフェッショナルの方々のための闘病体験を傾聴する手段なのである。 続きを読む

講演「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」のお知らせ。

TOBYO_signature_s

このたび「医療の未来を考える会」様からのご依頼を受け、来る6月19日(日)に開催される「第4回 医療の未来を考える会」で講演をおこないます。全体のテーマは「医療情報と患者さん Health2.0で医療が変わる」とのこと。当方は「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」と題し、「闘病ユニバースの生成、TOBYOプロジェクトの現状、ソーシャル・リスニング、dimensions」などを中心にお話しする予定です。

特に今年に入ってから、私たちは「リサーチ・イノベーション、ソーシャル・リスニング」など新しいテーマをTOBYOプロジェクトやdimensionsに導入しようとしているのですが、現時点における進捗状況をお伝えできると思います。どうか奮ってご参加ください。

実施要領は下記の通りです。またお申込みは、申し込みフォームを利用できます。 続きを読む

雨のdimensions

dimensions_logo_mark

なんだか昔の歌謡曲みたいなエントリタイトルだが、終日雨。雨の中をミーティングに出かけたが、雨のためでもないだろうが道を間違え右往左往。目的地に遅れて到着。失礼。

dimensionsについてディスカッションをおこなったが、いくつか重要な「気づき」をいただいた。dimensionsでは病名ごとに闘病ドキュメントを薬品、治療法、機器、医療機関の四つの次元に分けて分類しているが、これではある意味、患者体験の全体像が分解寸断されていることになる。つまり、患者体験の連続した全体像をコンパクトに再構成する必要があることに気付かされたのだ。感謝。

ではこれをどうやって実現するかだが、dimensionsの基本仕様は変えずに、オプションメニューとして追加することになる。具体的にはオーダーを受けてターゲット病名を決め、限定した病名のデータだけを対象に二次加工をおこなう。データ処理だが、エントリ日付から時間軸を構成し、すべての次元のマーカー(キイワード)をマッピングしていくようなことになるだろう。大雑把だがそんなイメージだ。今後、細かく詰めていく。 続きを読む

機は熟した。ソーシャル・メディア・マーケティング。

dimensions_tag_cloud

連休も終わり、今日からまたいつもどおり街は動き始めた。当方、仕事をしながら中途半端に休んだので、連休明け早々、なんだか疲れが出てきたような気がする。細野さんや岡本太郎からエネルギーはもらったのだが、週明けからミーティングの予定が狂ったりもして、調子よくない。今日など、帰ってワインなど飲んでぐっすり睡眠を取りたいところ。

ここのところ、やはりdimensionsに力を入れて取り組んでいる。一方ではバグフィックスなどシステム修正の山をこなさなければならないのだが、やはりこのサービスに関してどんなパーセプションを作り上げるかということが問題だ。そしてソーシャル・メディアの時代というフォローの風を生かしつつ、どう「リサーチ・イノベーション」へつないでいくかも重要だ。「リサーチ・イノベーション」については、2月にこのブログにポストした三篇の論考エントリが理論的支柱になるだろう。

一方、先月、広告業界では電通が「ソーシャルメディアを活用したマーケティング分野のソリューション開発」として「ソーシャルメディア上の声を『傾聴』し、企業のマーケティング戦略に活用する『ソーシャルリスニング』のソリューション手法=Sora-lis」を発表し、博報堂グループはソーシャル・メディアをテーマとするグループ横断組織「博報堂DYグループ・ソーシャルメディア・マーケティングセンター」を発足させた。
続きを読む

TOBYOプロジェクトのビジョン再考

 Shijuku_Sky110419

前回エントリで日本の「失われた20年」について触れた。たまたま読んだ「郵便的不安たちβ」(東浩紀、河出文庫)の冒頭「状況論」に80年代-90年代を総括する優れた評論があり、なるほど「失われた20年」は「バブルの80年代」の検討抜きには理解しがたいのかも知れないと気づいた。思い返せば、80年代という時代はポストモダニストと企業戦士が並び立つような奇妙な時代であった。「ニューアカ」と呼ばれた現代思想ブームと「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が矛盾せずに並立するような時代であった。この中で無邪気に「世界の先端を行くポストモダン社会=日本」という論陣が張られたが、今にして思えば、これらは古い「日本システム」を無批判に肯定する方向をもっていたのではないか。ポストモダニストも企業戦士もいつの間にか姿を消したが、無批判に「日本」を称揚する変奏曲は、さまざまに趣向を変えながらその後も反復されている。

ところで「郵便的不安たちβ」という評論集だが、この表題の「郵便的」という言葉に何か強く惹かれるものがある。たとえばネット上の闘病ドキュメントであるが、これも遠くの見知らぬ人にあてた郵便のようなものかも知れない。それが誰かのもとに届けられ、そして読まれるかどうかはわからないが、確かに自分の体験をネットに公開するという行為は、どこか郵便的な行為と似ている。そう考えると、TOBYOの役割はさしずめ郵便局ということになるだろう。ネット上に投函された郵便を、それを必要とする誰かのもとに確実に届けるために、効率よく仕分け整理分類することがTOBYOの役割と言えるだろう。

続きを読む