知識情報の構造化

昨日のエントリでは「ここまで来ると、更にもっと可視化を進め闘病ネットワーク圏の全体像をとらえることができればと思う」と書いた。これは現時点での正直な感想である。だが、これとはいささか矛盾するかもしれないが、情報の単なる量的拡大だけで胸を張って「良いサービス」と言えるかと考えると、必ずしもそうではないだろう。

年初から、TOBYOトップページに「患者の叡智(Wisdom of Patients)」というスローガンを掲げている。これは、闘病ネットワーク圏に蓄積され共有された大量の知識と体験のことを指している。もちろんまず、この膨大な「知識と体験」をすべて可視化し利用可能とすることを、私たちは目指している。だがその次に、膨大な知識情報を利用しやすい形に構造化しなければならないだろう。TOBYOには、たとえば「乳がん」や「うつ病」のように800を超える闘病サイトを擁する疾患もある。これらを単純にリスト提示しただけでは、かえって利用しずらくなることもあり得るだろう。大量の知識情報に何らかの秩序を与え、ユーザーの利用目的に最適化されるような構造化が、いずれどうしても必要になるのだ。そのための最初の具体プランもすでに検討済みで、検索エンジンのパワーアップが終わり次第早く着手したい。 続きを読む

闘病ネットワーク圏のインフラツールとしてのTOBYO

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TOBYOの収録闘病サイトが今日で12,000を超えた。以前、ウェブ上の闘病ネットワーク圏の規模をおおよそ3万サイトと推計したことがある。これが正しいとすると現時点で全体の約40%を可視化したことになるが、ここまで来ると、更にもっと可視化を進め闘病ネットワーク圏の全体像をとらえることができればと思う。一つでも多くの闘病サイトを紹介したいのだ。

TOBYOが目指してきたものは非常にシンプルである。まず、ネット上のどこにどんな闘病サイトがあり、どんな情報があるかを可視化することであり、次に、それら闘病サイトの情報を縦横無尽に検索できるようにすることであった。たとえば、GoogleやYahooなどの検索ツールがネット全体のインフラツールになっているように、TOBYOは「闘病ネットワーク圏のインフラツール」になることを目指している。 続きを読む

「医療プライバシーは死んだ」

先週、米国IT界の教祖的存在として知られるRobert Scoble氏 がfriendfeedに「医療プライバシーは死んだ」と投稿し、大きな反響を呼んでいる。

  1. あなたの病気を公開すれば、他の人が助けてくれて、ドクターよりも多くの情報を教えてくれる
  2. あなたの病気を公開すれば、他の人が、あなたがこれまで考えたこともないようなアイデアを教えてくれる。(このことが今夜私に起きた)
  3. あなたの病気を公開すれば、あなたの人生で何が起きているかを他の人に言うだけで、気分はすっきりする。
  4. あなたの病気を公開すれば、あなたが治療計画で騙されないように、他の人が確認してくれる。

         (“Health privacy is dead. Here’s why:”
    January 21 at 1:25 pm)

以上の氏の問題提起に対し、様々な人々がコメントを書き込んで興味深い「医療プライバシー」論議が展開されている。一読の価値あり。先週、「医療情報の流動性」についてエントリを書いたが、流動性にかかわる一つの大きなポイントが「プライバシー」問題であることは間違いない。たとえば一昨年から立ち上がってきた大規模PHRに対しても、現にいくつかのプライバシー保護団体から疑念と規制強化の声が上げられている。「プライバシー保護」という大義名分が医療情報の流動化規制のロジックに使われる可能性は高く、しかもこれに対して異論を唱えにくい空気もある。だが、プライバシーをまるで不可侵聖域のように扱うことは常に正しいのか。Robert Scoble氏の投稿は、この問題に一石を投ずるものであり、いささかセンセーショナルなタイトルながら、これ以上ない直截さで要点を語ってくれている。 続きを読む

PHR市場の現状と近未来

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今後のHIT(医療情報技術)の中核的システムは一体何か?。この問に対して少し前なら米国政府のNHIN構想やRHIO、あるいはEMRやEHRを持ち出す人が多かっただろうが、マイクロソフトのHealth VaultやGoogleのGoogle Healthの登場によって、PHRこそがこれからの医療の中心的な情報システムになるとの見方が多くなってきている。またこの背景には、クラウドコンピューティングの台頭という技術トレンドも大きく影響しているだろう。

一昨日、米国ChilmarkResearch社から、PHRの現状と近未来を大胆に予測する素晴らしいプレゼンテーション・スライドが発表されたので早速紹介しておきたい。今後のHITとPHRに関心を持つ人には必見のレポートである。

  1. 今日、PHR市場の現状はどうなっているか
  2. ヘルス・クラウズ(Health Clouds)の登場
  3. 予測

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今年もこだわっていくこと

 先週末予告した通り、1月10日土曜日にTOBYO事典のブログ検索サービスを公開することができた。収録闘病サイト数も1万1千件を超え、これで当初から構想してきたTOBYOの基礎は一応出来上がってきたと言える。闘病ネットワーク圏がどの程度の大きさを持っているかはわからないが、TOBYOがこの闘病ネットワーク圏のディレクトリや検索エンジンとしての役割を果たすことができれば、あるいは闘病ネットワーク圏を構成するサイトや闘病者の交流促進に寄与できれば、これ以上に嬉しいことはない。 続きを読む