Health2.0近況

いささか食傷気味の感もあるが、Health2.0の概要スライドをご紹介しておく。これまで何回も同じようなスライドを見てきたせいか、正直のところ物足りなさと、一抹のマンネリ感さえある。2006年ごろから開始されたHealth2.0ムーブメントも、ここへて来て閉塞状況にさしかかっているのかと懸念していたが、スコット・シュリーブ氏の最近のエントリあたりを見ていると、相変わらず精力的に「Consumer Driven Healthcare」へ向けた論考を発表しており心強い。現在、この秋に予定されている第三回Health2.0コンファレンスの準備が進められているようで、近日中にはプログラムの詳細が発表されるらしい。 続きを読む

一万人の闘病者が書いた200万ページの闘病記

今月8日から、日本初の闘病記に特化したバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」テスト版を公開している。今回バージョンの基本データは次のようになっている。

  • 検索対象サイト数: 10,085サイト
    ブログサイト: 8,414サイト
    一般サイト: 1,671サイト
  • 検索対象疾患: 642疾患
  • 検索対象ページ総数: 2,091,610ページ

以前から私たちは、ネット上に自然発生的に作られてきた闘病者のネットワークを「闘病ユニバース」と呼んできたのだが、ここで自発的に生成され蓄積されてきた膨大な闘病体験ドキュメントを、一冊の巨大な闘病記と見なしてもよいだろう。これはおそらく「史上最大の闘病記」であるはずだが、このうち、今のところTOBYOが可視化しているのは1万サイト200万ページである。そしてまた、この「史上最大の闘病記」を次のように表現してもよいだろう。

「一万人の闘病者が書いた、200万ページの闘病記」

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メイヨークリニックのソーシャルメディア戦略

一週間前のエントリで、病院のソーシャルメディア利用ガイドを紹介した。(「病院とソーシャルメディア」) その中でも少し触れたが、今度はメイヨークリニックのソーシャルメディア戦略を概観したスライドが発表された。メイヨークリニックは米国医療機関屈指のトップブランドだが、その長期的ブランドアセット構築のために、最も先進的で、戦略的なマーケティングとコミュニケーション活動に取り組んできたことで知られる。

Web2.0に対しても医療機関としていち早く対応し、ブログ、ポッドキャスト、Twitter、YouTubeなどソーシャルメディアを積極的に活用している。以前から「医療情報配信サイト」として注目された「メディカルエッジ」の他に、最近、ソーシャルメディア向けプラットフォームとして「Sharing.mayoclinic.org」を新たに開設したようだ。このことによって、いかに低コストで効果的な社会とのコミュニケーションを生み出すことができるかなど、このスライドでは具体的な例が多くわかりやすい。とりわけ次のフレーズが印象に残った。

Don’t pitch the media
Be the media

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ある物理学者の闘病体験データベース構想

ある方から教えていただいて、世界的物理学者で元東京大学宇宙線研究所長の戸塚洋二氏の闘病ブログサイト「The Fourth Three-Months」 の存在を知った。大腸から始まって肺、骨、脳と転移した自己の「がん」との闘病体験を、科学者らしく客観事実とデータを中心にまとめ上げたこの闘病記は資料価値の非常に高い記録になっている。残念ながら戸塚氏自身は昨年夏に亡くなっている

だが、この闘病記において戸塚氏は、自己の闘病体験の他に、ある一つの重大な提言をしている。それは「闘病体験データベースの構築」ということだ。そして奇しくもこのことは、まさに私たちがTOBYOで目指していることなのだ。

インターネットで「大腸がん」を検索してみると膨大なヒット数がありますし、ブログにも(私のも含めて)多くの体験談が載っています。しかし、検索に便利なように整理されていないことがネックで、上のような疑問の答えを探そうにも手に負えません。

何とかならないでしょうか。思いつくままにちょっと提案してみたいと思います。

まず、がん患者の知りたいことのほとんどは、上にあげた私の例のように、主治医には答えられないか答えたくない事項なのです。

われわれにとって本当に必要なのは、しっかりと整理され検索が体系的にできる「患者さんの体験」なのです。

当然ですが、これらの整理された体験談は例数が増えるにしたがって学術的にも貴重なデータになることは間違いありません。大学病院の先生方が細々とした科学研究費補助金をもらって個人的かつバラバラに調査を行っているようですが、全国的に体系がとれ整理されたデータでないとあまり役に立たないのです。

そのように整理された体験談があれば、検索によってその記録を見つけ、私にとって大変参考になる情報なら「自己責任」でもってそれを利用すればよいのです。

「大腸がん患者」にとって欲しいデータとは何か

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People Get Ready


昨日、仕事を早く片付け、中野サンプラザへ山下達郎コンサートを聴きに行った。ファンクラブのメンバーである妻の知人が、私が古くからの達郎ファンであることを知って、昨年暮れから始まった全国ツアーの掉尾を飾るこの日のチケットを入手してくれたのである。これまでシュガーベイブ時代から、達郎氏の作品は発表のたびに全部入手してきたが、コンサートと言えば1976年のシュガーベイブ解散コンサート以来であり、なんと33年ぶりのライブ体験なのである。

ニューヨークのストリートコーナーを模した舞台オブジェをバックに登場した達郎氏。全国ツアーでしっかり歌い込んだ声は絶好調で、かつて、学生時代に聞いて驚嘆した、あの大きく張りのある声を再び生で聴くことができた。夕刻6時半に開演したコンサートは、終わったのがなんと10時半。ライブパフォーマーとしての力は衰えず、まったく時間の長さを感じさせなかった。あっと言う間にフィナーレになだれ込み、シュガーベイブ時代の「ダウンタウン」が演奏されたが、聞きながら、なんだか複雑な思いが去来するのを感じた。そう言えば33年前、荻窪ロフトの解散コンサートのラストで、この曲のイントロと同時に「これで最後だ!」と叫んだ達郎氏の声が今も耳に残っている。その同じ楽曲が33年の時間を越えて、目の前でライブ演奏される場に立ち会う自分。まるでこの33年間という時間が、まったく存在しなかったような錯覚に襲われた。 続きを読む