病院とソーシャルメディア

海外では、ブログ、Twitter、SNSなどソーシャルメディアを活用する医療機関が増えてきている。その動向を知る上で恰好のスライドが公開された。スライド制作者はメリーランド大学メディカルシステムのウェブ戦略ディレクターを務めるエド・ベネット氏。ソーシャルメディアを病院のコミュニケーション活動に活用するためのガイドとして役に立つ。

ところで、日本でこのような活動例をまったく耳にしないのが奇異に思えるのだが、伝統的に日本の病院は社会とのコミュニケーションを等閑視してきたと言えるだろう。海外では、たとえばメイヨークリニックなどは「医療通信社」と言えるほどの規模のコミュニケーション事業を擁しており、マスメディアや社会に向けてニュースやコンテンツ配信を積極的に行っているが、日本ではこのような事例は皆無である。「ソーシャルメディアの活用」云々を言う前に、いまだコミュニケーション活動に対する基本認識の形成段階にあるのが日本の医療の現状と言うべきかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

TOBYO事典、本日から新バージョン公開

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本日、TOBYO事典テスト版の新バージョンを公開した。新バージョンはインデクシングページ数を200万ページと大幅に増やし、従来分離していた一般サイトとブログサイトの検索を一本化した。また、検索結果の視認性を高めるために、検索結果タイトルをブルーで表示することにした。

依然として「テスト版」を表示しているが、これは「まだまだ改善する余地をたくさん残している」という意味合いとしてご理解いただきたい。これから使い勝手も精度も、継続して改善していかなければならない。だがようやくこれで、日本初の闘病体験バーティカル検索エンジンが本格的に稼働し始めたことになる。何よりもまず、自分の闘病体験を闘病ユニバースに公開してくれた多くの方々に、深く感謝したい。このような多くの方々の自発的な活動が、結果として「200万ページの闘病記」を作り上げたという事実は、本当に驚くべきことである。そしてこれがインターネットによって初めて可能となった、という点も特筆すべき事柄だと思われる。 続きを読む

NEWS: 新バージョン「TOBYO事典」をリリース

ゴールデンウイーク。久しぶりに休暇を取り、ブログもしばらくお休みだった。もっぱら自宅で音楽を聴いて過ごしたが、当方では、いまだにアナログディスクがメイン音源となっている。CDも聞くが、カートリッジやターンテーブルシートによって違う表情を見せるアナログ音源の面白さは捨てがたい。アナログディスク自体も中古市場で格安になっており、これもありがたい。最近、70年代プログレ系のライブ作品を何枚か入手したが、YESのライブなど30年ぶりに聞き直してみて、従来の認識を新たにさせられた。

さて昨年来、ずっと開発に取り組んできたバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」だが、この週末、一層強化した新バージョンをリリースする予定。1月公開のテスト版では、検索対象となる一般サイトとブログサイトをラジオボタンで切り替える方式を採用したが、今回、これを統合し一本化する。さらにインデクシング・ページ数を増やすことに注力してきたが、今回リリースのバージョンでは約200万ページとなった。これで、約200万ページ分の闘病体験が全文検索可能となる。もちろん日本初であり、世界でも例はないはずだ。 続きを読む

「闘病記」を越えて(5): ネット的なるもの

従来の「闘病記」という狭い閉じられた静的枠組みによってではなく、もっと開かれた動的な視点からネット上の闘病ドキュメントを見ていくことが必要だ。ここに二つの視線があると思う。ひとつはリアル闘病本を起点として、ネット上の闘病ドキュメントの方へ向けられた視線であり、もう一方はネット上の闘病ドキュメントから出発して、リアルの医療現場へ向いた視線である。前者はリアル闘病本およびリアル医療現場などを、ある意味で規範化し、「かくあるべし」という硬直した観点からネット上の闘病ドキュメント周辺を見ているはずだ。このような「視線」からこぼれ落ちてしまうのは、ネット上の闘病ドキュメントが持つ豊かな可能性である。リアル闘病本の研究者達が、ネット上の闘病ドキュメントを正当に評価できないのも、彼らがこの視線から離れることができないからだ。

一方、もう一つの視線は何を語っているのか。もう一つのネット上の闘病ドキュメント発の視線は、リアル闘病本だけではなく、リアル医療全体に向けられている。そして、この「視線」は「かくあるべし」という規範化された医療観ではなく、「こうあってほしい」もしくは「こんなことも可能だ」というように、複数の代替的医療像を提起しているはずなのだ。つまり、現実の医療を唯一絶対のものとして規範化するのではなく、むしろ闘病者視点で相対化し、新しい医療の在り方の可能性を暗黙的に指し示していると言える。おそらく医療改革とは、これらの多声的で暗黙的な言葉に耳を傾けるところから始められるべきなのだろう。 続きを読む

「闘病記」を越えて(4): データベース「患者の叡智」へ向けて

 wikinomics

本日で、TOBYO収録闘病サイトは710疾患、15000サイトを越えた。これまで闘病ユニバースの規模をおよそ3万サイトと推定してきたが、これでTOBYOはその半数近くを可視化し、分類整理したことになる。だがまだあと半数を残しており、さらに今後多くの新闘病サイトが出現するだろう。こんなところで満足しているわけにはいかない。以前のエントリで現時点におけるTOBYOのプロジェクトミッションを、次のように述べてある。

闘病ユニバースに存在するすべての闘病体験を可視化し、分類整理し、アクセスできるようにすること。

このミッションを遂行するために、今後もサイト収集を進めていくが、来年には「収録サイト数3万件」に到達する予定だ。これで日本の近代医療はじまって以来初の、そしておそらく世界でも初の「患者3万人規模、分類整理され全文検索可能な闘病体験集合」が姿を現すことになる。これを仮に「データベース『患者の叡智』」と呼んでおく。このデータベースは、まず第一に闘病者のために利用してもらいたいが、その他、医療改革、学術研究、製品開発、政策立案、教育、マーケティングなど、およそ医療に関するすべての社会的ニーズに応えられる可能性を持っている。 続きを読む