医療とゲーミフィケーション: HealthTap


昨年から、あちこちで「ゲーミフィケーション」という言葉を目にする機会が増えてきている。この言葉を手っ取り早く理解すると、以下のようになる。

ゲームデザイン手法や仕組みを用いて問題の解決やユーザー契約などを獲得すること。例えば、既存のシステムやサービスへの、ポイント性、順位の可視化、バッヂ、ミッション、レベルシステムの採用など。さらにゲームの要素を盛り込むことによって楽しみながら意図せずそれらと関わっていってもらうことが目的で行われる場合もある。(wikipedia:ゲーミフィケーション

このゲーミフィケーションの手法を医療Q&Aサービスに導入したのがHealthTapである。このサービスが普通の医療Q&Aと異なる点は、ゲーミフィケーションの仕組みを回答者である医師参加者に適用している点にある。

HealthTapに参加した医師は謝礼や換金可能ポイントなどは与えられないが、そのかわり回答数、医師同士の”agree”評価、一般ユーザーの”thanks”評価などのポイントを競い、獲得ポイントによってさまざまな「賞」を贈られたり、自己の評価ステータスを示す「レベル」を上げたりすることができる。

また、HealthTapでは医師の参加モチベーションを上げるために、以上のようなゲームライクな競争の仕組みを用意するのみならず、医師個人を可視化し、ウェブ上の医師プレゼンスを高め、同じ地域の患者への認知促進をはかるなどの「販促効果」もあるとしている。これらの「メリット」にひかれてか、現在、医師参加数は約9000人を数え、毎日100人づつ増加しているとHealthTapは発表している。 続きを読む

EHRを各種ソリューションのプラットフォームへ


厳寒のせいだろう、新宿御苑の梅はまだ硬い蕾で例年よりも開花は遅れている。

前回エントリでEHRの新たな可能性について触れたが、これに関連し、他にもさまざまな方向からのアプローチがあることがその後わかってきた。その中の一つは、EHR上に医療情報サービスの統合プラットフォームを提供しようとするもの。そして今一つは、それぞれのEHRの仕様の違いを越えて患者データをアグリゲートするものである。

上に掲出したCMのDr.Firstは前者のサービスである。もともとこの会社はEHRベンダー各社に対し電子処方箋サービスを提供してきたが、今日ではより広くEHRをプラットフォームとした各種ソリューションの提供をめざしている。たとえば薬剤コンプライアンス・プログラム、患者教育プログラム、薬剤共同購入ディスカウント・サービス、さらには患者の薬歴を集約し医療機関や検査ラボに提供するサービスなどである。 続きを読む

診療の現場をまるごと可視化: ダイアローグ・リサーチ

Verilogue

早いもので10月も今日が最後。明日から11月だ。夜毎に虫の声も少なくなったが、静かな秋の夜長をゆっくり過ごすのも楽しいものだ。

さて、私たちが開発したTOBYO dimensionsは、端的に言えばネット上に患者が公開したドキュメントに基づく患者体験データベースであり、また、日々更新され膨張を続ける闘病ユニバースを継続的に傾聴するためのリスニング・プラットフォームでもある。このような医療情報の集め方は従来にないものだが、医療を可視化するという意味では、他にも方法はあるはずだと考えたりしていたが、とうとう画期的な方法が登場した。

それは「ダイアローグ・リサーチ」つまり「対話」の調査である。この「対話」とは、診察室で実際に交わされる患者と医師の対話のことだ。2007年に起業したVerilogue社は、診察室でやりとりされる「患者-医師」対話をまるごと録音し、そのデータをインサイトへ変換し”point-of-practice”との商標のもとに製薬企業や医療マーケティング企業へ提供している。「診療の現場」というこれまで人目に触れなかった「聖域」まで可視化するという意味では、最近日本で議論されている「検察や警察の取調べ現場の可視化」と通底するものがあるかもしれない。

同社ではすでに70疾患、6万件の診察室での「患者-医師」対話データを蓄積しており、現在40社以上の製薬企業をビジネスパートナーとして獲得している。また一方ではB2Cビジネスとして、これらデータを使って「CareCoach」 という消費者向けサービスもはじめている。なるほど「患者-医師」対話データは、プロフェッショナルだけではなく、たしかに消費者・患者にも役立つデータだ。 続きを読む

医療をロックするインキュベータ: Rock Health

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前エントリで米国Health2.0シーンの活況ぶりに触れたが、その後出たデータを見ると、第三四半期(7月-9月)におけるベンチャーキャピタルの医療ITスタートアップに対する投資総額は2億3百万ドルで、これは第二四半期(4月-6月)の6千6百万ドルの約三倍になっている。同時に、医療IT企業間のM&Aも活発に行われており、第三四半期は総額47億ドルに達している。

第三四半期における、主な医療ITスタートアップのVCからの資金調達は以下のとおり。

  • ZocDoc          7500万ドル
  • Awarepoint       2700万ドル
  • CareCloud        2010万ドル
  • One Medical Group  2000万ドル
  • SeeChange Health   2000万ドル

おもわずヨダレが出そうな状況だが、これに加え、米国政府のスタートアップ支援によるイノベーション促進政策を追い風として、医療ITスタートアップ支援へ向けたインキュベータ組織&個人が次々に立ち上がっている。

・The Startup Health, Jerry Levin

・Entrepreneur and philanthropist Esther Dyson

・Digitas Health Co-founder Linda Holliday

・Health 2.0 co-founders Matthew Holt and Indu Subaiya

・Blueprint Health

・Health technology startup accelerators Rock Health

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米国で製薬企業がFacebookの自社ページを閉鎖

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ワシントンポスト紙によると、今週月曜日から、米国のアストラゼネカ社、ジョンソン・アンド・ジョンソン社がFacebook上の自社ページを閉鎖した。これはFacebook側が製薬企業のウォールを公開するように求めたためである。

これまでFacebookは、製薬企業だけに、ウォールへのオープンなコメント書き込みのブロックを認めてきた。これはユーザーが虚偽の副作用、不正な薬物使用、製品についての不適切な言説を書き込むかもしれないと製薬業界が懸念してきたためであり、また、これらによって規制当局を刺激するのではないかとの懸念もあったためである。

しかし先週末、Facebookはこの「特典」をやめ、一部の特殊な処方薬に関係するページを除き、製薬企業のウォールを公開するよう各社に通告した。これによりアストラゼネカ社は鬱病のページを、ジョンソン・アンド・ジョンソン社はADHDのページを閉鎖した。ファイザーはじめ他の製薬企業も、ページ閉鎖まではしないものの、不正書き込みの24時間監視体制を強化するとのこと。

(“Drug companies lose protections on Facebook, some decide to close pages”,August 13,The Washington Post.)
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