医療とゲーミフィケーション: HealthTap


昨年から、あちこちで「ゲーミフィケーション」という言葉を目にする機会が増えてきている。この言葉を手っ取り早く理解すると、以下のようになる。

ゲームデザイン手法や仕組みを用いて問題の解決やユーザー契約などを獲得すること。例えば、既存のシステムやサービスへの、ポイント性、順位の可視化、バッヂ、ミッション、レベルシステムの採用など。さらにゲームの要素を盛り込むことによって楽しみながら意図せずそれらと関わっていってもらうことが目的で行われる場合もある。(wikipedia:ゲーミフィケーション

このゲーミフィケーションの手法を医療Q&Aサービスに導入したのがHealthTapである。このサービスが普通の医療Q&Aと異なる点は、ゲーミフィケーションの仕組みを回答者である医師参加者に適用している点にある。

HealthTapに参加した医師は謝礼や換金可能ポイントなどは与えられないが、そのかわり回答数、医師同士の”agree”評価、一般ユーザーの”thanks”評価などのポイントを競い、獲得ポイントによってさまざまな「賞」を贈られたり、自己の評価ステータスを示す「レベル」を上げたりすることができる。

また、HealthTapでは医師の参加モチベーションを上げるために、以上のようなゲームライクな競争の仕組みを用意するのみならず、医師個人を可視化し、ウェブ上の医師プレゼンスを高め、同じ地域の患者への認知促進をはかるなどの「販促効果」もあるとしている。これらの「メリット」にひかれてか、現在、医師参加数は約9000人を数え、毎日100人づつ増加しているとHealthTapは発表している。

さて、これまでの説明を聞いただけで「これはちょっとやり過ぎでは・・・・・」と思われた方もおられることだろう。現に米国でも批判が起き始めている。2月4日付ニューヨーク・タイムズでは“Advice for the Ill, and Points for the Doctors” という批判記事が掲載された。記事ではゲーム性だけでなく、HealthTapが医師の認定資格保有を確認していない点や400文字という回答の短さなどにつきまとう危うさを指摘している。たしかに、ゲーム性や「販促効果」をモチベーションとして回答する医師に、果たして医療相談をする患者がいるだろうか?

昨年から米国ウェブ医療サービス・シーンはちょっとしたバブル的様相を示しているが、雨後の筍状態で出てくるスタートアップを見ていると、HealthTapのようなものが出てくるのもある意味で当然のような気がする。だがこれを肯定するかと問われると、素直に頷けない。その辺りもう少し考えてみたいのだが、これに関連して昨年秋、さる出版社の編集者氏と飲んだ夜の会話を思い出した。

「従来の医療サイトとは違うエンタメ風の医療サイト」を作りたいとの編集者氏に対し、随分アルコールがたっぷりと入っていた当方は、めずらしくも(というか、いつもながらか・・・・)アタマに来たのである。おもわず「馬鹿者! 医療はエンターテインメントではない!」と一喝してしまった。

そんなこともあったが、しかし、keasのようにゲーミフィケーションをうまく使ってユーザーの継続モチベーションを高めているケースもあり、一概にエンターテインメント性を否定するわけでもないが。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


医療とゲーミフィケーション: HealthTap” への2件のコメント

  1. ピンバック: 2012年2月のゲーミフィケーション・トレンド紹介 - Monthly RoundUP | Gamification.jp

  2. ピンバック: 2012年2月のゲーミフィケーション・トレンド紹介 - Monthly RoundUP | Gamification.jp

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