三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

進化するPHR: 静的PHRから動的PHPへ

keasここ数年、EMR、EHR、PHRなど医療情報システムの概念定義をめぐり、混乱や議論が続いてきた。このブログでも有力な定義など紹介してきたのだが、どうもまだすっきりした整理ができていないと感じてきた。特に米国のEHR認証問題に関連して、消費者向けにEHRをPHRへ転用すべきだという議論まで出てきており、実はEHRとPHRの区分が不分明になってきている。またヨーロッパでは国営EHRをPHRと同一視するような見方が多い。わが国では「電子私書箱」のような個人レポジトリ構想が繰り返し言及され、PHRなどもこれとセットで語られることが多い。

だが一方には、これら「概念の混乱」や「概念論争」を越えて、実際に稼働し始めたHealth VaultやGoogle Healthがどんどん進化して行っている現実がある。個々ばらばらながらもこれら「PHR」進化は、混乱する概念定義論争を尻目にはるかに先行している。このような状況において、全体を一望睥睨するような視座を持つことは困難だが、ある一つの方向へ徐々に収束しているのを見てとることはできる。PHRに関して言うと、それは従来の「個人医療情報を収集し記録する」という静的レポジトリから、個人が自分の医療情報を活用する動的プラットフォームへ、という方向だと思われる。 続きを読む

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアを概観するスライドやビデオはこれまで多数発表されており、正直言ってもうお腹いっぱい状態だが、このスライドはユーモアもあり秀逸。ところで今月初めに開催された「AD:Tech TOKYO」でキーノートスピーチを務めたジョシュ・バーノフ氏は、自身のブログで「In Japan and Korea, consumers embrace social technology faster than marketers」 というエントリをポストし、「日本企業は消費者に比べソーシャルメディアへの対応が遅れている」と述べている。

たしかにそのような傾向はあるかもしれないが、日頃から闘病サイトにかかわっている当方の実感としては、企業のみならず消費者の方が、果たして「ソーシャルメディア」という概念でたとえばブログをとらえているかといえば、そうではないような気がする。新しい可能性として「ソーシャルメディア」に着目するよりも、むしろ古いリアル日常感覚の習慣を持ち込んでいるようなシーンを目にすることの方が多い。このままいくと日本の「ソーシャルメディア」は、かなり特殊で孤立した文化圏を作っていくことになるのかもしれないが、これは「闘病ユニバース」にとって良い方向ではないだろう。そのような危惧の念を覚えることもしばしばである。 続きを読む

急速にクラウド化する医療情報システム

cloud_computing

EHR認証問題に端を発する「EHR1.0批判」は、HHSによる「意味ある利用」による認証基準策定へと行き着いたわけだが、これら一連の動きを見て、旧来のIT企業をはじめテレコム企業からパソコンメーカーにいたるまで、雪崩をうってEMR・EHRのクラウド・コンピューティング化に着手し始めた。医療情報システムのクラウド化は、最早、誰にも止められない大きなうねりとなって医療IT業界を席巻しつつある。

9月10日のNewYorkTimesによれば、GE、IBM、Dell、VerizonなどからEHR専業各社に至るまで、EMR・EHRのクラウド化構想が最近矢継ぎ早に発表されている。従来からEHRシステムを供給してきたGEは、特に小規模医療機関のニーズが「より簡単に、より安く」へシフトしていると認識し、来年早々にクラウド版EHRをリリースするとアナウンスしている。IBMはこれまでEHRシステムを供給していなかったが、やはり小規模医療機関を対象とするクラウドEHR市場への参入を表明している。テレコム企業Verizonは医療IT企業と組み、今後数カ月のうちにクラウドEHRをリリースする。 続きを読む

TOBYOと闘病ユニバース

TOBYO_universeこの夏、日本初の闘病記専門検索エンジン「TOBYO事典」の改良に取り組んできたが、新たに開発したクローラをいよいよ今月中には運用する予定。5月から、1万件の闘病サイトを対象に200万ページの検索インデックスを作成しテスト運用を開始してきたが、今回の改良版では、対象1万5千サイト、検索インデックス300万ページへボリュームアップし、なおかつ検索精度の向上を目指している。

インターネット上に自然発生的に生成された、闘病サイト群のルースでオープンなネットワークを「闘病ユニバース」と呼んできた。これは仮想的なコミュニティと考えてもよいだろうが、TOBYO事典をはじめ、この仮想コミュニティのインフラツールとしてTOBYOを使っていただきたい。 続きを読む

消費者向けiPhone医療アプリケーションTop5

ABC_GMA

iPhoneの消費者向け医療アプリがかなり出そろってきた。9月3日の米ABC“Good Morning America” で「Top5アプリ」が取り上げられたのでご紹介しておきたい。この「Top5」を選考したのは医師でITコンサルタントも務めるSalvatore Volpe氏で、選ばれたアプリは次のようなもの。(注:ビデオは埋め込みできないので,上記“Good Morning America”のABCサイトでご覧あれ。広告ののち本編が始まる)

  • ePocrates (free)
  • Health Cloud (free)
  • iFitness ($1.99)
  • Pocket First Aid and CPR ($3.99)
  • Restaurant Nutrition (free) 続きを読む