三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

過去、現在、そして未来

Shinjuku0911

少し前から、必要があってここ10年くらいの日本のネット医療サービスを概観し、あらためてその現状と可能性を検討している。結論から言ってしまえば、日本では米国のWebMDのような巨大総合医療ポータルがいまだ登場していないということだ。WebMDに代表される1.0的な医療ウェブサービスの在り方に対し、Health2.0は消費者参加型サービスを様々に生み出し、この二三年の間に米国のウェブ医療サービスは飛躍的に多様化した。そのような米国のウェブ医療サービスの進化プロセスを見ていると、日本ではいまだ「Health1.0」の段階にも到達していないのではないかとさえ思う。

日本におけるウェブ医療サービスは病院など医療機関検索サービスから出発し、そしていまだにこれが主流になっている。たとえば日本でWebMDに近い位置にあるとおもわれる「ここカラダ」だが、キャッチフレーズは「病院検索ならここカラダ:病院検索など医療の総合情報サイト」であり、まず病院検索サイトであることを自ら公言している。他のクチコミ評価や医療コンテンツなどを取り入れたサイトなども、基本的には病院検索サービスを中心に提供するものであり、このように見てくるとここ10年くらいの間に先行し、現在上位に位置するウェブ医療サービスのほとんどすべてが病院検索サイトであることがわかる。

これら日本のウェブ医療サービスの一極集中ぶりをどう見るかだが、このようなスタイルへと帰結させたものは、あるいはビジネスモデル上の制約かもしれない。端的に言って、収益源というものがきわめて限定されているからだ。そのことにここでは立ち入らないが、これらサイトのトップページを眺めて見れば、そこに或る種の共通点があることに気づくはずだ。だが問題は、ウェブ医療サービスの多様性というものがきわめて貧弱になっている点にある。 続きを読む

HMSが新型インフルエンザ向けiPhoneアプリをリリース


iPhoneのAppStoreで、初の新型インフルエンザ向けアプリが発売された。これはHMS(ハーバードメディカルスクール)が開発したもので価格は$1.99。このアプリでは、次のようなコンテンツが利用できる。

  • 新型インフルエンザ基本知識の学習ビデオ
  • 新型インフルエンザから家族を守る方法
  • パンデミックに備えるビジネス
  • HMSから新型インフルエンザの最新ニュース配信

消費者教育ツールという位置づけなのだろうが、同じサービスをウェブサイトからPCベースで提供しても「無料」になるところを、スマートフォン経由でなら有料アプリとして堂々と販売できるわけだ。スマートフォンは、これまで無料だったサービスを有料化するプラットフォームになりうる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

新型インフルエンザ体験ドキュメントを読んで思ったこと。

昨日から新型インフルエンザ闘病記収集にかかった。これは一種の実験だと考えている。「新型インフルエンザのパンデミックに対し、TOBYOはいったい何ができるのだろう」と考えてみると、とりあえずできることは闘病体験ドキュメントを集めることである。そして、実際に集まった新型インフルエンザ体験ドキュメントを読んでみると、一様に冷静な筆致で事実が描かれていることが確認できる。

この春以来、国の「水際防止対策」などが大きく報道されたせいもあるだろうが、新型インフルエンザに対して、必要以上ともいえる警戒心が社会的に形成されたのではなかったか。それに対し実際に体験された事実は、それら過度の警戒心を和らげ、フツウの日常生活の範囲内で病気に十分対処できることを示している。ここで重要なのは体験された症状や診断や薬剤やその副作用などはもちろんなのだが、それよりも、淡々と進む生活時間の中で病気が確実に治癒されていく姿だ。そこに何も劇的なものはないが、これらの体験ドキュメントはそれを読む人に、冷静に新型インフルエンザに対処できることを教えている。

マスコミなどで誇張された「ニュース」ではなく、生活者の日常目線で記述された「ドキュメント集合体」のほうが、おそらく事実の多くの側面を冷静に伝えることができるのだろう。パンデミックや災害時などでは、このように体験者の多様なドキュメント集合体が瞬時に形成され、広く届けられることが重要なのだと思う。そしてこのことは、おそらくニュースレポーターではなく、ブロゴスフィアやTwitterなどが担うことになるのだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

緊急要請:新型インフルエンザ闘病体験収集について

H5N1

わが国でも、今月に入り新型インフルエンザが猛威をふるっています。TOBYOでは新型インフルエンザ闘病体験を収集・公開し、広く闘病体験を共有したいと考えています。

まずTOBYOでは、とりあえず「TOBYOレファレンス」_「TOBYOキャビネット」に、最近、新型インフルエンザに感染された方々の闘病体験を11ケース収録しました。下記のリンクよりご参照ください。

「TOBYOキャビネット-『新型インフルエンザ』のカード」

//www.tobyo.jp/reference/1-2-3-0.php?disease_id=910

今後、TOBYOでは新型インフルエンザ闘病体験について収録件数を増やしていきますが、TOBYO会員の皆様には、ウェブ上の新型インフルエンザ闘病体験の発見・収録にご協力いただきますようお願いします。(新型インフルエンザ闘病体験記載ページを「フォルダ」に登録してください。)

また、一般ブロガーの方々にお願いします。今後、万一、あなたもしくはあなたのご家族が新型インフルエンザに感染された際は、闘病体験記録に以下の情報を付加した上でブログ公開してください。同時に、エントリURLをTOBYOにお知らせください。

  1. 患者の性、年齢、居住地(都道府県)の記載
  2. 時系列で症状を整理
  3. 医師の診断、処方薬、注意などの記録

以上、よろしくご協力のほどお願い申し上げます。

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●この件についての問い合わせ先:
TOBYO運営事務局   tobyo@initiative.co.jp

Web as Health Care Platform

Health2.0_video

先日のエントリで、次世代医療の一つのイメージとして「病院が患者に示す治療計画の中に、必ずPHRなどウェブ情報サービスの利用メニューを盛り込むことが、これからどんどん進むのではないだろうか。これまで医療現場とウェブ医療情報サービスは、あまり接点を持つことはなかった。だが次世代医療では、これら両者はシームレスで一体不可分なサービスへと、むしろ積極的に統合されていくのではないか。」と書いた。従来、「ウェブ上の医療コンテンツやサービスは、あくまでもリアル医療の補完物」という暗黙的なルールがあったような気がする。ちなみに、このような暗黙的ルールを前提として作られたコンテンツやサービスを「Health1.0」と呼んでよいだろう。

言うまでもなく、Health2.0はWeb2.0にインスパイアされて出てきたのだが、単にWeb2.0テクノロジーを医療分野に応用するだけではなく、それはWeb2.0が包含していたより広いパースペクティブを医療に適用しようとする意欲的な試行でもある。今日のTHCBに、Michael Millensonによる「Health 2.0: Beneath the Hype, There’s Cause for Real Hope」と題するエントリがポストされたが、読んでいると「Web-as-health-care platform」というフレーズに目がとまった。そういえば、ティム・オライリーが歴史的論文「What Is Web 2.0」(2005)を発表してからすでに四年が経ったが、あの論文中「Web 2.0の7つの原則 」の最初に「The Web As Platform」が掲げられていたのだ。Michael MillensonはHealth2.0を説明するために、あの「The Web As Platform」を呼び出し、再び想起させ、そこから「医療プラットフォームとしてのウェブ」という新しい意味を引き出したわけだ。 続きを読む