先日のエントリで、次世代医療の一つのイメージとして「病院が患者に示す治療計画の中に、必ずPHRなどウェブ情報サービスの利用メニューを盛り込むことが、これからどんどん進むのではないだろうか。これまで医療現場とウェブ医療情報サービスは、あまり接点を持つことはなかった。だが次世代医療では、これら両者はシームレスで一体不可分なサービスへと、むしろ積極的に統合されていくのではないか。」と書いた。従来、「ウェブ上の医療コンテンツやサービスは、あくまでもリアル医療の補完物」という暗黙的なルールがあったような気がする。ちなみに、このような暗黙的ルールを前提として作られたコンテンツやサービスを「Health1.0」と呼んでよいだろう。
言うまでもなく、Health2.0はWeb2.0にインスパイアされて出てきたのだが、単にWeb2.0テクノロジーを医療分野に応用するだけではなく、それはWeb2.0が包含していたより広いパースペクティブを医療に適用しようとする意欲的な試行でもある。今日のTHCBに、Michael Millensonによる「Health 2.0: Beneath the Hype, There’s Cause for Real Hope」と題するエントリがポストされたが、読んでいると「Web-as-health-care platform」というフレーズに目がとまった。そういえば、ティム・オライリーが歴史的論文「What Is Web 2.0」(2005)を発表してからすでに四年が経ったが、あの論文中「Web 2.0の7つの原則 」の最初に「The Web As Platform」が掲げられていたのだ。Michael MillensonはHealth2.0を説明するために、あの「The Web As Platform」を呼び出し、再び想起させ、そこから「医療プラットフォームとしてのウェブ」という新しい意味を引き出したわけだ。
そうなのだ、次世代医療ということを考えてみると、おそらくそれはウェブをプラットフォームにした医療になっていくと考えられる。たとえばリアル医療のうち、まず個人医療情報などが「あちら側」すなわちウェブ上のPHRへ移行し、同時に医療機関のEHRなどシステムがクラウドへ移行し、次に医療者と患者のコミュニケーションがウェブベースになり、そして次に….、と次々にリアル医療を構成するパーツはウェブへ移行していくことになるだろう。最終的に「医療のプラットフォームとしてのウェブ」が姿を現すことになるだろうが、Health2.0はそれを実現するための実践的ムーブメントと考えることができる。
重要なのは、単に従来医療の構成パーツがウェブへ移行するだけではない点だ。ウェブを通じて患者・消費者が医療に参加することになるだろう。このことが決定的に重要であり、最終的に医療を変えるのだと思う。昨日エントリのビデオに次のようなフレーズがあったが、非常に強く印象に残った。
The Patient IS already online, he is waiting there for you!
三宅 啓 INITIATIVE INC.