三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

ウェブと医師は競合するのか?

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かつて2001年に、AMA(米国医師会)は「オンライン医療情報は、決して医師が積んできた経験やトレーニングに取って代わるものではない」と述べ、ウェブ上の医療情報に基づく自己診断や自己治療の危険性を強く社会に警告したことがあった。このAMAメッセージは「チャットルームよりも医師を信頼せよ」などのわかりやすいフレーズに翻案され、米国社会に広く知られるところとなった。

だが当然、これに対する反発もわきおこった。たとえばそれは「AMAはRIAAと同じく、前時代の遺物だ」などの言説であり、当時、世界的な拡大の途上にあったインターネットに対応できない、「レガシー業界」として医療界を批判するものであった。ちなみにRIAAとは米国レコード協会の略である。 続きを読む

患者視点調査への挑戦と挫折

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一昨日のエントリで、以前われわれはピッカー研究所の理論を応用した医療評価システムを構想していたが、結局それを断念した経緯を簡単に記した。その後、われわれの他にも患者調査、特に「患者満足度調査」への取り組みは続いている。そこで、もう少しこのあたりの問題を考えておきたい。

ピッカー研究所が提起した新たな患者視点調査は、「患者経験調査」と呼ばれている。つまり従来の「患者満足度」を計測する調査ではない。ピッカーは「満足とは主観的態度であり、常に文化的、世代的などのゆらぎを伴う不確かな指標である」とし、これに対して「患者が医療現場で実際に経験した事実を測定しなければならない」と主張したのである。 続きを読む

一つの未来医療イメージ

先月発表されたマイクロソフト社の「未来医療」イメージビデオ。良くできているとは思うのだが、何か違和感が残る。それは、このようなクリーンな未来イメージをこれまでいろんな場所で多く見慣れてきたせいで、リアリティが感じられないためなのか。あるいは、単に当方の「ヘソ曲がり」ゆえか?。はたまた「マイクロソフトのビデオ」ということからくる、先験的バイアス感のなせるわざなのか?。

ビデオに登場するガジェット群のインターフェースはどれも素晴らしいものであるが、ある意味では「それだけか」という不満もある。グレッグ・イーガンの小説に出てくるような、ハード&薬剤一体型の家庭医療装置などのほうが、当方は未来医療としてイメージしやすい。とにかく医療システムの現在形を、なんの躊躇もなく無批判に未来へ向かって投げると、こんなビデオが出来上がるのだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

ハーベイ・ピッカーの死とHCAHPSの起動

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土曜日のNew York Times紙面に、ハーベイ・ピッカーの死が報じられていた。そして奇しくも同日の医療関係ブロゴスフィアでは、なんとCMSによるHCAHPSの本格的運用が伝えられたのだ。「ハーベイ・ピッカーの死と、HCAHPSの起動がほぼ同時期に起きるなんて・・・。これはなんという偶然なのだろうか」。ある懐かしさに似た感情を抑えられず、このような感懐にひと時ひたったのである。とは言え、日本ではハーベイ・ピッカーの名も、HCAHPSという米国の国家医療プロジェクトの存在も、ほとんど全く知られていないのが現実かもしれない。 続きを読む

患者体験を集める。米国ユタ州の”Health Story Bank”。

HealthStoryBank

米国ユタ州保健局が、州住民から患者体験情報を集める「ユタ・ヘルス・ストーリー・バンク・プロジェクト」を開始。”Share Your Stories with Us”をスローガンにウェブサイトを立ち上げた。

「ユタ・ヘルス・ストーリー・バンクは、他の人と自分の体験を共有したいと考えているユタ州民から、健康関連ストーリーを集めたコレクションである。われわれはこれらのストーリーを、今日の健康問題の明確化に役立てたいと望んでいる。あなたのストーリーを共有することによって、あなたはこれら問題の社会的認識を高め、他の人がより健康になるように働きかけることができる」。 続きを読む