赤ちゃんの泣き声を翻訳するiPhoneアプリ: Cry Translator

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続々とリリースされるiPhoneの医療関係アプリ。だが、これをはたして医療関連アプリと呼ぶべきかどうか・・・いささか躊躇もあるが、「赤ちゃんの泣き声翻訳アプリ」というものが登場した。その名もズバリ「Cry Translator」。赤ちゃんがなぜ泣いているのか、なぜむずがるのか、その原因がわからない若い新米両親に、泣き声を翻訳しその原因を解明して伝えるアプリである。

原因は「空腹、眠い、困惑、ストレス、退屈」のカテゴリーに分類されており、90%の精度で泣いている原因を突きとめられるという。

「ほんまかいな?」と、思いっきり眉に唾をつけて説明を読んだが、このようなアプリが登場するということは、やはり両親の「親パワー」が劣化してきたということか。今まで普通の母親なら、赤ちゃんの泣き声を聞き分けられたはずだ。

だが、赤ちゃんの泣き声を「翻訳」できるとすれば、これは他にも応用がきく。たとえば犬の鳴き声を「翻訳」するとか、ペット用の翻訳アプリが登場してきてもよさそうだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

パーソナル医療

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先日の朝日新聞に「痛風の原因、遺伝子の変異」との記事があった。

チームが見つけたのは、腎臓や腸管から尿酸を体外へ排出する働きをもつと考えられる「ABCG2」という遺伝子。この遺伝子の配列のうち、尿酸が排出されにくくなる変異を5か所突き止めた。
痛風患者をl含む尿酸値の高い人と正常値の人頚1千人以上の男性を対象に、変異の様子を調査。五つの変異のうち重要な変異は2か所で、患者の8割がどちらかの変異を持っていた。
変異の組み合わせによって、尿酸の排出機能が4分の1以下に減る患者が1割おり、まったく変異を持たない人よりも26倍痛風になりやすいことも分かった。

もうかれこれ20年ばかり痛風と闘ってきた当方にとって、これは驚くべき情報である。これまで痛風の原因ははっきりせず、とにかく節制と薬剤服用で発作を抑えながら、長く病気と付き合うしかなかった。それが、まさか遺伝子変異が原因だとは思いもしなかった。でもメカニズムが分かったとはいえ、まだ根治方法はないのである。これでは依然としてビールを安心してたらふく飲めないではないか。(それでも結構飲んでるが・・・・) 続きを読む

医療を闘病者が体験した事実から見る

Gaien0911

秋も深まり、今年も残りわずかとなってきた。

TOBYOバーティカル検索エンジンのバージョンアップは大幅に遅れてしまったが、なんとか今週中には公開できそうだ。クロールとマージに手間取ったものの、新バージョンは前バージョンよりもかなりパワーアップしている。まず収録データ量を増やした。おそらく世界最大の闘病体験データベースになるはずだ。今後、これをどのように活用し社会的に役立てていくかが私たちの第一の課題となる。

当然ながら闘病体験は、まず闘病者のために利用されるべきだが、他方さまざまな医療関係者にとっても価値のある情報である。単純な分析からテキストマイニングまで多様な用途が見えている。匿名化したデータをワード出現度数分析やコンテクスト分析するなど、さまざまに解析するプログラムの開発も検討している。貴重な闘病体験集合から、どのように利用価値のある情報を提供できるかがポイントになる。

前回エントリで「消費者からの視線」ということを言ったが、まさにTOBYOの検索エンジンは、「医療を闘病者が体験した事実から見る」ためのツールなのである。これは今まで存在しなかった、まったく新しい医療情報ツールなのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

視線逆転の考察

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ここ10年程の日本のウェブ医療サービスを眺めてみると、昨日エントリで指摘したような特定サービス(病院検索)への集中の他に、医療情報の扱い方の変化に触れないわけにはいかないだろう。10年前を振り返ってみると、とにかく「医療情報の信頼性」ということが特に問題にされていたと思う。ここから医療関連サイトの認証、レギュレーションコード、認定マーク制定などが提起されたのだが、これらはウェブ上の医療情報フローに規制の枠をはめようとするものであった。

今にして振り返ってみると、これら医療情報規制論には、一定の方向性を持つ一つの「視線」というものが前提とされていたように思える。当時新しく登場したウェブと医療の関係性をどのように考えるかを問う際に、「医療界からウェブへ向けられた視線」がいわばアプリオリに、暗黙裡に前提されていたのではなかったか。従来医療を従来どおり継続する上で、ウェブがどのように利用でき、どのように不都合であるかを医療界から発せられた視線で見ていたのではなかったか。このような方向を持つ視線の上に、伽藍的な「医療情報規制論」が成立していたと考える。これら規制論は医療情報を供給する側の論理に立脚するものであり、医療情報を利用する側の論理やニーズは無視されていたのである。 続きを読む

過去、現在、そして未来

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少し前から、必要があってここ10年くらいの日本のネット医療サービスを概観し、あらためてその現状と可能性を検討している。結論から言ってしまえば、日本では米国のWebMDのような巨大総合医療ポータルがいまだ登場していないということだ。WebMDに代表される1.0的な医療ウェブサービスの在り方に対し、Health2.0は消費者参加型サービスを様々に生み出し、この二三年の間に米国のウェブ医療サービスは飛躍的に多様化した。そのような米国のウェブ医療サービスの進化プロセスを見ていると、日本ではいまだ「Health1.0」の段階にも到達していないのではないかとさえ思う。

日本におけるウェブ医療サービスは病院など医療機関検索サービスから出発し、そしていまだにこれが主流になっている。たとえば日本でWebMDに近い位置にあるとおもわれる「ここカラダ」だが、キャッチフレーズは「病院検索ならここカラダ:病院検索など医療の総合情報サイト」であり、まず病院検索サイトであることを自ら公言している。他のクチコミ評価や医療コンテンツなどを取り入れたサイトなども、基本的には病院検索サービスを中心に提供するものであり、このように見てくるとここ10年くらいの間に先行し、現在上位に位置するウェブ医療サービスのほとんどすべてが病院検索サイトであることがわかる。

これら日本のウェブ医療サービスの一極集中ぶりをどう見るかだが、このようなスタイルへと帰結させたものは、あるいはビジネスモデル上の制約かもしれない。端的に言って、収益源というものがきわめて限定されているからだ。そのことにここでは立ち入らないが、これらサイトのトップページを眺めて見れば、そこに或る種の共通点があることに気づくはずだ。だが問題は、ウェブ医療サービスの多様性というものがきわめて貧弱になっている点にある。 続きを読む