パーソナル医療

23andme_0911

先日の朝日新聞に「痛風の原因、遺伝子の変異」との記事があった。

チームが見つけたのは、腎臓や腸管から尿酸を体外へ排出する働きをもつと考えられる「ABCG2」という遺伝子。この遺伝子の配列のうち、尿酸が排出されにくくなる変異を5か所突き止めた。
痛風患者をl含む尿酸値の高い人と正常値の人頚1千人以上の男性を対象に、変異の様子を調査。五つの変異のうち重要な変異は2か所で、患者の8割がどちらかの変異を持っていた。
変異の組み合わせによって、尿酸の排出機能が4分の1以下に減る患者が1割おり、まったく変異を持たない人よりも26倍痛風になりやすいことも分かった。

もうかれこれ20年ばかり痛風と闘ってきた当方にとって、これは驚くべき情報である。これまで痛風の原因ははっきりせず、とにかく節制と薬剤服用で発作を抑えながら、長く病気と付き合うしかなかった。それが、まさか遺伝子変異が原因だとは思いもしなかった。でもメカニズムが分かったとはいえ、まだ根治方法はないのである。これでは依然としてビールを安心してたらふく飲めないではないか。(それでも結構飲んでるが・・・・)

ところで最近、米国では「Health3.0」などと言い始める気の早い人が出てきた。その言によれば、「Health3.0」のキイワードは次の四つの「P」であるとのこと。

 

personalized, preventive, predictive and portable

「4P」と聞けば大昔のマーケティングセオリーを思い出すが、以上の四つの「P」の中で最も重要だと思われるのは「personalized」だろう。そしてこの「personalized」の土台となるのは遺伝子解析サービスだ。遺伝子解析によって、個人によってそれぞれ違う医学的特徴が特定され、そのことによって「preventive&predictive:予防と予測」が可能になる。

遺伝子解析サービスは、Googleグループの23andMeをはじめ、ここ二三年の間に世界各地で次々に立ち上がってきている。遺伝子解析技術の進化とコストダウンによって、ずいぶん安くサービスが提供されるようになったが、これにウェブサービスを結びつけることによって利用者の利便性は格段に向上している。そして、この遺伝子解析サービスと非常に強い親和性を持つと思われるのがPHRである。遺伝子解析サービスで得られた個人医療情報をPHRに格納すれば、ユーザーは生涯にわたって自分の健康上のリスクを管理できる。そして、そこにkeas のようなサポートサービスが加われば、リスクに対応した健康プログラムを実行することもできる。これら「遺伝子解析-PHR-サポートプログラム」という一連のシークエンスで提供される医療情報サービスは、従来の一般的な「健康情報サービス」とは根本的に違う「パーソナル」なものになるはずだ。

また、単独の遺伝子解析サービスとかPHRなどの個別に孤立したサービスではなく、重要なのはそれらが連携シークエンスとして結合されることだ。ついでにPHRがなぜ次世代医療のコアになるのかといえば、それがすべての個人医療情報のアグリゲーション・プラットフォームになるからだ。だがさまざまな個人医療情報の中で、今後最も基本となるのは遺伝子情報だろう。Googleはこれら次世代医療の二つの戦略的ポイントを、GoogleHealthと23andMeで押さえようとしている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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