患者体験調査による病院レーティング: ConsumerReportsHealth.org

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今週月曜日(8月3日)から、消費者商品評価団体ConsumerReportsは全米病院のレーティングサービス を開始した。この病院レーティングは、米国政府が実施している「患者体験に基づく病院評価調査プロジェクト=HCAHPS(the Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)」のデータを利用し、消費者にわかりやすい形で提供しようというものだ。全米約3700病院で、約100万人の患者が入院中に実際に体験した結果を、以下に見るHCAHPSの「8つの評価指標」について集計分析している。

  • 医師や看護師とのコミュニケーション
  • ペインコントロール
  • どの程度の頻度で、必要な時の呼び出しに対応されたか
  • 病室の清潔さと静かさ
  • 新薬についての情報
  • 退院時の説明
  • その病院を家族や友人に推薦するかどうか
  • 総合的な入院体験評価

HCAHPSとは懐かしい!。数年前、当方は医療評価事業を構想しており、当時このHCAHPSや英国CHI、またこれらのルーツであったピッカーメソッドを徹底的に研究していたことがあった。HCAHPSは、当時のブッシュ政権の医療政策における目玉の一つであり、「一つの統一尺度で全米病院を患者視点で評価し、消費者の病院選択に役立てる」ことを目指す先進的なプロジェクトであった。だが「先進的」であるが故に、医療界、レガシー調査ベンダー業界などの抵抗は根強く、調査票開発などは何度も挫折を経験したのである。 続きを読む

医療情報配信のニューウェーブ

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去る6月末から、米国のトップブランド医療機関であるMayoClinic は、セリアック病 の患者に対してTwitterで最新の研究成果など情報配信を開始した。MayoClinicはこれまでもブログ、Facebook、YouTube専門チャネル などを使ってセリアック病に関するビデオやオーディオクリップを配信してきたが、セリアック病患者に対し、Twitterで一層きめ細かい情報提供活動をしていく予定。

MayoClinicでは、Twitter配信した情報に対するユーザー行動を見極め、その情報を再配信した患者ユーザーなど数名を選び出した上で、さらに詳しいセリアック病研究に関する専門情報(従来は専門家だけに配信していた情報)を配信するようだ。この専門情報については、一般公開と同時に、これら選出された患者ユーザーがブログなどで発表することを許可する。

まだ不明な点も残すが、今回のMayoClinicの新しいチャレンジは、従来の医療情報配信方法を根底的に変える可能性を孕んでいると思う。まず第一に、今回のMayoClinicのセリアック病情報配信が、ターゲティングを意識したものであることに注目したい。従来の医療情報配信は、不特定多数に対し一般的な医療情報を提供するものであり、特定の層に対する専門的な情報配信ではなかった。つまり従来の方法は多分にマスメディア的であり、ネットの特性を活かした情報配信ではないのである。それに対し、今回のMayoClinicのTwitterでの情報配信は、「セリアック病の患者」というターゲットを明確にした情報配信である。 続きを読む

病院サイトの世界ランキング

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スペインの公的研究機関CSICに属するCybermetrics Labが、世界の病院サイト・ランキングを発表している。 そのTOP1,000を見ると、100位までにランクインしている日本の医療機関は、東京大学医科学研究所(16位)、国立がんセンター(58位)、奈良県立医科大学(91位)となっている。ランキングの方法は「純粋に学術的な観点から」としてあるが、世界ランキングや各地域ランキングをざっとながめると、研究機関や大学病院のウェブサイト中心に選出されており、今一、納得感の低いランキングになってしまっているのが残念だ。

たしかに病院自体のランキングということなら、米国を中心にかなり多くのサービスが提供されているが、病院サイトランキングというのはこれまであまり例がない。また、病院サイトの認定ならHONコードはじめいくつかのサービスがあるが、これらはサイトの相対評価という観点を欠いている。 続きを読む

D2C遺伝子解析サービスの使い方

一昨年から欧米でブレークし始めたD2C(Direct_to_Consumers)遺伝子解析サービスだが、23andMeを実際に利用したユーザーの体験ビデオが公開された。非常にわかりやすい。しかし、このユーザーは結果的に自分のデータまで公開してしまっているが大丈夫か?。最近、ハーバードメディカルスクールのCIOを務めるジョン・ハラムカ氏が、数年間にわたる自己の医療情報をすべてウェブに公開して話題になったが、むしろ自分の医療情報を積極的に公開する動きさえ一部に出てきている。「医療情報をシェアする権利」を最初に主張したのはPatientsLikeMeだが、従来のプライバシー観から逸脱するようなこれらの動きをどう評価すべきか?。

三宅 啓  INITIATIVE INC.