CBSイブニングニュースに患者SNS「PatientsLikeMe」が登場


先週、12月4日の米国CBSイブニングニュースで患者SNSのPatientsLikeMeが紹介された。

難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかった老婦人シェイラ・エンゲダールのエピソードからはじまるこのニュースには、PatientsLikeMeの創業者であるジェームズとベンジャミンのヘイウッド兄弟が登場し、このユニークな患者SNSの概要と生い立ちを説明している。ヘイウッド兄弟にはもう一人の兄弟ステファン・ヘイウッドがいたが、29歳の時ALSに罹患した。ステファンの命を救うためにジェームズとベンジャミンは研究を開始し、そしてPatientsLikeMeをローンチしたのである。ステファンは2年前に亡くなったが、PatientsLikeMeには彼のページが全医療記録と共に残され、今でもPatientsLikeMe会員に公開され利用されているという。 続きを読む

「?」を「!」へ変える

本日(12月6日)朝日新聞朝刊「be」の「てくの生活入門」欄に、「闘病記の共有サイトを知る」として、TOBYO、オンライフ、ライフパレット、シェアーズなどが紹介された。今年、ネット医療情報サービスの分野では、これら4サイトに代表される従来にない新しいHealth2.0タイプのサービスが登場した。

まだこれから立ち上げを準備しているプロジェクトもあるだろうが、これらの新しい動きが、きっと日本の医療を消費者参加型医療へと変えていくと思う。記事には「ネットで変わる?患者目線のサイト続々」とのキャプションがふられているが、この「」を「」に変え、「ネットで変わる!」と確信を持って言う時代が来ているのだ。消費者をエンパワーすることによってのみ医療は変わる。そのためにネットで消費者の知識と体験を活用していこう。そんな元気が出てくる記事である。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

DailyStrengthの蹉跌と患者コミュニティの洞察

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12月4日TechCrunchで、米国の代表的患者SNSの一つ「DailyStrength」が行き詰まり、HSW Internationaに買収されることが取り上げられていた。DailyStrengthは2006年春、Health2.0企業の中では比較的早期に立ちあげられ、500を超える患者コミュニティを擁する本格的な患者SNSサービスとして期待されていた。しかし、「DailyStrengthの月間ユニークビジター数は多い時でも70万人どまりだった」(TechCrunch)と伝えられており、集客が思うように進まなかったようである。

まだ詳細が分からないのだが、最も成功している患者SNSとされる「PatientsLikeMe」などと比較すると、どうも「500を超えるコミュニティ」というところに問題がありそうに思える。そう言えば、以前、DailyStrengthについて「患者SNSの場合、コミュニティが細分化されていくと1コミュニティあたりの参加ユーザー数は少数になり、コミュニティ自体の運動量の増加を妨げることにつながる」との指摘をどこかのブログで読んだ記憶がある。そのブログでは、DailyStrengthのコミュニティメンバーが書くエントリに対する閲読数やコメント数が、一般の汎用SNSなどと比べ桁違いに少ない点を指摘していたと思う。 続きを読む

医師の役割を変えるHealth2.0

さまざまな人々がHealth2.0の定義にチャレンジしてきた。今もなおより良い定義をめぐって議論は続けられており、今後、定義自体がいっそう豊富化され成長していくと思う。今の時点で最も納得性があり、最もシンプルな定義は何かと言えば、それは「消費者参加型医療」と言えるのではないだろうか。ではこの「消費者参加型医療」だが、これはたとえば「患者中心医療」のような、具体的な内実を欠いた単なる言いっぱなしの「美しい標語」であっては困る。内実を持った実践的な実体として提示できなければならないのだ。では一体、消費者参加型医療の具体的な中身をどのように考えればよいのだろうか。

まず、消費者参加型医療という言葉をそのまま字句通り解釈すれば、医療プロセスの中へ消費者が参加し、消費者自身が何らかの活動を担うということになる。これは従来の「すべてお任せ」型のパターナリズム(父権主義)の医療からの訣別を意味するだろう。まず今日の消費者はネットを活用し、医療情報サービスなどから自分で必要な医療情報を収集することができる。これはすべての医療情報を医療者に依存し、ただ受動的に医療情報を受け取るだけの従来の立場から、情報面において消費者が能動的に自立するということだ。次に、たとえば各種検査なども医療機関まかせではなく、消費者が直接検査ラボに発注するということが考えられる。 続きを読む

医療レーティングサービスの現状

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医療評価、すなわち病院が提供する医療サービスの品質評価や医師の評価について、これまでさまざまな調査手法やデータ提供方法が模索されてきた。これらは「レーティングサービス」と総称されるが、特にネットで医療評価データを提供するサービスが米国では90年代半ばから多数登場している。この分野では、CMSなど公的機関のデータを統計処理して提供するHealthGradesなどをはじめ、患者満足度調査に基づくものや、最近では2.0的手法を用いたクチコミでのレーティングサービスなども多数登場してきている。

これらレーティングサービスは、消費者が病院や医師を選択する際の比較指標として、これまで有用で価値があるとされてきた。だが、Kaiser Family Foundationが先月発表した調査結果によると、医療選択の意思決定時に、これらレーティングサービスを利用している米国消費者はわずか15%以下にとどまることがわかった。これは2004年、2006年に実施された同調査の20%台という数字より下落しており、レーティングサービス業の成長がにわかに疑問視されはじめている。この調査レポートは「ほとんどの米国消費者は、医療品質評価のレーティングサービスを見たことも使ったこともない」とまで結論付けている。 続きを読む