Health2.0の事業プレイヤーとして

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私たちは、昨年の秋頃にNPOへの移行を漠然と考え始めていた。そしてそのことをこのブログで公開もしたのだが、それは当時、「TOBYOのようなサービスは、むしろNPOのような非営利事業スタイルのほうが向いているのではないか」と考えていたからだ。だがそれから時間が経つに連れ、次第にそれら「NPO路線」は私たちの中で自然に消えていった。

どの時点でその転換点があったのかと問われると、明確に返答できない。おそらくいくつかの複数の契機があったはずだが、そのひとつは昨年末に”Data is the next Intel inside”との「2.0の原点」に回帰したことだろう。この原点回帰によって、データを起点としたマーケティング・サービス創造という方向が明確になった。そしてそのことはやがてDFCへと繋がっていくわけである。当時、まだHealth2.0のビジネスモデルは多分に不透明であったが、今にして思えば、PatientsLikeMeとSermoの成功を徹底的に分析しておけば、「データ起点」の方向にビジネスモデルがはっきり見えていたはずなのだ。 続きを読む

医療情報バーティカル検索エンジン:メドクロス

medcross

ウェブ上で「医療垂直検索エンジン『メドクロス』のサービスを開始~医療情報を調べる為の専門特化型検索エンジン~」とのリリースを見たので、さっそくサイトを拝見した。一年ほど前から、Googleサイトサーチを利用して医療情報バーティカル検索をめざすサイトであることは知っていたが、とうとう正式デビューしたようだ。

このブログでは、従来からたびたび医療情報のバーティカル検索エンジンの重要性を強調してきたわけだが、たとえば「医療情報」でユーザーを釣っておいてAdsenseへ誘導するだけが目的のような「テンプレサイト」を除外し、信頼性のある情報ソースへ最短でアクセス出来るようになれば闘病者・消費者のメリットは大きい。その意味で、このメドクロスなど医療情報バーティカル検索エンジンの存在価値は高いのである。

というわけで期待は大きかったのだが、いざ使ってみるとどうもまだ調整中のようだ。いくつか検索を試してみたが、特定の医薬品検索サイトの薬剤情報しか表示されなかった。ソースを絞るのは良いのだが、これでは絞りすぎだ。この検索サービスはGoogleサイトサーチのサイト内検索と、汎用検索エンジン検索結果を編集した表示画面との二層構造になっているように見えるが、前者はソースが極端に少数限定され、後者はソースの信頼性が今ひとつのように感じた。だがいずれ、きっとこれらは改善されるのだろう。今後を待ちたい。 続きを読む

Gov2.0と公共医療データオープン化の進展

HHS_Gov2.0

(HHS米国保健社会福祉省の公共医療データオープン化概念図)

先月、米国ワシントンDCで「Gov2.0 Expo」が開催されたが、米国政府が持つ公共医療データなどを民間で自由に活用する機運が生まれている。このGov2.0ムーブメントは、Web2.0の提唱者であるティム・オライリー氏が中心となって米国政府を巻き込む形で進められているが、「Gov2.0 Expo」でオライリー氏自身は次のようにGov2.0を語っている。

政府はこれまでの形態を変え、政府自体がプラットフォームにならなければいけない。

今までの政府は「自動販売機」のようなものだった。市民がお金を払うことでサービスを享受するイメージ。しかし、Gov 2.0は政府が“enabler”(実現する人・もの・要因)になる必要がある。

Appleは自ら“enabler”になり、AppStoreというプラットフォームを立ち上げたことで、20万個以上のアプリがリリースされた。20万個のアプリの中でAppleが作ったアプリは20個以下だ。

天候の情報は政府が公式に提供しているから、その情報を加工してテレビ局やウェブが天気予報を独自に作ることができる。そういう発想がGov 2.0そのものだ。

義務教育やマーシャル・プラン、レーガンのGPS技術を導入など、過去に実現された偉大な政策を振り返ってみると、いつも大胆な発想の転換が求められてきた。偉大な政策を達成するには時間がかかるし、大胆でなければいけない。勇気が必要になるのだ。

現在の米国は、温暖化問題や医療改革、教育問題など様々な問題を抱えている。そうした問題に対処するには「今あるシステムをアップグレードする」という発想を捨てて、一から作るという発想が必要になる。Gov 2.0もそういうものだ。
BLOGOS、津田大介氏特別寄稿「Gov 2.0 Expo」速報レポート2日目

公開された公共医療データに基づいて、さまざまなアプリケーションやサービスが登場しつつあるが、「Gov2.0 Expo」ではIOM(国立衛生研究所)の「Pillbox」 が紹介された。 続きを読む

明確になりつつあるHealth2.0ビジネスモデル

Health2.0企業のビジネスモデルの現状を考えると、今のところあまりバリエーションがあるわけではない。私たちのTOBYOプロジェクトもいろいろな可能性を検討してきたが、結果的にはウェブ上の闘病体験データを集約し、医療エキスパートへ提供するというモデルへ収斂しつつある。私たちはこれをDFCと呼んでいるのだが、手短に言えばいわゆるリサーチ事業に含まれるものだ。だがDFCは、当面あくまでリサーチツールという性格を持つから、知見や洞察そのものを提供するものではない。

昨日のエントリでも触れたが、PatientsLikeMeやSermoをはじめ表向きは患者や医療者のコミュニティでありながら、実際はそこで生み出されるデータをエキスパートに提供するようなモデルが、現時点でのHealth2.0ビジネスモデルの主流になりつつある。この他にもサービスやデータをマネタイズする方法はあるはずだが、今のところ明確にはなっていない。

Googleグループの遺伝子解析サービスである23andMeもまた、このようなリサーチ事業をコアとしたビジネスモデルを追求している。“Sage Commons Congress”におけるプレゼンスライドで、23andMeのリサーチ事業を概観することができる。 続きを読む

出口へ向けて

Kobe_FashionMart

(Kobe Fashion Mart)

連休から始まった5月も終わり。昨日などまだ寒かったが、今日は一転してやっと5月らしいさわやかな一日となった。先週末から関西へ行ったが、TOBYO_DFC関係でいくつか打ち合わせをし、そして土曜日にはかつての後輩の結婚披露宴に出席した。慌ただしかったが、多数の方々とお会いできたのが収穫であった。

たまたま披露宴が六甲アイランドで開かれたのでさしたる意識もせず出かけたが、着いてみると、かつて当地のショッピングセンターなどのマーケティング・リサーチをおこなった記憶がドッと一度によみがえった。だが、街全体にかつての勢いはないような印象があり、シャッターを降ろした店舗さえ散見された。 続きを読む