「入り口」を制するサービスになるか: RememberItNow


RememberItNowは正しい時間に正しい分量で薬を服用するためのサービス。定時になるとメッセージを携帯に送るシンプルなリマインダー・サービスだ。一見、何の変哲もないただのリマインダーだが、ケアギバーや家族と薬剤データを共有したり、コミュニティに参加したり、簡易PHRのようなデータを管理する機能も備わっている。

特に簡易PHR機能は、将来本格的なPHRに発展する可能性もあるだろう。GoogleHealthやHealthVaultなど巨大なPHRプラットフォームの競争ばかりが注目されているが、逆にこのRememberItNowのような最も消費者に近いサービスこそが、PHR市場の鍵を握っているのではないだろうか。つまり「入り口」を制するサービスこそが重要なのだ。そしておそらく「入り口」は携帯やスマートフォンなどモバイル機器になるにちがいない。その際、その「入り口サービス」は初期段階において、できるだけ消費者にわかりやすくシンプルなかたちをしているはずだ。このRememberItNowのように。

EHRにおいても同様である。医療者向けモバイル薬剤DBサービス「Epocrates」は、最近、EHRへ機能拡張することを発表している。これもまた最もユーザーに近いサービスとして、「EHRの入り口」を占拠する動きであると考えることが出来る。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

PHR-EHR連携イメージと診療文書標準の行方


HealthVaultやGoogleHealthなどのPHRと医療機関側のEHRがどのように連携して医療データをやりとりするか。このビデオは「MS Surface」上でのHealthVaultと病院EHRのデータ連携をわかりやすく示している。診察時に患者がPHRのIDカードを、医師がEHRのIDカードを「MS Surface」のディスプレイ上に置くと、PHRとEHRから自由に医療データを呼び出したり保存したりできるようなる。

ところでこのように両システム間でデータをやりとりするようになると、相互のデータ記述標準規格(診療文書標準)が問題となる。HealthVaultで採用しているのはCCD(Continuity of Care Document)という標準書式だが、GoogleHealthは当初CCR(Continuity of Care Record)を採用していた。CCRは、古い規格である「HL7-CDA」に対抗して作られた標準書式だが、今日、米国医療IT界では徐々にCCDが優勢になってきており、今後、診療文書標準になっていくものと見られている。そのせいか、GoogleHealthもCCD対応を表明している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

変化し始めたPHR像について

keas1002

先月、RevolutionHealthは2月いっぱいでPHRサービスを停止すると発表した。このことは米国の医療ITコミュニティで少なからぬ波紋を呼んでおり、医療情報システムの中でもっとも注目されてきたPHRの将来を不安視する議論も出てきている。

だがRevolutionHealthのPHRは、ユーザーが自分の医療情報を手作業で入力するような「DIY型PHR」であり、結局、このようなモデルのPHRがワークしないことが実証されただけであるとの見方が多い。もともと、煩雑さがデメリットであることはわかっていたというわけだ。事実、RevolutionHealthでPHRを利用していたユーザー数は、わずか数百人に過ぎなかったと発表されている。

現在、個人医療情報を蓄積しているのはたとえば医療機関のEHRだが、GoogleHealthやHealthVaultなど新しいモデルのPHRはこれらからデータを入手し、ユーザーが自分で入力することはない。しかしGoogleHealthやHealthVaultなどのPHRが、今後順調に発展していくかどうかについても、最近これを疑問視する見方も出てきている。各種世論調査によれば、米国においてPHRは消費者にほとんど認知されておらず、またその必要性についても肯定的な意見は少ない。これらから、いわゆる「Direct-to-Consumer」型PHR市場の成立は容易ではなく、相当時間がかかるのではないかと見られはじめている。

続きを読む

PHRで患者と医師をつなぐ:NoMoreClipboard

NMC2

これまで医療ITシステムと言えば、EMRやEHRなど医療機関側の情報システムを指すと考えられてきたが、HealthVaultやGoogleHealthの登場によって、PHRこそが「患者中心医療」や「参加型医療」を体現するものとして注目されはじめてきている。ところで、HealthVaultやGoogleHealthなど、個人医療情報のプラットフォームとしての大規模PHRは一応登場したわけだが、今後はそれらPHRプラットフォームと生活現場あるいは医療現場を結ぶきめ細かいサービスの開発が求められる。

今月18日、新たに発表されたPHRサービス“NoMoreClipboard”は、このようなきめ細かい「現場」とのマッチングを意図して開発されたようである。PHRを介して積極的に患者と医師を繋ぐことをめざしているところが注目される。特に医師側のワークフローと患者情報を効率的に結びつけることがうたわれており、PHRをベースにした医療現場の生産性向上を打ち出している。 続きを読む

パーソナル医療

23andme_0911

先日の朝日新聞に「痛風の原因、遺伝子の変異」との記事があった。

チームが見つけたのは、腎臓や腸管から尿酸を体外へ排出する働きをもつと考えられる「ABCG2」という遺伝子。この遺伝子の配列のうち、尿酸が排出されにくくなる変異を5か所突き止めた。
痛風患者をl含む尿酸値の高い人と正常値の人頚1千人以上の男性を対象に、変異の様子を調査。五つの変異のうち重要な変異は2か所で、患者の8割がどちらかの変異を持っていた。
変異の組み合わせによって、尿酸の排出機能が4分の1以下に減る患者が1割おり、まったく変異を持たない人よりも26倍痛風になりやすいことも分かった。

もうかれこれ20年ばかり痛風と闘ってきた当方にとって、これは驚くべき情報である。これまで痛風の原因ははっきりせず、とにかく節制と薬剤服用で発作を抑えながら、長く病気と付き合うしかなかった。それが、まさか遺伝子変異が原因だとは思いもしなかった。でもメカニズムが分かったとはいえ、まだ根治方法はないのである。これでは依然としてビールを安心してたらふく飲めないではないか。(それでも結構飲んでるが・・・・) 続きを読む