PHRで患者と医師をつなぐ:NoMoreClipboard

NMC2

これまで医療ITシステムと言えば、EMRやEHRなど医療機関側の情報システムを指すと考えられてきたが、HealthVaultやGoogleHealthの登場によって、PHRこそが「患者中心医療」や「参加型医療」を体現するものとして注目されはじめてきている。ところで、HealthVaultやGoogleHealthなど、個人医療情報のプラットフォームとしての大規模PHRは一応登場したわけだが、今後はそれらPHRプラットフォームと生活現場あるいは医療現場を結ぶきめ細かいサービスの開発が求められる。

今月18日、新たに発表されたPHRサービス“NoMoreClipboard”は、このようなきめ細かい「現場」とのマッチングを意図して開発されたようである。PHRを介して積極的に患者と医師を繋ぐことをめざしているところが注目される。特に医師側のワークフローと患者情報を効率的に結びつけることがうたわれており、PHRをベースにした医療現場の生産性向上を打ち出している。これまで医療者側のワークフローと患者行動や患者情報の関係は、前者に後者が合わせなければならなかった。つまり「医療者の都合」が優先され、患者ニーズは後回しにされてきたわけだ。これでは「患者中心医療」とは言えないだろう。またこれは、ITシステムを単純に導入するだけで解決するものでもない。医療現場のワークフローと患者行動・患者情報の対応関係を業務分析し、その上でITシステムがどのように両者のマッチングと効率化に寄与出来るかを考えた上で、新たなワークフローと情報システムを設計することが求められよう。

このように考えてくると、何か20年ばかり前に流行った「リエンジニアリング」(懐かしい!)みたいな話になってきそうだが、ある意味、医療においては依然として「リエンジ」の発想が必要になっているのかもしれない。”NoMoreClipboard”のリリースを読みながらそんなことを考えた。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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