闘病体験データの社会的活用についての考察

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先週から風邪でダウンし、しばらくブログもお休み。しかし自宅で静養しながらも、いつのまにかTOBYOプロジェクトやウェブ医療サービスについて、つい「あーだこーだ」と考え込んでしまっていた。

「ネット上のすべての闘病体験を可視化する」ことがTOBYOプロジェクトのミッションであるが、この可視化作業の過程で蓄積された数百万ページの検索キャッシュによって、今度は医療を可視化していくことになる。つまり「患者の目」を通して、日本の医療実態がはじめて大規模に可視化されるわけだ。では、このように大規模に可視化されたファクト(事実)群は、社会的にどう活用されるのだろうか。

これまで「コンシューマ・サービスとプロフェッショナル・サービス」という文言で、TOBYOのコアデータの活用領域を述べてきたが、プロフェッショナル・サービスはさらに医療提供者に向けたものと、医療関連市場プレイヤーに向けたものに分けられるのではないか。そうなると結局TOBYOによって蓄積されたコアデータは、社会的には次の三方向へ提供されることになる。

1.消費者、闘病者
2.医療界、医療政策立案者
3.製薬、機器、関連サービス

これら三方向のそれぞれ異なるニーズを充足するために、三つの独立したベネフィット創造と提供が必要になる。それをまとめると次のようになるだろう。

1.消費者、闘病者 → 闘病コスト低減による効率的闘病活動
2.医療界、医療政策立案者 → 患者ニーズに即した医療効率化、医療改善
3.製薬、機器、関連サービス → 闘病データに基づく製品・サービスの効率的開発

まず上記1だが、一言要約すれば「Empower」となる。これは闘病者の医療選択時の様々な意思決定を、最小の時間と最小の労力で適切に行えるよう情報支援することである。今後、闘病体験情報は「人を感動させるため」とか「人を落涙させる」ためにではなく、実践的に闘病コストを低減させ、闘病者が効率的な闘病活動を行うために供されるべきだ。

上記2は、一言要約すれば「Improvement」となる。従来のように「患者様中心医療」などと空念仏を唱えることによってではなく、闘病体験から得られる具体的な事実に基づいて、患者のための医療の効率化と改善を図ることを意味する。

上記3は一言要約すれば「Marketing」であり、まさに「闘病体験に基づくマーケティング」のことだ。すなわち「エンドユーザー=闘病者」のニーズに直結する製品とサービスを効率的に開発することを指す。

そしてこれら三方向のベネフィット創造と提供が十分に達成されれば、最終的に医療全体の効率化促進と利用者満足度向上に寄与することになるはずだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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