ビジョンなき「IT戦略」

政府は経済危機に対応した「IT新戦略」を準備しているようだ。その四つの重点分野のうち「医療現場のIT環境強化」というのがあるが、これは明らかにオバマ政権の医療IT強化政策を模倣したものだろう。その中身は次のように報じられている。

医療分野の目玉は、電子化した個人の健康情報を各地の医療機関で共有する『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』(仮称)。医療機関同士をつなぐ光ファイバー網を新たに整備。画像診断情報などを瞬時にやりとりできるようにすることで、地域医療や救急医療の改善にもつなげる。(日経3月2日朝刊)

この『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』とやらは、そのネーミングのひどさは置いておくとして、どうやらPHRをコアとする新しい医療情報ネットワークを指すらしい。たしかにPHRは、これからの医療情報システムのコアを担うことは間違いない。従来、電子カルテやEHRなど医療機関にフォーカスした情報システムばかりが注目されてきたのだが、医療機関から消費者個人へと優先順位を転倒したPHRの発想は、単に情報システムだけではなく、今後、医療全体が進むべき方向性を指し示していると考えられる。今後の医療は、ますますパーソナル化を強める方向に進化するであろう。 続きを読む

統合失調症ネットラジオ「こころらじお」

kokoro_radio

こころらじお」は、統合失調症の闘病者が自主運営するネットラジオ。ラジオ番組配信の狙いは、次のように述べられている。

この番組は、統合失調をテーマにして、統合失調症の方、 その家族の方、また、この病気について知りたい方に、聴いていて、楽しく、役立つ、 元気になる放送を目指しています。

すでに、2006年の放送開始から9本のプログラムをネット放送しているようだ。プログラムのテーマを見ると、下記のように、どれも統合失調症闘病者の生活に根ざした親しみやすいものばかりで、まさに「元気の出る」内容となっている。

続きを読む

「闘病ユニバース」についての覚書

TOBYO_Universe

TOBYOの位置づけというものを考えてみると、当初、原型となるアイデアが出来上がった時にはまだ不分明であり、やがてそれは「闘病ネットワーク圏」というビジョンが浮かび上がって、ようやく明確になったのである。以来、「闘病ネットワーク圏のインフラツール」というシンプルな説明が可能になったのだが、何度も繰り返すうちに「闘病ネットワーク圏」という表現自体に、今度は違和感を抱くようになってきたのである。

第一、ネット上の現象を指すのに「ネットワーク圏」などと言うのは、単なる言葉の繰り返しのようで表現がくどい。もっとすっきりとは言えないものか。できれば、佐々木俊尚氏の「インフォコモンズ」のようにかっこよく。そんなことを考えているうちに「闘病ユニバース」という言葉が口を衝いて出た。 続きを読む

始まりの終わり

anniversary09

今週、2月18日、TOBYOは公開一周年を迎える。スタート時点の収録闘病記2000件は、現在12700件を数え、最大規模の闘病情報サイトへとTOBYOは成長してきている。また、闘病記だけを検索対象とする初の特化型検索エンジン「TOBYO事典」もフル稼働を開始した。

TOBYOは、闘病者たちが創り上げてきた闘病ユニバース(闘病宇宙:闘病ネットワーク圏)に蓄積された「患者の叡智」を活用するためのインフラツールを目指している。TOBYOは、単独ではいかなる機能も果たすことはできない。先行して闘病ユニバースが存在していたことが決定的に重要なのだ。だから1周年にあたり、闘病ユニバースを創造したすべての闘病者に、TOBYOはあらためて敬意を表明しておきたい。 続きを読む

闘病サイトのライフサイクル

TOBYOでは、引き続き闘病サイト情報を収集している。現在、約12,500件の闘病サイト情報を公開しているが、この中身を見ると、これらサイトは決して不動のものではなく、実は流動的である。闘病サイトは永遠不滅なものではない。闘病ネットワーク圏を観察していると、どんどん新しい闘病サイトが登場する一方、ひっそり閉鎖され消えていくものも多いことに気づく。

何もない空間(ネット上)に、突然、ポッと光が現われ、明滅を始め、やがて消えていく。

私が闘病サイトを観察しているうちに抱いたイメージはそのようなものである。かつて闘病ネットワーク圏のことを宇宙にたとえたことがあるが、それは闘病ネットワーク圏を構成する闘病サイト群が、全体としてまるで宇宙に散在する銀河、星雲、恒星のように見えたからだ。個々の闘病サイトは出現しては消滅している。これについては「宇宙=量子論的な真空」を想起する必要があるのかもしれない。 続きを読む