バーティカル検索エンジンの現在

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TOBYO事典は世界初の「闘病体験のバーティカル検索エンジン」である。まだテスト版段階ではあるが、今後これを一層精度の高い使いやすいものへと改良していくことが、TOBYOプロジェクトの中でも優先順位の高い仕事だと考えている。

ところが残念なことにバーティカル検索エンジンというもの自体が、日本ではまだ認知が低いのである。最近ようやく、求人情報や不動産情報のバーティカル検索サービスが登場してきているが、米国の状況とはまったく比較にならないほど数少ないのである。医療情報のバーティカル検索エンジンを見ても、米国では掃いて捨てるほど数多く存在し、それぞれ特色を出そうと競争している。TOBYOの場合は、医療情報と言うよりも闘病体験にフォーカスしているのだが、日本でも医療情報のバーティカル検索エンジンがどんどん登場してきてほしいものだ。 続きを読む

書評:2011年新聞・テレビ消滅(佐々木俊尚、文春新書)

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まさに雪崩を打ってマスコミ崩壊は進行している。昨秋「次世代マーケティングプラットフォーム」(湯川鶴章著、ソフトバンククリエイティブ)の書評を書いた頃、この崩壊はすでに始まっていたのではあるが、そのことをあからさまに明言するには、誰しもまだ一抹の躊躇があったと思う。だがそれから半年以上経過した現在、最早、この崩壊を疑う者は誰一人としていないにちがいない。だからこの「2011年新聞・テレビ消滅」は従来の類書とは異なり、なんの躊躇も、遠慮も、控えめなインプリケーションもなく、ありのままの崩壊をただありのままに、可能性としてではなく「事実」として真正面から描いている。そのいささかの躊躇もない、勢いのある筆致に、まず爽やかさを感じたのである。そして、筆者も述べているが「マスコミが崩壊するかどうか」ではなく、「崩壊後、どうするか」こそがすでに問題になっているのだ。

春先、当方への毎日新聞記者の取材について、少々きついエントリを書いたことがあったが、他紙も含め、昨年来、当方が取材を受けた新聞記者の取材能力の劣化ぶりには驚くべきものがあった。まず、とにかくネットリテラシーが低すぎて、「この程度のネット理解で記事が書けるのか?」と何度も深く懸念せざるを得なかったし、さらに金を払ってその記事を読む読者のことを考えると、もう「悲惨」としか形容できないのであった。だが、これらマスメディア品質劣化の諸相をあげつらうにとどまらず、むしろ本書はビジネスモデル自体がどう考えても崩壊ストーリーに行きつくと主張している。この点の精緻な考察が、一般的なマスメディア慨嘆に終わらず、「マスメディア崩壊後の社会」へと読者の視線を誘うところに本書の価値があると思った。 続きを読む

The Other Side of The Blog

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米国で先月22日から立ち上げられた「医療情報の権利宣言」サイトだが、その後、宣言支持表明者は1000名を越えたようだ。(「権利宣言」については以前のエントリを参照のこと)。宣言支持表明とともに書き込まれたコメントには、医療情報請求の現状に対する不満が数多く指摘されているようだ。医療機関に対し自分の医療情報であるカルテ等情報を請求しても、スピーディーに対応してもらえず、しかもコピー代金を取られるからである。

自分の医療情報を入手するのに、早くて一か月、へたをすると三か月以上も待たされるのみならず、コピー一枚に付き1ドルが請求されるのである。この驚くべき官僚主義的対応の原因として、HIPAA法(Health Information Portability and Accountability act)の存在を指摘する声が日増しに高まっている。「権利宣言」の発案者の一人であるアダム・ボスワース氏(GoogleHealthの前開発責任者)は、「HIPAAは1996年に作られた法律であり、今日の情報技術に適応していない」と批判しているが、このHIPAA法が官僚主義的対応を温存する法的根拠になっていることは事実であるようだ。 続きを読む

「患者データベース」のインプリケーション

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今日のお昼ごろ。たまたま昼食に出て、たまたま空を見上げると、新宿の空に日食が薄雲越しに見えた。それを、たまたま持っていたカメラで撮ったのが上の写真である。撮影時は午前11時50分。薄雲がかかっていたので、かえって撮影には良かった。もう少し雲が厚ければ太陽の姿は見えなかったし、逆に雲間から出ていれば、直に太陽を見ることになり撮影はできなかったと思われる。ありえないような偶然の産物である。

さて、戸塚洋二さんが残したブログ「The Fourth Three-Months」には、当方が戸塚構想と呼んでいる「患者データベース」についての考察が、断片的に、あちこちに散見される。闘病体験ドキュメントを「ファクト&データ」の側面から見直し、統計処理や相互比較しやすい形式に整理してデータベース化するという点では、たとえば次のような文言が残されている。 続きを読む

戸塚構想へ

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三連休、自宅で休養したり、熱い陽ざしの下、新宿御苑を歩き回ったり、企画書を書いたりして過ごした。その中で、徐々にTOBYO第2ステージのイメージが固まってきた。同時に、書店で思わず手に取った「2011年 新聞・テレビ消滅」(佐々木俊尚、文春新書)も面白く、読み出したら止まらなかった。いろんな収穫があった三連休だった。

第2ステージについて、「戸塚構想」ということが明確になってきた。この「構想」は戸塚洋二さんのブログの中に、「患者データベース」の呼称のもと、いくつかの着想が断片的に記されただけであり、全体を体系的かつ詳細に説明したものではない。だが、あちこちに飛散したアイデアを拾い集めて読みなおしてみると、「患者データベース」のおおよその全体像が浮かび上がってくる。 続きを読む