以前から「医療wikiの決定版」と言われていたMedpedia。ついに先月ベータリリースされた。すでにTechCrunch「Medpediaは医師、患者ともに利用できる健康情報版のWikipedia」で取り上げられているので、詳しい情報はそっちをご参照あれ。当方も以前からこのサイトに注目してきたが、結局、医療者と一般ユーザー双方をターゲットにしている点、そしてSNS機能を付加している点がこれまでの医療wikiサイトとの際立った違いである。世界トップレベルの医療関係者が結集し「健康・医療分野の情報プラットフォームの決定版になる可能性が十分にあるだろう」とTechCrunchでも評されているが、残念ながら英語版のみである。日本でもこのような「健康医療情報の決定版プラットフォーム」を作ることはできないものか。「Medpedia Japan」。実現できれば素晴らしい。 続きを読む
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ビジョンなき「IT戦略」
政府は経済危機に対応した「IT新戦略」を準備しているようだ。その四つの重点分野のうち「医療現場のIT環境強化」というのがあるが、これは明らかにオバマ政権の医療IT強化政策を模倣したものだろう。その中身は次のように報じられている。
医療分野の目玉は、電子化した個人の健康情報を各地の医療機関で共有する『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』(仮称)。医療機関同士をつなぐ光ファイバー網を新たに整備。画像診断情報などを瞬時にやりとりできるようにすることで、地域医療や救急医療の改善にもつなげる。(日経3月2日朝刊)
この『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』とやらは、そのネーミングのひどさは置いておくとして、どうやらPHRをコアとする新しい医療情報ネットワークを指すらしい。たしかにPHRは、これからの医療情報システムのコアを担うことは間違いない。従来、電子カルテやEHRなど医療機関にフォーカスした情報システムばかりが注目されてきたのだが、医療機関から消費者個人へと優先順位を転倒したPHRの発想は、単に情報システムだけではなく、今後、医療全体が進むべき方向性を指し示していると考えられる。今後の医療は、ますますパーソナル化を強める方向に進化するであろう。 続きを読む
消費者ニーズと医療のマッチングサービス:HealthShoppr.com
患者・消費者の医療ニーズを考えてみると、それらは決して一様ではなく、一人ひとり個別で、しかも特殊なニーズであるはずだ。患者の性・年齢などデモグラフィック属性のみならず、患者のライフスタイルや健康意識などによっても、求められる医療は千差万別であるからだ。ところが医療提供側は、そのような多様な消費者側のニーズを無視してしまいがちである。つまり、建前として「患者の選択」を重視するようになってきたとはいえ、現実には消費者が求める医療と、医療界が提供する医療との間にはギャップが存在し、ミスマッチが起こっている。
別の言い方をすれば、消費者の医療ニーズはもともとロングテール状に存在するにもかかわらず、医療機関側はヘッド部分にのみ対応しようとしている。だが、もしも一人ひとりの医療者を可視化できるとすれば、医療提供側にもロングテールが形成されることになり、両者のテール部分をマッチングさせるサービスが登場する余地が出てくる。それはある特殊な消費者の医療ニーズに対し、それを充たす特別な技能や経歴を有する医師を紹介するようなサービスである。 続きを読む
統合失調症ネットラジオ「こころらじお」
破壊的イノベーションと医療
「破壊的イノベーション」(Disruptive Innovation)とは、ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(Harvard business school press)で展開した経営コンセプトであるが、先月、今度はこのコンセプトを医療に適用した新著「THE INNOVATOR’S PRESCRIPTION: A Disruptive Solution for Health Care」が発表された。
クリステンセンのこの新著は、早速、New York Timesが「Disruptive Innovation, Applied to Health Care」(1月31日)で取り上げている。またHealth2.0コミュニティでも注目を集めており、中心的論客スコット・シュリーブ氏は、自身のブログでクリステンセンの共著者Jason Hwang氏にインタビューを試みている。 続きを読む