改革ドライビングフォースとしての医療消費者

RedefiningHealthcare

昨日(6月22日)、朝日新聞に「医療再生へ—危機感共有 あとは実行」という記事が掲載された。日曜日の朝食を食べながら、一通り記事を眺めたのだが、全体としては何か散漫な印象しか残らなかった。医療関係の識者二名と朝日側の論説からなる三つのパートが、何もほとんど噛み合うこともなく並置されており、結局のところ、どんな意図でこの記事が作られたのか首をひねらざるを得なかった。

その「散漫な印象」の原因は、「医療再生」という共通テーマがありながら、結局それを掘り下げて議論するための共通テーブルが設定されておらず、それは「編集」の側の問題が大きいと言えるだろう。つまりここに登場している三者が、同一テーブルではなく、それぞれ自分専用のテーブルに陣取って顔を見合わせることもなく、てんでに物を言っているような、そんな空々しさを感じたのである。 続きを読む

患者SNSの「trusera」が正式オープン

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今年初めのエントリでも取り上げた米国シアトル発の患者SNS「trusera」だが、先週から「ベータ版」表示がとれ、正式公開版がリリースされた。この「trusera」は元Amazon在籍者が中心になって事業化されているので、「Amazon譲りの・・・・」とでも言うべきか、とにかく優れたサーチテクノロジーがコアとなってそのサービスを支えている。

まずこの正式公開版を見ての感想は、「以前のバージョンから、ずいぶん思い切った整理をしてきたなあ」ということ。サイト内は二層に分けられ、まず「ストーリー、アンサー、ピープル」の各一覧ページが位置するトップレイヤー、そして会員ユーザーごとの「プロファイル、ストーリー、アンサー、フレンド、ジャーナル」を表示するユーザーレイヤーで構成されている。このあたりは、非常にすっきりと整理されている。 続きを読む

明日の医療を予感させるHello Health

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昨年から話題になり、このブログでも以前(ここここ)紹介したニューヨークの開業医ジェイ・パーキンソン医師。同僚のショーン・コージン医師と共に、ニューヨークで新しい地域医療サービス「Hello Health」 を立ち上げた。

「Hello Health」はIM、ビデオチャット、メール、スケジュール共有など、既存のありふれたツールを駆使し、契約顧客宅に訪問して医療サービスを提供する「無店舗医療」である。顧客とは普通のツールでコミュニケーションしているが、診察時にはPCにインストールされた先進的EHRシステム「Hello Health」を使用している。紹介ビデオをご覧いただこう。

ジェイ・パーキンソン医師の例を見ていつも関心させられるのは、そのインターネット技術の活用方法よりも、むしろその卓越したマーケティング発想である。このような医療の新業態創造は、もちろんインターネットの積極活用が支えているのだが、それ以上に今日の医療に対する消費者ニーズの洞察が素晴らしい。その独特の医療マーケティング論を、先日開かれたHIMSSサミットでジェイ・パーキンソン医師はプレゼンテーションしているが、そのスライド「Where is the Healthcare Revolution」は、おそらく今日の医療マーケティング論のベストではないかと思う。いずれまたご紹介したい。

三宅 啓

われわれが考える医療ウェブサービス

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今年は当方のTOBYOをはじめ、日本でいくつか従来にない方向性を持った医療ウェブサービスが登場して来ている。今後、さらに新しいサービスがどんどん登場し、シーンが活性化することをまず期待したい。そして、いくつか登場してきた新しいサービスを興味深く見ているうちに、TOBYOの立ち位置や目指すべき方向性について、新たに気づかされることも多い。

それら「新たに気づくこと」は多岐にわたるが、その中で一番重要なポイントを挙げるとすれば、それはわれわれがTOBYOに込めた「こだわり」を再確認させられた、ということになるだろう。その「こだわり」とは、闘病サイト、およびそれらによって形成された闘病ネットワーク圏に対する、われわれの強い「こだわり」である。別の言い方をするならば、われわれは日本の医療ウェブ分野で起きている、闘病者の行動によってもたらされた「ネット的な現象」に対して、かなり強い「こだわり」を持っていると言えるだろう。この「こだわり」の強度によってわれわれのTOBYOは、自然に、よそとはかなり異なる位置に立っているのかもしれない。 続きを読む

継続と切断(2.0をめぐって)

Web2.0から始まってHealth2.0にいたるまで、世の中には様々な「2.0」が現われて、ある意味で食傷気味である。振り返ってみると、web2.0が広く注目を集め出した2005年の時点で、もう既に「2.0」が単なる一時的なファッドやバズワーズであるとの批判が、ブロゴスフィアにはあふれていた。Health2.0についても昨年初頭、この呼称をめぐる論争が、ドミトリー・クルーグリャク氏とスコット・シュリーブ氏らの間で起きていたことも思い出される。

たしかにこの「2.0」という言葉には、単なる流行現象の側面があることは否定できないが、当方はこの言葉にもう少し深い意味を読み取っている。この言葉が、時代の「切断」を最も適切に表現し得ていると考えるからだ。われわれの弛緩した日常感覚は、往々にして世の中を「継続」として無条件に捉えている。実際にはすでに終了していることが明白であるにもかかわらず、この「継続」感によってその「終了」の事実と意味が隠されてしまうことがある。 続きを読む