PatientsLikeMeがALS患者の「遺伝子検索エンジン」をリリース

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米国で、最もユニークで、最も成功している患者SNSと言われるPatientsLikeMeだが、今月、そのフラッグシップコミュニティである難病ALS(筋萎縮側索硬化症)コミュニティの設立三周年を記念し、新たに「遺伝子検索エンジン」サービスの開始が発表された。これはALS患者が、遺伝子レベルで「自分と似た患者」を探すことができるようなサービスであるとのこと。また、同コミュニティ患者の遺伝子情報を共有することにより、ALSの原因と結果の解明をはじめ、新しいALS治療法の開発などに活かすことができるとしている。

Google資本の23andMeをはじめ、一昨年あたりから消費者向け遺伝子解析サービスが多数立ち上がってきたが、いよいよこの流れが患者SNSと合流し始めたわけだ。23andMeもコミュニティを形成しようとしているのだが、PatientsLikeMeの場合、データ共有の目的が、たとえば「ALSの新治療法開発」などと非常に明確になっているだけに、説得力あるユーザーメリットを打ち出せるのではないか。このあたり、PatientsLikeMeの巧みなターゲット戦略には学ぶべきものが多い。 続きを読む

バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」

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今週の新宿御苑は花見客で人出がすごい。週末など、朝早くからすでに入場門周辺には行列が出来ている。今日のような天気の良い日のお昼は、御苑の芝生に寝っ転がって空を見上げたいところだが、とにかく人が多すぎて落ち着かない。

さて、昨年から検索エンジンを開発してきているが、ずいぶん予定が遅れてしまった。1月10日にブログ検索をテスト公開して以来、クローリングのカバー率の改善に取り組んでいたが、一進一退、遅々として進まず、試行錯誤の末にようやく目標とする段階に近づきつつある。当面の目標は「1万人の闘病体験の全文検索」を文字通り実現することであったが、TOBYO全体の収録サイト数が増えたこともあり、なんとか実現まであと少し。

思えばちょうど1年前、3分咲きの新宿御苑の桜を見ながら思いついたのが、「ネット上に、闘病者の自発性に基づき、自然発生的に作られる「闘病ネットワーク圏」(闘病ユニバース)」というビジョンだった。このビジョンを持つことによって、TOBYOプロジェクトの方向性は固まった。そして自前の検索エンジン開発は、もちろん弱小ベンチャーにとってかなり難易度の高い仕事であったが、とにかくこれを実現できなければ「闘病ユニバース」に蓄積された膨大な闘病体験を活用することはできないのである。その意味で、後には引けない仕事だった。 続きを読む

PHR: MS「Health Vault」の利用イメージ

MS「Health Vault」の使用イメージ

マイクロソフトのPHR「Health Vault」は、Google Healthよりも約半年早く、一昨年秋にリリースされた。その後の両者の競争状況を見ると、Health Vaultがやや優位に立っているのではないかと評されることが多い。だが、一般消費者には両者の差異は分かりづらく、「結局、大差ない似たようなシステムではないのか」と疑問を呈するブロガーまで出てきている。

独自性の明確化と差別化が求められているのだが、その意味もあってか、マイクロソフトはHealth Vaultのプロモーションビデをいくつか発表している。上のビデオは、そのうちの「Health Vault in Action」と題された一本。実際に家庭で、どのようにHealth Vaultが使われるのかをわかりやすく見せている。血糖値、血圧などの家庭用計測デバイスとHealth Vaultが連携する様子がよく分かる。PHRのデータ取り込みについては、どうしても医療機関側のEMRやEHR経由を想起しがちだが、糖尿病、高血圧症といった慢性疾患では家庭用計測デバイスが活躍する。ビデオでは、いずれのデバイスもワイヤレスでPCと交信しているが、このあたりちょっとしたことなのだが、使用感は格段に違うと思う。
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闘病データ管理ツール

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先日のエントリで、インターネットから大量のデータを収集し、統計的に分析した上で自らの治療を選択した闘病者の例を紹介した。この例が示すように、闘病に関連するデータの収集と活用は、闘病における非常に重要な活動なのである。このほかにも闘病者は、医療費用、医療保険、各種申請、食事、薬服用など、闘病に伴う多数のデータを管理をする必要がある。日記形式の闘病記もそれらを記録するツールの一つだが、数値表現できるデータは、やはり表やグラフで管理するほうが便利だ。 続きを読む

「サイト認証」という時代錯誤

医療関連ウェブサイトの国際認証団体であるHON(Health On the Net Foundation)が、その認証基本ガイドラインである「HONコード」の修正を計画している。HONはジュネーブに本部を置く国連の外郭団体で、最も権威のある医療サイト認証団体とされており、その認証シールは海外著名医療サイトはもちろん、医療ブログなどにも多数の掲出実績がある。

今回のHONコード見直しは、現在世界的に医療関連サイトにも浸透しつつあるWeb2.0サービスへの対応が主たる目的とされている。具体的には従来のHONコード8原則を土台とし、それぞれの原則をWeb2.0の動向に合わせ細かく修正している。この修正HONコード案はHONサイト上で公開されており、それに対するアンケートページも設けられている。

思い返せばインターネット初期、HONやURACをはじめいくつかの認証団体が立ち上がったが、結局、それらのうちで残ったのはHONコードだけと言ってよいだろう。それは他の認証ルールが煩雑を極めたのに対し、HONコードが「8原則」だけで一番シンプルだったからだと思う。日本でも「JIMA」とか「JACHI」などという団体が「サイト認証」に取り組んだが、まったく普及しなかった。 続きを読む