EHR2.0とは何か

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春先からClinical Groupwareという言葉をブロゴスフィアで目にするようになった。そして、米国における医療IT関連認証機関であるCCHITの「EHR認証」をめぐる論争が起き、やがてEHR2.0という言葉が語られるようになった。

従来のEHRが「クライアント&サーバ」システムでプロプライエタリなビジネスモデルであるのに対し、EHR2.0はクラウド・コンピューティングを活用したウェブベースでオープン&相互運用可能なものと想定されている。

これらEHR2.0議論を、総括的に要領よくまとめたプレゼンテーションファイルが公開されたのでご紹介しておきたい。表題にある「HITECH Act」とは「Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act」で、オバマ政権が打ち出した医療関連景気浮揚法案。このプレゼンテーションファイルを作成したのはVince Kuraitis氏だが、氏はかつてGoogle Healthの概要を公開に先立って予測し話題になった。ダウンロードは下記「EHR20」から。

EHR20 (PDF)

“EHR 2.0: HITECH Act Stimulus Funds Create Care Collaboration Opportunities In A Networked Health System  “

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Health2.0企業の針路

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昨日エントリで取り上げたが、同じ目標を持ち活動していた仲間が減るのはやはり寂しい。だが、それでもとにかく前進しなければならないのだ。闘病者の自発的活動によって形成された闘病ユニバースに基づいて、新しい医療サービスを生み出し持続させるために、さまざまなプレイヤーが参画できるようなビジネススキームを創り出していかなければならない。

TOBYO自体もこれら多様なプレイヤーの活動プラットフォームとして機能すべく、柔軟に対応できなければならない。TOBYOは、まず闘病ユニバースの情報共有インフラであることを目指しているが、そのことにとどまらず、さらに広く社会的な闘病体験共有インフラとしても機能することを目指していきたい。闘病ユニバースで生成された闘病体験情報は、闘病者同士で活用されるだけでなく、医療界、産業界、医療行政などにおいても価値を持つ情報である。つまり闘病体験情報を闘病ユニバース内部だけではなく、社会的に還流させることによって、闘病者が体験した具体事実が、製品開発、サービス開発、医療業務改善、医療教育、研究などに活かされる道をつくるのだ。このような闘病体験の「情報流」を創り出すことが、Health2.0企業にとってのマネタイズの前提である。 続きを読む

オンライフのサービス終了を惜しむ

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7月24日をもってオンライフがサービスを終了するとのことである。突然の発表に驚いている。先月の当ブログのエントリ「日本のHealth2.0経済圏の創造へ向けて」に「エスタブリッシュメント側からも資金、人、知恵、情報が集まるような仕組みを作らなければならない」などと書いたが、当方はまさにちょうどそのスキームを作るべく動き出したところであり、当然、オンライフの皆さんにもご協力をお願いしようと考えていた。

サービス終了に至る経緯は「ヨセミテblog」に詳しく記されている。スタートアップ企業が直面する問題とその総括が率直に公開されているが、貴重な事業経験として、今後、ベンチャー企業コミュニティ全体に共有されるだろう。ここまで真摯に書かれた総括書に対し、あれこれ論評する必要はないと思った。四人の皆さんの決断を、素直に、そのまま、丸ごと受け止めたい。 続きを読む

PHRとHealth2.0:プレゼン・スライド

先週、ワシントンDCで開催された米国医療法律家協会(AHLA)年次総会において発表されたスライド。発表者はRobert Coffield氏。彼は法律家として「Health Care Law Blog」でHealth2.0の論陣を張ってきている。このスライドではPHRとHealth2.0の位置関係が若干語られているが、少し食い足りない気もする。おそらくPHRは、Health2.0のみならず医療システム全体の基本インフラになるはずなのだが、それを言うのはもう少し先なのかも知れない。 続きを読む

闘病ユニバースへのリスペクト

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私たちが、外部の人から日頃よく訊かれる質問がある。それは「TOBYOのようなサービスは海外にあるのか?」という質問である。それに対し「海外にはTOBYOのようなサービスは存在しない」と答えると、たいていは意外な顔をされる。まあ、このブログで海外の新しい医療サービスを多数紹介しているので、きっとTOBYOも、それらのうちの或るサービスから発案されたのだろうと見られても、ある意味当然だとは言えるだろう。だが、TOBYOは生粋の「Made in Japan」なのだ。

TOBYOは私たちのオリジナルアイデアだが、そのことをあまり自慢するつもりはない。なぜなら、正確に言えばTOBYOは日本の闘病ユニバースが生み出したものだからだ。15年前に日本で商用インターネットが始まって以来、日本では「ネットで闘病体験を公開する」という文化が自然発生的に生まれたのである。現在、ネット上にはおよそ3万件(推定)の日本語闘病サイトが開設されているが、この15年間に、この闘病ユニバースは量的にも質的にも進化してきたのである。 続きを読む