医療とゲーミフィケーション: HealthTap


昨年から、あちこちで「ゲーミフィケーション」という言葉を目にする機会が増えてきている。この言葉を手っ取り早く理解すると、以下のようになる。

ゲームデザイン手法や仕組みを用いて問題の解決やユーザー契約などを獲得すること。例えば、既存のシステムやサービスへの、ポイント性、順位の可視化、バッヂ、ミッション、レベルシステムの採用など。さらにゲームの要素を盛り込むことによって楽しみながら意図せずそれらと関わっていってもらうことが目的で行われる場合もある。(wikipedia:ゲーミフィケーション

このゲーミフィケーションの手法を医療Q&Aサービスに導入したのがHealthTapである。このサービスが普通の医療Q&Aと異なる点は、ゲーミフィケーションの仕組みを回答者である医師参加者に適用している点にある。

HealthTapに参加した医師は謝礼や換金可能ポイントなどは与えられないが、そのかわり回答数、医師同士の”agree”評価、一般ユーザーの”thanks”評価などのポイントを競い、獲得ポイントによってさまざまな「賞」を贈られたり、自己の評価ステータスを示す「レベル」を上げたりすることができる。

また、HealthTapでは医師の参加モチベーションを上げるために、以上のようなゲームライクな競争の仕組みを用意するのみならず、医師個人を可視化し、ウェブ上の医師プレゼンスを高め、同じ地域の患者への認知促進をはかるなどの「販促効果」もあるとしている。これらの「メリット」にひかれてか、現在、医師参加数は約9000人を数え、毎日100人づつ増加しているとHealthTapは発表している。 続きを読む

Welby糖尿病クラウド

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クラウド・ベースの糖尿病治療管理サービスが登場。Welby糖尿病クラウド。シンプルで分かりやすく、使いやすそうなアプリだ。よく出来ている。昨日(1月24日)のNHK「おはよう日本」でも紹介されたようだ。

ウェブ医療サービスも、これまでは情報提供型サービスが多かったが、これからは具体的に治療に接点を持つツールや、治療に関わるサービスが増えてくるのではないかと思う。話題になっているうつ病サイトの“U2plus”なども、これらの流れが具現化したものの一つだろう。「コミュニティ」という点で見ても、”U2plus”は従来の「患者コミュニティ」とは違った位置づけになっていると思う。

ところで、このWelby糖尿病クラウドを開発したのは、メドピアに在籍しておられた比木さんである。比木さん、独立され、幸先良いスタートを切られてよかったですね。サービスインおめでとうございます。果敢なチャレンジに敬意を表し、今後のご活躍、ご健闘をお祈り申し上げます。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

全米最大のオンライン・モバイル医師コミュニティが日本へ:QuantiaMD Japan

昨夏から日本語サービスが始まったQuantiaMD。今年から、日本人医療者のコンテンツが配信されている。QuantiaMDは「医師コミュニティ」と銘打っているものの、医師エキスパートのプレゼンテーションによるオンライン学習と最新の医療情報提供サービスがメインになっている。だが患者向けコンテンツも提供されており、このあたりが従来の医師SNSと違うところ。また「症例クイズ」や「CME」(ポイント・システム)などユニークなコンテンツやサービスも用意されている。

今後、医師SNSが国境を越えて展開されることは大いにありうるだろう。すでに英語圏では医療情報は国境を越えているが、国際的な医療情報の共有が、医療の進化に加速度をつけることはまちがいない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

「消極的な参加、無意識の言葉」が意味を持つ時代

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今週からいよいよ社会全体が再起動したような、そんな空気が街に満ちている。今年あたりから、ウェブ医療サービスは新しい段階に突入するような予感がある。Health2.0という言葉が現れてすでに6年が経ち、そのバズワードとしての新奇性が耳に新鮮だった時期は去った。これからいよいよその真価が試されるのだ。しかし「2.0」という言い方も、もうとっくに賞味期限が過ぎたような気もする昨今だが、ここに今ひとつ強力な「2.0」が現れた。「一般意思2.0」である。

「本書の出発点は、近代の政治思想が抑圧し排除したルソーの「夢」が、情報技術の世界において思わぬかたちで回帰している、そのダイナミズムへの注目にある。その「欲望の回帰」を可視化することで、現代の起業家やエンジニアが目指しているものをきちんと思想史の文脈に位置づける、それが本書の執筆動機のひとつだ。」(「一般意思2.0」、東浩紀、講談社、P102)

この本を読みはじめた時、いろいろな想いが体の底から、文字通り急に吹き出してくるのを禁じえなかった。ゾクゾクしたのだ。読書でこんな体験をしたのも久しぶりのことである。ここ数年、私たちが暗中模索、まさに手探りで進めてきたTOBYOプロジェクト。そこで私たちが考えてきたこと、めざしてきたものを、「どうだ、これがその方向性だろう」とズバリ言い当てられてしまったような気がしたのだ。「現代の起業家やエンジニアが目指しているものをきちんと思想史の文脈に位置づける」とあるが、本当にそのとおりの成果が出されていると思う。 続きを読む

寝正月的Health2.0

nenga2012

あけましておめでとうございます。

元旦、初詣から帰って発熱、腹痛、下痢。風邪。二日、三日と自宅蟄居、まさに寝正月状態。布団の中でスマホを見ながら、今年の行方をあれこれ考える。

やはりこの時期、「今年はこうなる!」みたいな予想ものエントリが多い。その中で「ビッグデータ・アナリティク・サービス」という言葉を目にした。これは、サイズは小さいもののdimensionsがめざしている方向だと思った。「ネット上の非構造化データをいかに構造化するか」という話だが、これもTOBYOプロジェクトが最初からめざしてきたことだ。今後、dimensionsが保有するデータを他の医療関連データと繋ぐことで、さらに多面的に医療を可視化するサービスが提供できるはずだ。

「データ中心型スタートアップ」というのが、今年出てきそうだとの話もある。音楽業界の“Next Big Sound”など、ソーシャルメディアからビッグデータをアグリゲートし、B2Bで特定業界に寄与するプロフェッショナルなデータサービス提供事業が出てきている。数年前まで、この分野はブログ・リサーチなど汎用データサービスがほとんどを占めていたが、これから業界特化型サービスが主役になるだろう。医療分野でそれをめざしているのがdimensionsだ。

さてHealth2.0関連を見ると、なんといってもこの正月のビッグニュースは、米国の代表的医師SNSであるSermoのファウンダー(ダニエル・ペールストラント)が”Sermo”を離れ、新たにスタートアップ事業“par80″を発表したことだ。これには驚いた。この”par80″は「医師と患者をダイレクトに結ぶサービス」になるとのことだが、詳細は不明。また今後、どうやらペールストラントは完全にSermoを去るわけでもなさそうだ。 続きを読む