Unconcerned But Not Indifferent:無頓着、しかし無関心ではなく

ManRay

昨日、暑い中を妻と「マン・レイ展 ~知られざる創作の秘密~」(国立新美術館)へ出かけた。美術館は朝から大混雑。これはオルセー美術館展を観る人達がほとんどで、館内を埋めつくす長蛇の列には驚いたが、マン・レイ展の方は人も少なくゆっくり鑑賞することができた。

以前から自宅の机の上にマン・レイのポスターを飾っている。マン・レイの妻ジュリエットのモノクロ写真に手描きのラインを書き入れたポスターだが、なんとも言えない味があり気に入っている。展覧会を見終えて何かいまいち物足りなかったのは、このポスターが出展されていなかったせいもあるのか。パリ時代のヘミングウェイと息子バンビの写真があったのも意外だった。同時にマン・レイ作の映画も上映されていたが、かつて京都のシュールリアリズム映画祭で見た記憶があり懐かしかった。

Unconcerned But Not Indifferent
無頓着、しかし無関心ではなく

これはマン・レイの墓碑銘に刻印された文言である。 続きを読む

DFCと産業界トレンド

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目下開発中のDFC(Direct From Consumer)だが、ここのところ製薬企業をはじめ様々な方々から、この新しい患者体験ファクト・ファインディング・ツールに対するご意見を頂戴している。やはり「ツール」であるから、実際に動かしてみてその使用感を体験してみないことには、なんとも評価できないところはあるだろう。その意味で早くテスト評価版を完成させ、ひとりでも多くの方々に実際に試していただきたいと考えている。

ところで当初、私たちがDFCの評価について一番気がかりであったのは、このツールが端的に言って「ピンと来るか、来ないか」という点である。おそらく評価は極端に二分されるだろうと想定していたのだ。これはまず、患者ドキュメントあるいは一般にUGCというものをどう評価するかという問題に関わってくる。この点、医療界、エスタブリッシュメント企業、あるいは中高年層などからは、おそらくネガティブな評価がされることは覚悟していた。

だがこれまで聴取した意見によれば、もちろんそのようなネガティブ評価はあるものの、それが圧倒的多数を占めているわけでもないことが分かり、ほっとしている。ソーシャルメディアの拡大と浸透、ブログリサーチなど新手法の台頭などによって、大きな流れとしてUGCを重視して行く方向が産業界で明確になりつつあるようだ。ある広告会社の方から次のような話を聞いた。

ここ一年くらいで、クライアント企業の情報収集スタイルが劇的に変わった。従来の市場調査をやめ、ブログ、SNSなどに書かれた消費者の生の声を大量に集めて読み込み、そこからファクトを探索するようなスタイルが一般的になりつつある。その意味でCookpadや@cosmeなどに注目が集まっている。

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仮想コミュニティのポータル

Universe

今週はいくつかインタビューの予定が入った。TOBYOに関心を持っていただいて感謝感激である。ところで事前の質問リストを見ていると、やはり「どうしてTOBYOは闘病記を書く機能やコミュニティ機能がないのか」という質問があった。これはこれまで一番多く当方に発せられた質問であるが、おそらく今後も事あるごとに問われるのだろう。

何度でも繰り返す必要があるのだろうが、私たちがTOBYOプロジェクトを企画する段階で、ネット上には約3万サイトと推定される闘病ドキュメントサイトが既に存在していた。端的に言って、一から闘病体験をTOBYOサイトで書いてもらうよりも、既に存在する闘病サイトを可視化しリスト化する方が早く、しかも確実なのだ。TOBYOが闘病体験を書く機能を持たないのは、そのように判断したからだ。

次にコミュニティ機能だが、ネット上に分散して存在する闘病サイト群は、相互リンク、コメント、トラックバックなどを通じて緩い自然発生的なネットワークを作っていた。これを私たちは一種の仮想コミュニティとみなし「闘病ユニバース」と名付けたわけだ。つまりコミュニティ機能もまた、私たちがTOBYOサイトで一から作り込むまでもなく、すでにネット上に存在していたのだ。 続きを読む

Health2.0の事業プレイヤーとして

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私たちは、昨年の秋頃にNPOへの移行を漠然と考え始めていた。そしてそのことをこのブログで公開もしたのだが、それは当時、「TOBYOのようなサービスは、むしろNPOのような非営利事業スタイルのほうが向いているのではないか」と考えていたからだ。だがそれから時間が経つに連れ、次第にそれら「NPO路線」は私たちの中で自然に消えていった。

どの時点でその転換点があったのかと問われると、明確に返答できない。おそらくいくつかの複数の契機があったはずだが、そのひとつは昨年末に”Data is the next Intel inside”との「2.0の原点」に回帰したことだろう。この原点回帰によって、データを起点としたマーケティング・サービス創造という方向が明確になった。そしてそのことはやがてDFCへと繋がっていくわけである。当時、まだHealth2.0のビジネスモデルは多分に不透明であったが、今にして思えば、PatientsLikeMeとSermoの成功を徹底的に分析しておけば、「データ起点」の方向にビジネスモデルがはっきり見えていたはずなのだ。 続きを読む

Kindle版のHealth2.0電子ブックレット登場

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オランダから世界初のHealth2.0ブックレット”A Little Booklet About Health 2.0″が電子出版された。米アマゾンのキンドル・ストア でダウンロード購買できる。キンドルを持っていない人も、PC、MAC、iPhone、iPadなど手元のデバイスにKindleソフトをインストールすれば即座に読める。

あらためて気がついたのだが、そういえばこれまでHealth2.0関連書籍は、まだどこからも出版されていなかったのだ。それに米国からならわかるのだが、オランダからHealth2.0本が世界で初めて出たというのも面白い。もともとオランダは、ヨーロッパで最も熱心に医療ITシステムに取り組んでいるとの定評があった。またここ2年ほど、オランダではHealth2.0アンカンファランスが活発に開催されてきている。ヨーロッパでHealth2.0受容が一番進んでいるのがオランダだと言えるだろう。

著者はRadboud University Nijmegen Medical CenterのLucien Engelen氏。氏はこの電子ブックレット発売と同時に、論文「Definition of Health 2.0 and Medicine 2.0: A Systematic Review」を”The Journal of Medical Internet Research”に発表している。こちらもチェックして欲しい。 続きを読む