目下開発中のDFC(Direct From Consumer)だが、ここのところ製薬企業をはじめ様々な方々から、この新しい患者体験ファクト・ファインディング・ツールに対するご意見を頂戴している。やはり「ツール」であるから、実際に動かしてみてその使用感を体験してみないことには、なんとも評価できないところはあるだろう。その意味で早くテスト評価版を完成させ、ひとりでも多くの方々に実際に試していただきたいと考えている。
ところで当初、私たちがDFCの評価について一番気がかりであったのは、このツールが端的に言って「ピンと来るか、来ないか」という点である。おそらく評価は極端に二分されるだろうと想定していたのだ。これはまず、患者ドキュメントあるいは一般にUGCというものをどう評価するかという問題に関わってくる。この点、医療界、エスタブリッシュメント企業、あるいは中高年層などからは、おそらくネガティブな評価がされることは覚悟していた。
だがこれまで聴取した意見によれば、もちろんそのようなネガティブ評価はあるものの、それが圧倒的多数を占めているわけでもないことが分かり、ほっとしている。ソーシャルメディアの拡大と浸透、ブログリサーチなど新手法の台頭などによって、大きな流れとしてUGCを重視して行く方向が産業界で明確になりつつあるようだ。ある広告会社の方から次のような話を聞いた。
ここ一年くらいで、クライアント企業の情報収集スタイルが劇的に変わった。従来の市場調査をやめ、ブログ、SNSなどに書かれた消費者の生の声を大量に集めて読み込み、そこからファクトを探索するようなスタイルが一般的になりつつある。その意味でCookpadや@cosmeなどに注目が集まっている。
このような産業界のマーケティング・トレンドはまさにDFCにとって順風である。DFCはブログなどで公開された膨大な患者体験から、医療分野で実際に体験されたファクトを抽出し、エキスパートに届けることを目指す世界初のファクト・ファインディング・ツールであるからだ。
またあるVCの方からは、「DFCのようなツールが、今までなぜなかったんでしょうね。もっと早くからあってもよかったのに」との感想をいただいた。たしかにDFCが次第にはっきりした姿と形を取るようになってみると、「患者体験を直接エキスパートに届ける」という誰でも思いつくようなシンプルな手段が、今まで実現されていなかった事自体かえって不思議な気さえしてくる。
私たちは単にTOBYOプロジェクトをマネタイズする必要から、TOBYOプロジェクトのB2B領域としてDFCを構想し開発してきた。だが気がついてみると産業社会の大きな動向が、いつの間にかDFCが目指す方向と一致していることがわかってきたのである。気がついてみると、そこには順風が吹いていたのである。
しかし、その順風をしっかりと翼を広げて受け止めなければならない。まだまだ乗り越えなければならない山があり、まだまだチャレンジは続く。お楽しみはこれからだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.