膨張と収縮: Ban & Crunch

Gyoen_Ume_2011

2月になった。厳寒の毎日。寒風吹きすさぶ新宿御苑にあって、あちこちで梅が蕾をふくらませ、既に一部開花したものもある。遊歩道を歩いていると、まだ春は遠いが確実に近づいてきている気配がわかる。ここのところブログの新規エントリ数が少なかったが、春へ向け徐々に元のペースに戻していきたい。

先月1月は、dimensionsのデータ処理に思いのほか時間を費やした。数百万ページのデータを、数千の固有名詞で一つ一つ精査するのだから、当然これは大きなマシンパワーが必要になる。運用フェーズでの効率的な処理工程を組むために、これまでいろいろ試行錯誤をした。時間はかかったが、今後のために、どうしてもこれらの経験は積んでおかなければならなかった。

さて、TOBYOはもうすぐ収録闘病サイト数で2万6000サイトに達し、文字通り国内最大の患者体験データベースであり、今後も引き続き成長し続けるが、この巨大なデータ集積を効率よく活用するツールが「ディメンションズ」(dimensions)である。拡張検索エンジン「Xサーチ」と蒸留器にして多次元データ生成エンジンである「ディスティラー」。この「二つのエンジン」によって、これまで多様で無秩序に存在していたがゆえに用途が限られていたPGC(患者生成コンテンツ)を、これから縦横無尽に広範なエキスパートが利用する道が開ける。日本の患者が、日本の医療で何を体験し、何を思ったか。これを患者自身が自発的に作成した膨大なドキュメント集積を使って、すみずみまで明らかにできるのである。日本医療の実態を、まさに「患者の目」を通して可視化できるわけだ。大げさではなく、これは一つのイノベーションだと考えている。 続きを読む

映画「ソーシャルネットワーク」を見て

SNS

映画「ソーシャルネットワーク」を見た。昨年秋から、いろいろなところでこの映画について目にする機会が多く、いわば予備知識過剰状態で映画館の座席に座ったが、それなりに面白く見た。映画は、世界最大のSNSをめぐる創業関係者の葛藤、友情、そして裏切りのエピソードを軸として、今日のベンチャー・ビジネス・シーンの実相に迫ろうとしている。

いくつか印象に残ったシーンがあるが、双子のウィンクルボス兄弟が、自分たちのアイデアをザッカーバーグが盗用したとハーバード大学学長に訴える場面では、学長が「アイデアを真似されたなどとつまらないことを言うな。自分たちで新しいプロジェクトを始めればよいではないか。ハーバードは学生に創造的であることを求める」と一喝するところがあった。我が意を得たりだ。そのとおりで、自分たちの独創的なプロジェクトを創造すること以外に、ベンチャーをやる意味などないのだ。他人のプロジェクトをあれこれ評論するようなことではなく、とにかくアイデアを作って自分のプロジェクトを立ち上げなければ話しにならない。自分自身のプロジェクトを持たなければ、どんなイノベーションも変革も、この社会に実現することはできないのだ。 続きを読む

dimensionsのアンバンドリング

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先日、TOBYO収録の乳がんサイト数は2,000件を越えたが、こうなるとこれら乳がん闘病サイトだけを対象にした検索エンジンが欲しくなる。乳がん闘病ドキュメント専用のバーティカル検索エンジンである。実はこれは、TOBYOプロジェクトの当初からあった構想なのだが、とにかく量(収録サイト数)が一定の規模以上にならならければあまりメリットはない。

しかし、既にTOBYOでは「乳がん」や「うつ病」のようにサイト数2,000件を越える病名が出てきており、また収録サイト数100件を越えるものは58病名に達している。そろそろ当初構想していた「単一病名バーティカル検索エンジン」を作っても良い段階に来たと思う。

この「単一病名バーティカル検索エンジン」だが、TOBYOプロジェクトの新規サービスdimensions(ディメンションズ)の拡張検索エンジン「Xサーチ」で実現されている機能である。本来はdimensionsの有料ユーザーだけに提供することになっていたが、これら機能を病名ごとに切りだし、APIを公開することで広く使ってもらいたいと考えている。

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注目のビジネスモデル・トップ10

View more presentations from Board of Innovation (BOI).

2010年に注目されたビジネスモデル・トップ10が話題になっている。10位にPatientsLikeMeが入っている。

Health2.0のビジネスモデルについてこのブログでも分析してきたが、現在見えているのはPatiensLikeMeやSermoのように、患者もしくは医師のUGCデータの再販ということになる。他にもあるはずなのだが、新しいビジネスモデルが医療関連ITビジネス創造のキイになることはまちがいないだろう。

広告、ユザー課金、モノあるいは情報商材販売などのレガシーモデルではないモデル。たしかにPLMはそう言う意味では新しいモデルではあるが、こんなビジネスモデル・トップ10に入るとは意外感が大きい。それほど医療関連ビジネスモデルが貧困であると言うことか。当方のdimensionsはいろいろな可能性を検討していきたい。これまでコンサルとパートナーを組み、マンパワーに頼った販売方法みたいなものを中心に描いてきたが、いかにもロウテクだし、もっと多様で柔軟な発想が必要だと昨秋から考えていた。まして「患者体験レポート」みたいなコンテンツを販売するなど、安易に考えていたこともあったもんだと反省。

ビジネスモデルのイノベーションこそ、Health2.0が成立する大前提だ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

春からdimensions

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あけましておめでとうございます。

本日から稼動開始。みなさん、どんなお正月でしたか。東京は寒さは増したものの、おおむね穏やかな日々に恵まれた。お雑煮を食べ、音楽を聞き、本を読み、少しお酒を飲む毎日。昨年の疲れもだいぶ癒えたような気がする。

二日は毎年恒例のラグビー観戦に国立競技場へ。大学選手権準決勝は早明再戦となったが、早稲田が久しぶりの”Ultimate Crush”を見せてくれた。鋭いタックルが決まり、フォワード、バックス一体で走りまわり、AgilityとSpeedで明治を圧倒した。気分爽快。

帰りに古レコード屋を何軒か見て回る。池袋のショップでジャズのLPエサ箱から何気なく引き抜いた一枚が、なんとマッコイ・タイナーの「DIMENSIONS」というアルバム(!)。こいつぁー春から縁起が良いわい。当方、マッコイ・タイナーはこれまでコルトレーン時代作品と70年代「SAHARA」以降の何枚かを聞いてきたが、こんなアルバムがあるとは知らなかった。1983年録音。さっそく聞いてみた。60年代-70年代のデュオニソス的でデモーニッシュな緊張感あふれる演奏ではなく、かなりリラックスした明るくアポロン的な演奏は良いのだが、相変わらず手数も音数も多いのはこの人の特徴か。も少しシンプルに音を整理してはどうかと、老婆心ながら思う。だが、正月にこのタイトルの作品に出会ったのも何かの縁だ。TOBYO_dimesionsのテーマソングにしようか。 続きを読む