相当怪しい「医療2.0論」

海外ではHealth2.0に代表される新しいムーブメントが医療の分野で起動しつつあるが、日本ではそのような動きは今のところない。Health2.0関連の日本語の情報自体がまだ圧倒的に少ない。そんな中で、偶然、薬事日報ウェブサイトで「医療2.0≪医療とWEB2.0≫」という連載コラムが始まることを知り、期待して読んでみたが・・・・・。

師曰く、「期待は失望の母である」。 続きを読む

書評:「フラット革命」

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昨春発表された「Google、既存のビジネスを破壊する」(文春新書)以来、佐々木俊尚氏の2.0関係の著作は出るたびにすべて読んできたが、本書は佐々木氏がこの間論考してきた諸問題を、ある意味で中間的に集大成する労作。

■「フラット革命」 佐々木俊尚 著、講談社

まず、この書名を見て「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン)を想起する向きも多いだろう。フリードマンが提起した新しい世界像と共鳴しながら、本書はさらに日本の「戦後社会」を貫徹してきた同質的なゲマインシャフト崩壊後に出現した新たな社会の光景を、インターネットを結節点として、マスメディア、ジャーナリズム、政治、社会、文学、公共性等、様々な現実を切り出して見せてくれる。 続きを読む

書評:「医療の限界」(小松秀樹、新潮新書)

genkai昨年、「立ち去り型サボタージュ」という衝撃的な言葉で話題になった「医療崩壊」(朝日新聞社)。その著者の新著が出た。「慈恵医大青戸病院事件」(日本経済評論社)以来、医療現場の当事者として、医療事故をはじめ、今日のさまざまな医療問題に精緻な考察を示してくれてきた著者だけに本書に対する期待も大きかったが、結論から言えば、むなしくも期待は裏切られた。期待は失望の母である。

本書を読み進むに連れ、さまざまに疑問が立ち上がり、肩すかしを食らい、もやもやした不快感を残して読了となった。同時に医療者と生活者・大衆との間にある懸隔の大きさを、改めて思い知らされたような気がした。 続きを読む

書評:フューチャリスト宣言

前傾姿勢と強い握力

「フューチャリスト」で「宣言」と来れば、どうしても20世紀初頭のアヴァンギャルド芸術運動である未来派を思い出してしまう。マリネッティらのイタリア未来派、それからマヤコフスキーらのロシア立体未来派(クボ・フトゥリズム)のことである。しかも未来派にせよダダにせよ、はたまたシュールレアリズムにせよ、奇しくもこれらアヴァンギャルド芸術ムーブメントにはマニフェスト(宣言)がつきものであった。 続きを読む

書評:「医学は科学ではない」

「医学は科学ではない」 (米山公啓、ちくま新書、¥680)
遅ればせながら読了。ちょうどタイミングよく、医療情報提供において「医療情報の確かさ」をどのように考えればよいか、Googleのアダム・ボスワース氏の論考を材料に思料していたこともあり、本書から非常に刺激的な示唆を貰った。 続きを読む