三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

Health2.0ヨーロッパ:オープニング・プレゼンテーション

今月6日-7日、パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパのオープニング・プレゼンテーションが公開された。プレゼンターはマシュー・ホルトとインドゥー・スバイヤが担当したようだ。

導入部の「インターネットの歴史」そしてお決まりの「2.0」のおさらいには食傷気味。本論であるHealth2.0にたどりつくまでが長すぎる。かつて広告業界ではプレゼン冒頭部分(たいていマーケティングスタッフが担当していた)を「祝詞(のりと)」と称していたが、これは短ければ短いほどいいし、できればない方がいいに決まっている。

スライド17で、懐かしいMinitelが出てきたのには驚いた。これは電話帳の代わりにフランス政府が配布したビデオテックスで、1980年代には先進的なニューメディアとして盛んに紹介されていた。当時、日本でも同様のビデオテックス「キャプテンシステム」が登場したが、どちらもいつの間にか姿を消してしまった。 続きを読む

競争優位の源泉

social_capital.jpg先月「ツイッターノミクス」(文藝春秋)が出てようやく日本でも注目されはじめたタラ・ハントだが、TechWaveに三橋ゆか里さんによる「インタビュー:「ツイッターノミクス」 著者、タラ・ハントさん -前編- 」が掲載されている。このインタビューを読んで「なるほど」と胸にすとんと落ちたように思ったのは、「リスクをとること」についてのタラ・ハントのメッセージだ。

「日本のベンチャーが出資が集まらなくて苦戦していると聞いたけれど、ビジネスを変える最適の方法は新しいアイディアをサポートすることだと思う。アメリカでスタートアップと携わる仕事をして学んだことは、そしてこれは「ツイッターノミクス」の中でも重要なポイント、そして私の哲学でもあるけれど、それは「リスクをとること。リスクを恐れないこと」よ。本能で感じる、自分が強く信じることなら、リスクをとることは自己実現の いちばん手っ取り早い方法だもの。」

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衰退する米国医療テクノロジーと日本の高齢化産業界

昨年から、米国医療IT業界とくにITゼネコンの停滞についてさまざまな指摘がされはじめている。その原因として、たとえば医療IT分野の規制やシステム認証制度などが従来より強化されてきたからだと言われているが、はたしてそうだろうか。一方、医療IT分野だけでなく、製薬、医療機器の分野においても停滞は見られ、総じて米国の医療テクノロジー全般が衰退しはじめているのではないかとの議論が出てきた。

Harvard Business Reviewの4月12日付ブログで、“Has the U.S. Health Technology Sector Run Out of Gas?”と題するエントリがポストされた。製薬、医療機器、医療IT分野の危機的状況がレビューされているが、その原因を次の三点で解説している

  1. リスク回避のマネジメント・スタイル
  2. 規模は実際にはハンディキャップになっている
  3. グローバル人材競争に負けている

これを見ていると、何か日本経済のことを指摘されているような気がした。はたして、日本の大企業で「ゲーム・チェンジング」なリスクを取ろうというところはあるだろうか。規模がでかくなるほど官僚体質は強化され生産性は低下する。また、かつては世界の先頭集団に属しながらも、いつのまにか下位集団に転落しはじめると、世界から優秀な人材を集めることはできなくなる。 続きを読む

Health2.0ヨーロッパのオープニング・ビデオ


4月6日、7日パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパ・コンファレンス。そのオープニングビデオが公開された。「ヨーロッパでは政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」とのタイトルが付されているが、そう言えばヨーロッパの医療制度は日本に似ている。その意味でこのコンファレンスでどのような議論がされたのか興味深いところだ。

しかし「政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」と言われてもイメージが湧くはずもない。政府と2.0は対立概念としてなら理解できるが、「2.0を推進する政府」など悪い冗談としか思えない。(Goverment2.0というのもあるが・・・・)。だからこのビデオのタイトルを見た途端、正直言ってあまり良い印象を持てなかった。

そう言えば昔、口を開けば「国のe-Japan戦略は云々」などと吹聴していたインターネット医療関連NPOがあったが、このビデオタイトルを見て、あまり思い出したくもないことを思い出してしまった時のような気分がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

B2Bモデルへのチャレンジ

B2B_BlackSwan

昨日エントリで医療ウェブサービスをターゲットから考えてみた。やや悲観的な論調になってしまったのは、単に当方の痛風発作のせいと考えていただきたい。実のところ楽観も悲観もなく、ただ現実の諸相をできれば直視したいとの思いしかない。それに楽観とか悲観とか言ってみても、あるクリティカルポイントで画然と区分されているわけでもない。そこには楽観から悲観に至るある種の連続体があるだけである。

TOBYOがターゲット問題の困難からフリーハンドを持つと考えているのは、TOBYOがB2Cだけに依存する事業ではなくなっているからだ。TOBYOは闘病ユニバースの全ての闘病体験を可視化するプロジェクトであり、その意味では闘病ユニバースのインフラツールを目指している。だがそれと同時に、新たにDFCプロジェクトへと進み始めたTOBYOはB2Bの領域へと歩を踏み出そうとしている。 続きを読む