三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

二つの視線

ブログを書くようになって、いろいろな人から声をかけてもらい意見交換する機会が増えてきている。テーマは様々だが、やはり新しい医療サービス、それもウェブを利用したサービスの可能性について議論することが多い。新規事業アイデアの可否をめぐって意見を求められることもある。もちろん、これらのディスカッションが自分にとって興味深いことは間違いないのだが、そこに何か言葉にならない違和感を覚えてしまうことも多い。

その違和感を探ってみると、「医療界から事業を見る視線」と「事業から医療界を見る視線」が互いに交差点を持たないまま行き交う現場に立ち会うことへの、一種の苛立ちがそこにあることに気づく。その二つの視線が仮に交差するとして、理屈の上ではその交点に「患者」が見えなければならないはずなのだが、いくら議論しても患者は現れず交点も見えてこないのだ。しかも一方では「患者中心の・・・・」とか「患者に優しい・・・・」などと、歯の浮くような美辞麗句が空々しく語られているのである。 続きを読む

TOBYO、国立国会図書館Dnaviに公式登録される

kokkai

今日、国立国会図書館から当方へ連絡があり、TOBYODnavi(国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス)に登録されたとのこと。まったく予想外のことで驚き面食らったが、早速そのDnaviサイトを調べてみると次のような説明があった。

[Dnaviとは?]

インターネット上に存在する豊富なデータベースは、学術研究はもとより、 多方面にわたる調査に不可欠であり、質的にも量的にも重要な情報資源です。国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)では、 これらのデータベースについて書誌情報(メタデータ)を作成し、当館ウェブサイトからリンクすることによって、ナビゲーション・サービスを実施します。

以上の説明に続いて、さらに「Deep Web」に関する以下のような解説が付されていた。

Deep web

ワールド・ワイド・ウェブ上には数十億のウェブページがあると言われていますが、実はこれはウェブ全体のごく一部に過ぎません。有用で貴重な情報資源の多くは表面的なウェブページではなく、データベース等の「深層」に格納されており、アクセスの都度、動的に生成されています。深層ウェブ(Deep Web)の大きさは、表層ウェブ(Surface Web)の大きさの約550倍、約9万1,850テラバイトにも及ぶ、との試算もあります(注2)。国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービスでは、これらの膨大な情報資源をより有効に活用できるよう、「Deep Web」の入り口まで、皆様をご案内します。

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秋へ向け動き始めるTOBYO

しばらくブログを休んでいた。この間、TOBYOの進路修正などをいくつか検討し、秋以降の展開を考えていた。「iza!」読者のみなさんには、TOBYOといってもまだ馴染みはないだろうが、TOBYOはウェブ上に闘病者が自発的に構築してきた「闘病ネットワーク圏」を可視化し、そこに蓄積されてきた闘病体験の共有をめざすプロジェクトである。「闘病ネットワーク圏の可視化」とは、「どこに、どんな闘病サイトがあるか」を明らかにすることであり、次に闘病ネットワーク圏の横断的検索機能を提供することによって、闘病者が実際に体験した事実と”Wisdom of Patients”の共有が可能となる。

「どこに、どんな闘病サイトがあるか」を明らかにするために、春先から闘病サイト情報収集活動に取り組んできたが、これはようやく当初目標の1万サイトに近づきつつある。日本語の闘病ネットワーク圏がどの程度の大きさであるかは不明だが、現時点の感触では、およそ2万-3万サイトの規模ではないかと推定される。ただ、今年に入って新規開設の闘病サイト数は、以前にもましてかなり大幅に増えているような気がする。もちろん閉鎖されるサイトもあるのだが、全体として日本語闘病ネットワーク圏が膨張を続けていることはまちがいない。 続きを読む

パブリックという概念をめぐって

先日、英国の医療家系図による新サービス「MyFamilyHealth」を紹介したが、考えてみればこれは、数年前に米国HHS(保健社会福祉省)公衆衛生局と国立ヒトゲノム研究所が共同開発した「My Family Health Portrait」を焼きなおしたものと言えよう。家系図という分かりやすい概念を使って、遺伝子情報の公衆保健サービスへの利用を促進しようというこの米国政府プロジェクトは、今日から見てもたしかに先見の明があった。

ところで、このような遺伝子情報をベースにした医療家系図サービスを日本で実施するとしたらどうだろうか?。おそらく遺伝情報や家系情報などプライバシーにかかわる情報を「公衆衛生」という名のもとに利用することに対して、相当の反発が立ち上がるのではないだろうか。またこのことは、日本における最近の「GoogleMapsストリートビュー論争」などとも無関係ではないような気がする。 続きを読む

様々なる闘病記

このブログでは、これまで闘病サイトの現状やその傾向について何回か報告してきている。最近、あちこちウォッチングして感じるのは、まともな闘病サイトへ行きつくこと自体がだんだん困難になって来ているということである。ネット上にノイズが大量に発生しており、闘病サイトが見つけにくくなっているのだ。

その闘病サイトを取り巻くノイズだが、まず偽装闘病サイトあるいは「名ばかり闘病記」が増加している。「○○闘病記」などタイトルを見ただけでは、そのサイトが偽装サイトかどうかは判別しにくく、サイトへ行ってみて初めて偽装サイトであることが分かるケースが多い。こんな徒労を下手をすると何回も繰り返すことになり、貴重な時間を無駄に費消してしまう。これら偽装サイトは、闘病体験が一切記録されていない「名ばかりサイト」であったり、一見もっともらしい体験記に見えながらもあきらかに作話であったり、特定の健康食品や健康法へ誘導するものであったりする。特に「もっともらしい闘病体験」の体裁を偽装しているケースでは、ますますその偽装は巧妙を極め、かなり読み込んでみなければ判断がつかないものも多い。 続きを読む