新たにPerspectiveが加わり、dimensions2.0へバージョンアップ

dimesions 2.0

ここ二回連続で「クチコミ病院検索」の問題を扱ったが、こっちのブログで書き出したものに補筆し、改めてYahoo!Newsのほうへニュース投稿した。結局、「ネガティブ・コメントを削除するクチコミ検索」という現象は、医療パターナリズムに端を発するものである。そこを批判しなければ、似たようなことは形を変えて何度も繰り返されるだろう。しかし、このエントリは当方の予想を超える関心を惹起したようだ。

さて、患者の闘病体験をトラッキングし自由自在に検索する「TOBYO dimensions」だが、近々にバージョンアップする予定である。今年になってから、患者闘病ドキュメントをテキストマイニング出力するPDR、PAI、PDSなどサービスを開発してきたが、あれこれとっ散らかってしまったので、一度まとめなおす必要があると思っていた。いろいろ検討した結果、やはりdimensionsに統合するのが一番すっきりするということになった。新たにPerspectiveというサービスをdimensionsに追加するが、これはPDR、PAI、PDSなどをまとめたものである。テキストマイニングによるデータ出力をメインとして、さまざまな患者視点アウトカム・レポートを提供しようと考えている。

Perspectiveとは「考え方、見方」や「遠近法」という意味を持つ言葉だが、私たちが目指しているのは、まず「医療に対する患者の考え方、見方を提供する」ことであり、同時に「患者視点で医療を遠近法で透視し、患者の目に見えたままの医療を描出する」ことである。また近年、米国FDAなどが中心となって提唱している、新しい患者中心医療評価尺度である「患者報告アウトカム」(PRO)の考え方も念頭に置いている。 続きを読む

クチコミを隠蔽するパターナリズム(「ガラパゴス医療」批判序説)

英国NHSトラストのクチコミ評価サイト

パターナリズム(英: paternalism)とは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本人の意志に反して行動に介入・干渉することをいう。日本語では家父長主義、父権主義、温情主義などと訳される。語源はラテン語の pater(パテル、父)で、pattern(パターン)ではない。
社会生活のさまざまな局面において、こうした事例は観察されるが、とくに国家と個人の関係に即していうならば、パターナリズムとは、個人の利益を保護するためであるとして、国家が個人の生活に干渉し、あるいは、その自由・権利に制限を加えることを正当化する原理である。
( Wikipedia 「パターナリズム」)

先日のエントリで、クチコミ医療情報サービスについて基本的な考察をした。特に消費者・患者の病院や医師に対するネガティブ情報を排除・隠蔽するような「クチコミ・サービス」の問題を取り上げたのだが、それでは、これらの背景には一体何があるのだろう。一方でネガティブ情報を排除・隠蔽しながら、他方、自らを「クチコミ・メディア」であると主張すること自体、明らかに矛盾しているではないか。そのように矛盾しながらも、強弁せざるをえないのはなぜなのか。単純に考えられるのは、そこにビジネス上の必要というものがあるからだろう。

まず、ネガティブ情報を書かれた病院や医師からの苦情への対応、あるいは削除要求への処理などに要する人的時間的コストがばかにならないだろう。次に、たとえば製薬業界から広告やペイドパブを誘致するとして、「病院や医師から苦情の出るサイト」という風評が立てば、業界の保守的風土から見て、まず誘致は困難になる。

以上のようなビジネス上の問題が想定されるのだが、それだけではなく、そこにはあからさまに表面化されることのない、医療が抱える特殊な発想への迎合が見え隠れするように思う。それは端的に言ってパターナリズム(家父長主義)である。医療におけるパターナリズムについてWikipediaを引用しておこう。 続きを読む

医療クチコミ情報に対する中立性

とりあえず業務連絡から。闘病サイトだけを検索するバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」だが、長らくデータ更新なしでテスト版を公開してきた。ここのところTOBYO自体の機能更新に手が回らなかったためであるが、いつまでもこのまま放置していてはいけないと考え、このたびデータを更新し、また検索エンジン自体も最新のものを実装することにした。来週ぐらいに、新しいTOBYO事典を公開する予定。

5月末現在、TOBYOが収録しているデータ量は、すでに600万ページを超える規模に達している。とりあえず、このうちの300万ページを「TOBYO事典」の検索対象とする。これは従来公開していた「テスト版」の約2倍のデータ量となる。検索エンジンのほうは、プロジェクト初期に採用したエンジンが、日々増加するデータ量に対応できなくなってきていたので、今回、思い切って最新の検索エンジンに切り替えた。これでTOBYOプロジェクトとしては、三代目の検索エンジンとなる。

当初から「世界初の闘病専門検索エンジン」と銘打ってきたのだが、現在に至るも「ワン&オンリー」の存在である。貴重な闘病体験ドキュメントだけを自由自在に検索できる、世界でただ一つの検索エンジンである。病院名、薬品名、治療法などをキイワードにして、存分に闘病ユニバースを探索していただきたい。業務でご利用の方には、dimensionsの「X-Search」をお使いいただきたい。TOBYO収録データをすべて検索できる。

検索エンジンは、私たちTOBYOプロジェクトの「こだわり」であり「要」と言えるだろう。私たちのミッションは「ネット上のすべての闘病体験を可視化し、検索可能にする」ことである。このミッションを実現するものは検索エンジンである。患者が記録した事実、患者がつぶやいた生の言葉、患者が露わにした感情。私たちは可能な限り、それらすべてを可視化し、検索エンジンを使って、誰でもその情報を利用できるようにしたいと考えている。 続きを読む