とりあえず業務連絡から。闘病サイトだけを検索するバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」だが、長らくデータ更新なしでテスト版を公開してきた。ここのところTOBYO自体の機能更新に手が回らなかったためであるが、いつまでもこのまま放置していてはいけないと考え、このたびデータを更新し、また検索エンジン自体も最新のものを実装することにした。来週ぐらいに、新しいTOBYO事典を公開する予定。
5月末現在、TOBYOが収録しているデータ量は、すでに600万ページを超える規模に達している。とりあえず、このうちの300万ページを「TOBYO事典」の検索対象とする。これは従来公開していた「テスト版」の約2倍のデータ量となる。検索エンジンのほうは、プロジェクト初期に採用したエンジンが、日々増加するデータ量に対応できなくなってきていたので、今回、思い切って最新の検索エンジンに切り替えた。これでTOBYOプロジェクトとしては、三代目の検索エンジンとなる。
当初から「世界初の闘病専門検索エンジン」と銘打ってきたのだが、現在に至るも「ワン&オンリー」の存在である。貴重な闘病体験ドキュメントだけを自由自在に検索できる、世界でただ一つの検索エンジンである。病院名、薬品名、治療法などをキイワードにして、存分に闘病ユニバースを探索していただきたい。業務でご利用の方には、dimensionsの「X-Search」をお使いいただきたい。TOBYO収録データをすべて検索できる。
検索エンジンは、私たちTOBYOプロジェクトの「こだわり」であり「要」と言えるだろう。私たちのミッションは「ネット上のすべての闘病体験を可視化し、検索可能にする」ことである。このミッションを実現するものは検索エンジンである。患者が記録した事実、患者がつぶやいた生の言葉、患者が露わにした感情。私たちは可能な限り、それらすべてを可視化し、検索エンジンを使って、誰でもその情報を利用できるようにしたいと考えている。
患者が書きだした生の言葉には、ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもある。私たちはそれらに対して中立である。中立性を確保しなければ、患者のいわゆる「クチコミ情報」を扱う資格はないと考えている。中立であるということは、患者のネガティブな言葉であれ、またポジティブな言葉であれ、一方に加担しないということだ。同様に、一方を排除することもない。ポジティブな言葉に対しても、ネガティブな言葉に対しても、等しく傾聴し、等しくリスペクトをはらうことが中立性を担保することだと思う。
だが残念ながら、ウェブ医療サービスの現状を見ると、患者の闘病ドキュメントから医療機関名や医師名を削除するようなサイトもあれば、患者の病院に対するネガティブ・コメントを削除する「クチコミ」病院検索サービスもある。このような患者ドキュメントの改竄や、一方を排除するようなやり方は、患者の生の声を愚弄する思い上がった所作だと言わなければならない。
そのような現状にあって、ますます検索エンジンが重要だと私たちは考えている。検索エンジンは、ポジティブであれネガティブであれ、患者が発した生の声をありのままに可視化するからだ。そして、それらをどのように受け止め、解釈し、判断するかは、ユーザーのみに任されるべきであり、あらかじめ業者が恣意的に情報を検閲したり、選別加工したり、隠蔽したりしてはならないのである。ありのままをユーザーに提供し、そのクチコミに対する判断はユーザーにまかせるべきであり、ユーザーを子供扱いし愚弄してはならないのだ。
「患者の口コミ」とか「患者の生の声」などと語りながら、実際には患者のネガティブコメントを削除隠蔽するなど言語道断である。「医療村」を特別視することからくる隠蔽体質が、医療の視界不良を招いている。今あるものを、あるがままに見せること。これが貫徹できなければ「クチコミ」などという看板は降ろして貰いたい。ポジティブであれネガティブであれ、一方に加担することなく、両方ありのままをユーザーに提示すること。患者の声にリスペクトをはらい、ユーザーの判断にまかせること。クチコミ情報を取り扱う者は、クチコミ情報に対して中立の立場を貫くべきであり、勝手な自分たちの判断をユーザーに押し付けたりしてはならない。これらは「クチコミ」情報を取り扱う者の基本原則であるはずだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.