改革ドライビングフォースとしての医療消費者

RedefiningHealthcare

昨日(6月22日)、朝日新聞に「医療再生へ—危機感共有 あとは実行」という記事が掲載された。日曜日の朝食を食べながら、一通り記事を眺めたのだが、全体としては何か散漫な印象しか残らなかった。医療関係の識者二名と朝日側の論説からなる三つのパートが、何もほとんど噛み合うこともなく並置されており、結局のところ、どんな意図でこの記事が作られたのか首をひねらざるを得なかった。

その「散漫な印象」の原因は、「医療再生」という共通テーマがありながら、結局それを掘り下げて議論するための共通テーブルが設定されておらず、それは「編集」の側の問題が大きいと言えるだろう。つまりここに登場している三者が、同一テーブルではなく、それぞれ自分専用のテーブルに陣取って顔を見合わせることもなく、てんでに物を言っているような、そんな空々しさを感じたのである。 続きを読む

インターネットのある時代

「闘病体験の共有」という自分たちのテーマを設定し、そしてそれをTOBYOというツールに具現化する過程で、様々にご意見やご批判をいただいてきている。そして「やはり」と言うべきか、「無法地帯としてのインターネット」という「お決まり」のネット観に基づく懸念の表明に何回か遭遇した。それらはたいてい「匿名、スパム、炎上」など、いわばネット批判のクリシェ(紋切型)とも言うべきワードに集約されるのが常である。このブログの初期に、出版で供される闘病記を持ち上げながら、一方ではネット闘病記の価値を貶めるような発言をしている評論家柳田邦夫氏を批判したことがあったが、これらネットに対する偏見はいまだに根強く社会に存在している。ネット闘病記に対し、いまだに「匿名性」を問題にしている医療界の研究者もいるようだ。 続きを読む

TOBYO収録闘病サイト数、5000件を越える

トップページの表示は以前のままだが、昨日(6月18日)の時点で、TOBYOの収録闘病サイト数は5000件を越えた。また、「TOBYO病名データベース」に採取された病名数は現在434件で、そのうちサイト収録済みの病名は392件。現在、TOBYOでは「がん、良性腫瘍」分野の闘病サイトだけを対象とするバーティカル検索をテスト運用しているが、同時に、これを全病名へ拡大する準備を進めている。

日本の闘病ネットワーク圏にはたしてどれくらいの数、闘病サイトが存在しているかはまったく定かではないが、とりあえず1万サイト程度を可視化できた時に、その全体像の輪郭といったものが現われてくるのではないかと思っている。だが、今の時点でも確実に言えることは、この闘病ネットワーク圏が日々膨張しつつあるということだ。これら膨張し続ける「闘病体験情報のミクロコスモス」から、ユーザーが必要な情報を迅速に取り出すことができるように、TOBYOは努力を続けていきたい。 続きを読む

患者SNSの「trusera」が正式オープン

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今年初めのエントリでも取り上げた米国シアトル発の患者SNS「trusera」だが、先週から「ベータ版」表示がとれ、正式公開版がリリースされた。この「trusera」は元Amazon在籍者が中心になって事業化されているので、「Amazon譲りの・・・・」とでも言うべきか、とにかく優れたサーチテクノロジーがコアとなってそのサービスを支えている。

まずこの正式公開版を見ての感想は、「以前のバージョンから、ずいぶん思い切った整理をしてきたなあ」ということ。サイト内は二層に分けられ、まず「ストーリー、アンサー、ピープル」の各一覧ページが位置するトップレイヤー、そして会員ユーザーごとの「プロファイル、ストーリー、アンサー、フレンド、ジャーナル」を表示するユーザーレイヤーで構成されている。このあたりは、非常にすっきりと整理されている。 続きを読む

明日の医療を予感させるHello Health

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昨年から話題になり、このブログでも以前(ここここ)紹介したニューヨークの開業医ジェイ・パーキンソン医師。同僚のショーン・コージン医師と共に、ニューヨークで新しい地域医療サービス「Hello Health」 を立ち上げた。

「Hello Health」はIM、ビデオチャット、メール、スケジュール共有など、既存のありふれたツールを駆使し、契約顧客宅に訪問して医療サービスを提供する「無店舗医療」である。顧客とは普通のツールでコミュニケーションしているが、診察時にはPCにインストールされた先進的EHRシステム「Hello Health」を使用している。紹介ビデオをご覧いただこう。

ジェイ・パーキンソン医師の例を見ていつも関心させられるのは、そのインターネット技術の活用方法よりも、むしろその卓越したマーケティング発想である。このような医療の新業態創造は、もちろんインターネットの積極活用が支えているのだが、それ以上に今日の医療に対する消費者ニーズの洞察が素晴らしい。その独特の医療マーケティング論を、先日開かれたHIMSSサミットでジェイ・パーキンソン医師はプレゼンテーションしているが、そのスライド「Where is the Healthcare Revolution」は、おそらく今日の医療マーケティング論のベストではないかと思う。いずれまたご紹介したい。

三宅 啓