ショッピングセンター型患者SNS: Inspire

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様々な試行錯誤が続けられている米国患者SNS市場だが、その中でもInspireはきわめてユニークなスタイルの患者SNSだ。Inspireは、患者支援団体をはじめさまざまな健康・保健団体に疾患SNSスペースを提供している。つまり、Inspireがいわば「大家」としてサイト全体を開発運営し、そこへ「テナント」として健康・保健団体が集まるという構造になっている。ショッピングセンターのデベロッパーとテナントの関係を想起すればよいだろう。

これはある意味で非常に賢いやり方だ。なぜなら、患者会など「テナント」側の会員がそのままInspireの新規会員になってくれることが見込まれ、新たにゼロから会員募集をする必要がないからだ。いわば「テナントが会員を連れてきてくれる」という仕組みになっているのだ。また、それぞれの団体は当該疾患についての専門的な知識・情報・経験を豊富に蓄積しているから、これら資産をそのまま疾患別コミュニティ・サービスに活かすことができる。おまけに有力テナント(著名な健康・保健団体)の知名度や信頼感は、サイト全体の社会的ステータスを上げることに寄与するだろう。また、それぞれのコミュニティの管理運用のほとんどは「テナント」に任せることになるから、デベロッパー側は管理運用負担を大幅に軽減できるわけだ。まさに一石四鳥だ。 続きを読む

FoxBusinessで「keas」を語るアダム・ボズワース氏: keas

今月からベータ公開を開始した「keas」だが、やはり「あのアダム・ボズワースのプロジェクト」ということもあってか、米国では各方面の強い関心を集めている。その注目の人アダム・ボズワース氏が、FoxBusinessに登場し自らkeasを語っているので紹介しておきたい。また、「Adam Bosworth’s Weblog」でも、氏自身のkeasの説明「Learning from customers」 がポストされているのでご参照あれ。

「keas」自体はユーザー個人に特化した具体的な問題解決の提供という点で、従来にないユニークな医療サービスになっていると思う。おそらくこれに23andMeのような遺伝子解析サービスが付加されれば、最強のテーラーメイド医療サービスへ進化していくのではないか。

そしてまた、まったく新しいウェブ医療サービス領域を切り開きつつあるPatientsLikeMeなどとも、Keasはいずれどこかでクロスするような気がする。すでにこの春から、PatientsLikeMeと23andMeが、共同してパーキンソン病克服プロジェクトの取り組みを進めている。どうやら消費者向けウェブ医療サービスの今後の行方は、この三社を中心として展開していくような予感がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

ネット医療情報利用実態と今後の展望

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以前、ブログなどで闘病体験を公開している日本の闘病者はおよそ三万人であり、全患者に占める割合は非常に小さいと書いた。このことについて、その後あれこれ考えていたのだが、去る6月「Pew Internet & American Life Project」が発表した米国におけるインターネット医療情報利用実態調査報告書を見ると、やはり同じような傾向が米国にもあることがわかった。Health2.0ムーブメントの隆盛がある一方では、このような厳しい現実も存在することを直視したい。

まず同報告書は「米国成人のうち61%が医療情報を求めてインターネットにアクセスしており、これは2000年(25%)から著しく増大」としている。しかし「インターネットの世界に一層深く関与しつつも、引き続き米国成人は医療情報のトラディショナルソース(医師、家族、書籍等)も参照している」とも指摘している。そして注目すべきは同報告書が「インターネットによる医療情報利用者のうちの約半数は、自分のためにではなく、誰か他人の代理で情報を検索している」と指摘しているところだ。これでいくと、実際に自分のためにネット上の医療情報を利用しているのは成人の約30%になる。 続きを読む

次世代ウェブ医療サービス登場!: keas

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6日付NewYorkTimesは、アダム・ボズワース氏率いる「keas」のローンチを紹介している。アダム・ボズワース氏がGoogleHealthプロジェクトから離脱すると同時にGoogleを去り、すでに2年が経過した。これまでのボズワース氏の業績から見て、かならず画期的な医療サービスを開発してくれるとの期待は大きかったが、登場した「keas」はこれら期待に応え、まさに次世代ウェブ医療サービスのあり方を具現化するものである。

これまでのウェブ医療サービスは、さまざまに雑多なスタイルはあれど、おおむね「医療情報サービス」というくくり方で一括できるものであった。つまり「医療情報」をどのようにユーザーに提供するかをめぐり、提供方法のバリエーションと便益性を競うものであった。そしてここにおける「医療情報」とは、あくまでも「一般的な医療情報」のことであった。疾患情報、薬剤情報、治療情報、医療機関情報など多岐に渡るとはいえ、これらはあくまで一般化され抽象化された情報である。ここで欠落しているのは個別性であり具体性であり、さらに言えば特定個人についての情報である。だが闘病者が求めているのは、たとえば「乳がん」という一般医療情報ではなく、本当は「自分の乳がん」に関する個別情報なのだ。 続きを読む

Microsoftの個人健康管理ツール”My Health Info”登場

 MyHealthInfo

今月1日から、Microsoft社は「MSN Health & Fitness」  に新しい個人健康管理サービス「My Health Info」ベータ版を公開した。このサービスは個人医療情報管理のためのツール群をウィジェットとして提供するもので、ユーザーは自分のページに好きなウィジェットを自由に配置して使用できる。現在、次のようなウィジェットが提供されている。

  • 健康データ管理:
    BMIトラッカー、血圧トラッカー、血糖値トラッカー、検査ラボデータ、心拍数トラッカー、歩数トラッカー
  • 個人医療情報管理:
    病歴、薬歴、予防接種、アレルギー
  • 健康ニュース:
    医学論文、高血圧ニュース、糖尿病ニュース
  • その他:
    高血圧FAQ、糖尿病レシピ、HealthVaultアプリ

この個人健康管理サービス「My Health Info」の特徴は、ツールをウィジェット化しユーザーの必要に応じてカスタマイズできる点と、MicrosoftのPHRプラットフォームであるHealth Vaultと連携している点である。これでHealth Vaultにある自分の医療情報を、ユーザーは自由に活用できるようになるわけだ。 続きを読む