闘病ドキュメントを医療評価に活用する

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昨日のエントリをポストした後、何かモヤモヤした気分でDenise Silber氏の「レーティング対ナラティブ」という図式のことを考えていた。そして結局彼が言いたかったことは、「ナラティブという形での医療評価もある」ということに尽きると思い至った。そしてそのことは、この間、当方の問題意識が「闘病記」というパッケージから次第に離れてきたこととも関連すると気づいた。

近年、様々な形で闘病ドキュメントに対する関心が高まってきているが、それらの多くは「闘病記」というパッケージとして闘病 ドキュメントを見たり、「患者の語り」という部分に特別の拘りを示したりするような見方が多かった。本来、どのように見ようと自由なのだが、これらの見方は闘病ドキュメントの可能性を限定し捨象するもののように当方の目には映ったのである。

ネット上に出現した闘病UGCは、紙や映像メディ アにパッケージ化されるような従来の「闘病記」ではない。そこに「作品性」や「物語性」を見るのではなく、闘病者をはじめ医療プロバイダーやサプライヤー など医療関連諸集団に対し、なんらかの実践的な問題解決を生み出す力があると見るべきだ。 続きを読む

TOBYO2周年: ビジネスモデルと商品化の考察

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(「フリー」P263、クリス・アンダーソン、NHK出版、より)

TOBYOは今週の木曜日(2月18日)、アルファ版公開から2周年を迎える。2年前、収録疾患数約120件、収録闘病サイト数約2千件、検索インデックス30万ページでスタートしたが、現在は疾患数870件、闘病サイト数約2万件、検索インデックス300万ページになっている。

ところでTOBYOは、トップページタイトルの「β版」表示をまだ外していない。これは「永遠のベータ(Perpetual beta)」という2.0の考え方を踏襲する意味もあるが、一方では「まだ準備段階」であることをそのまま示してきたわけだ。そして2年が経った今、ようやく「準備」を終えることができたと考えている。ずいぶん時間はかかったが、これから事業化や商品化を本格的に始動する段階に来た。 続きを読む

クラウドソーシングの天気予報: 5万人の気象人力センサー

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休日の朝。いつもよりゆっくりして遅めの朝食をとりながら、なんとなくテレビを眺めていると、ある番組で「ウェザーニュース」を取り上げていることに気付いた。さしたる特別の関心もなく見ているうちに、いつのまにか「クラウドソーシング」という言葉をつぶやきながら、つい引き込まれてしまっていた。

ウェザーニュースでは、毎日、全国5万人のリポーターが自分の居住地の気象データをネットで報告している。データ送信は携帯を使い、天候、気温、気圧、風向、風速など基本データやコメントに加え、空模様や強風になびく木々など風景写真データも含む。それら全国5万ヶ所から集まってくるデータに基づいて、ウェザーニュースでは日本全国の天候状況をマッピングし予測を組み立てているわけだ。たとえば雨がいつどこからどんなふうに降り始めているかなど、リアルタイムできめ細かく全国の天候変化を把握できるようになっている。何よりも、実際にその土地の人間が体験した事実が、最新の気象データとしてあげられてくるのが強みである。気象庁が気象衛星を中心に構築している全国観測網「アメダス」でさえ、実際の全国観測地点は1500ヶ所程度とのことで、このウェザーニュースの人力センサーの観測地点数とデータ量は完全にアメダスを凌駕しているらしい。 続きを読む

DTC & DFC: 二つの潮流に基づくマネタイズイメージ

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先週ポストした「TOBYOのネクストステージ」では、闘病ユニバースに存在する闘病サイトの再可視化に触れたが、これはTOBYOが保有するデータを使いやすくするために、単に再編することをめざすものであり、「ネクストステージ」のための準備作業ということになる。では事業化を含めた本来の「ネクストステージ」はどうなるのか。基本的にそれは、闘病ユニバースと医療関連業界の間に、「DTC&DFC」の二つの潮流を創出することになると考えている。

この二つの太い潮流には、データ、アテンションそしてマネーが流れることになる。これまで闘病ユニバースと医療関連業界との間にはほとんど関連はなく、お互いが別個に独立して存在していたといえるだろう。TOBYOプロジェクトはこれら二つの間を架橋し、相互を還流する二つの潮流を創出したいと考えているのだ。 続きを読む

TOBYOのネクストステージ

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TOBYOでは、これまで「ネット上の闘病サイト群」から成るルースで自然発生的なコミュニティを「闘病ユニバース」と呼び、その可視化を進めてきた。これは端的に言って、闘病サイトを一つ一つ調査し「どこにどんな病気の体験があるか」を明らかにするものであり、いわば闘病ユニバースのマップを作るような作業であった。そして現在、2万件近い闘病サイトがこのマップ上にプロットされたわけだ。

次に、このマップを参照してTOBYOのクローラが闘病サイトを訪問し、検索キャッシュを取得し保存蓄積していくことになる。現在、約300万ページのデータが蓄積され、バーティカル検索エンジンによって検索可能となっている。TOBYOプロジェクトは、このように二つのステップを経て現在に至っているわけだ。ではこの「次」は一体どうなるのか?

昨年年末から、闘病体験データを社会的に還流させ、さまざまな問題解決に寄与していくイメージをこのブログで書き出してきたが、それは最終的にDFC(Direct from Consumer)というコンセプトにまとめあげられた。DFCを具体化するために、テキストマイニングなどブログリサーチの手法を検討しているわけだが、この前提として、TOBYOが把握している「Consumer」の可視化を、現状よりさらに推し進めなければならないのではないかと考え始めている。 続きを読む