PHR市場でMicrosoftに後れを取るGoogle

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“CLEAR! Shocking Google Health Back to Life”,Scott Shreeve,MD)

米国PHR市場における主要プレイヤーは、一昨年の秋に登場したマイクロソフト社のHealth Vault、昨年春から起動したGoogle Health、そしてインテルやウォルマートなどのDOSSIAの三者だが、実質的にはHealth VaultとGoogle Healthの戦いになると見られていた。ところが最近、Health Vaultの競争優位が次第に明らかになってきている。同時に、特にGoogle Health開発のスローペースぶりに対して、Health2.0コミュニティから苛立ちにも似た批判が巻き起こってきている。批判は「Googleは本気で医療ITに取り組む決意を持っているのか?」から「Googleは出直せ!」に至るまで、主としてGoogle経営陣に向けられてきている。

Health2.0コミュニティきっての論客スコット・シュリーブ氏は、上記のような両者の比較対照表をブログで公開している。これを見ても、プロジェクトに従事する従業員数で実に100倍、提携組織数で10倍など、両者の間に徐々に圧倒的な差がつきつつあることがわかる。

このままHealth Vaultの独走を許せば、米国PHR市場は健全なコンペティター不在のままマイクロソフト社に独占される可能性があり、そのことは結果としてPHRの進化を遅らせ、市場の成長さえ阻害しかねない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Google Health:ストレージ機能強化とアドバンス・ディレクティブス

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先週、GoogleはGoogle Healthのストレージ機能強化を発表した。これによってユーザーは、PDF、イメージ、オーディオ、ビデオなど、各形式の自分の医療記録ファイルを自由にアップロードできるようになる。特に紙の医療記録がまだ多いので、これらをスキャンしPDFファイルでGoogle Healthにしまうことを、Googleではユーザーに勧めている。現状は紙記録から電子記録への移行期に当たり、このようなサービスが必要だと判断したようだ。ちなみに以前、紙の医療記録をファックスで集約するようなPHRサービスがあったが、その後あれはどうなったのだろうか?。

今回の機能強化によってユーザーに割り当てられるストレージ容量は100メガ。各ファイルサイズは4メガ以下という制限が設けられている。大きな画像診断ファイルなどは大丈夫なのか?。ところでGoogleはこのストレージ機能強化と同時に、「アドバンス・ディレクティブス」(advance directives)サービスの発表をしている。 続きを読む

闘病体験を「物語性」の封印から解放せよ

昨日エントリで、闘病ドキュメントに対する当方の見方の変化について書いたわけだが、結局のところ闘病ドキュメント自体に関与していかなければ、TOBYOが「体験事実とデータ価値」に向けてその利用方法を進化させていくことはないと思う。現在の闘病ドキュメントはネット上に分散して存在している。当然、分散した情報を分散したまま利用するのがネット的なありかたなのだが、そうはいっても検査データの記録方法などは統一しておかないと、多くの闘病者の体験事例を数値データで集約し統計分析することはできない。つまり本当の意味での「データベース」としての使い方ができないわけだ。

現状は、たくさんの闘病者がネットで情報を公開していながら、それらサイトに蓄積されたデータを集計したり相互比較したりすることもできない。せっかく有用なデータがあるのに、それらを効率的に利用する方法が開発されていないのである。物理学者の戸塚洋二さんなども、実はその点を指摘していたわけだが、これを解決するためにはPHRと合体したような闘病サイトサービスを開発し、そこでデータを記録しながら闘病ドキュメントを書いてもらうしかないと思う。このような闘病サイトサービスにはさまざまなアプローチ方法があるだろうが、PatientsLikeMeなどはSNSというアプローチを選択しているわけである。 続きを読む

MS Surface: PHRとEHRの統合利用イメージ

以前のエントリで、マイクロソフト社のPHRであるHealth Vaultと新しく開発されたディスプレイ「Surface」のビデオをご紹介した。当方などどちらかと言えば、Health Vaultよりもテーブル型ディスプレイであるSurfaceの方が印象に残ったのだが、新しい紹介ビデオがアップされたのでご紹介しておきたい。 続きを読む

「よりパーソナルな医療」へ向かう消費者ニーズ

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雑誌「the Journal of General Internal Medicine」6月号に、PHRに関する消費者パーセプションを探る調査結果が発表された。この調査は、ハーバード大学、べス・イスラエル病院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、MITなどの専門家によって、全米4ヵ所8グループのフォーカスグループインタビューとして実施された。

調査結果で明らかにされた消費者ニーズを要約すると、次のフレーズになるという。

「私は、この私のことを知っているコンピュータが欲しい」

また、医学的文献をはじめとする医療情報、あるいは今日の医療情報システムが提供している製品やサービスにおいて、最も広範囲に欠落しているのは「普通の人々(regular people)への洞察」であるとしている。さらに興味深い結果として、次の五点が指摘されている。 続きを読む