クラウドソーシングの天気予報: 5万人の気象人力センサー

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休日の朝。いつもよりゆっくりして遅めの朝食をとりながら、なんとなくテレビを眺めていると、ある番組で「ウェザーニュース」を取り上げていることに気付いた。さしたる特別の関心もなく見ているうちに、いつのまにか「クラウドソーシング」という言葉をつぶやきながら、つい引き込まれてしまっていた。

ウェザーニュースでは、毎日、全国5万人のリポーターが自分の居住地の気象データをネットで報告している。データ送信は携帯を使い、天候、気温、気圧、風向、風速など基本データやコメントに加え、空模様や強風になびく木々など風景写真データも含む。それら全国5万ヶ所から集まってくるデータに基づいて、ウェザーニュースでは日本全国の天候状況をマッピングし予測を組み立てているわけだ。たとえば雨がいつどこからどんなふうに降り始めているかなど、リアルタイムできめ細かく全国の天候変化を把握できるようになっている。何よりも、実際にその土地の人間が体験した事実が、最新の気象データとしてあげられてくるのが強みである。気象庁が気象衛星を中心に構築している全国観測網「アメダス」でさえ、実際の全国観測地点は1500ヶ所程度とのことで、このウェザーニュースの人力センサーの観測地点数とデータ量は完全にアメダスを凌駕しているらしい。 続きを読む

「Health2.0 Japan」について

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先週、ある夜の席で盛り上がり「ぜひ日本でも、Health2.0 Japanコンファランスをやろうじゃないか!」という話になった。この春にはパリでHealth2.0コンファランスが開催されることもあり、なんとか日本でもやりたい。米国のHealth2.0コミュニティの人たちも呼びたい。一杯入ったせいもあるが、そんな話で楽しく盛り上がった。

だが、翌朝あらためて考えてみると、意外に情況は難しいことがわかった。というのはHealth2.0と銘打ったイベントについて、米国Health2.0コンファランス主催者であるマシュー・ホルトとインドゥー・スバイヤが名称使用権を押さえているのである。そういえば、カナダではMedicine2.0というコンファランスが毎年開催されているが、なぜHealth2.0と言わないのかと訝しく思っていたが、実はこの「権利問題」があったせいなのだ。他に昨年ドイツでもHealth2.0をテーマにしたコンファランスが開かれたが、これも「Health2.0」と表記することができず、わかりにくい名称のイベントになっていた。 続きを読む

DTC & DFC: 二つの潮流に基づくマネタイズイメージ

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先週ポストした「TOBYOのネクストステージ」では、闘病ユニバースに存在する闘病サイトの再可視化に触れたが、これはTOBYOが保有するデータを使いやすくするために、単に再編することをめざすものであり、「ネクストステージ」のための準備作業ということになる。では事業化を含めた本来の「ネクストステージ」はどうなるのか。基本的にそれは、闘病ユニバースと医療関連業界の間に、「DTC&DFC」の二つの潮流を創出することになると考えている。

この二つの太い潮流には、データ、アテンションそしてマネーが流れることになる。これまで闘病ユニバースと医療関連業界との間にはほとんど関連はなく、お互いが別個に独立して存在していたといえるだろう。TOBYOプロジェクトはこれら二つの間を架橋し、相互を還流する二つの潮流を創出したいと考えているのだ。 続きを読む

医療分野のTwitterメッセージを可視化する: The Health Tweeder

HealthTweeder

HealthTweeder は、医療関連のTwitterメッセージを可視化するツール。Twitterメッセージを病名や症状ごとにペトリ皿にまとめている。メッセージ数はペトリ皿の大きさによって表示されるから、今話題になっている医療関連テーマが一目でわかる。おもしろい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

変化し始めたPHR像について

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先月、RevolutionHealthは2月いっぱいでPHRサービスを停止すると発表した。このことは米国の医療ITコミュニティで少なからぬ波紋を呼んでおり、医療情報システムの中でもっとも注目されてきたPHRの将来を不安視する議論も出てきている。

だがRevolutionHealthのPHRは、ユーザーが自分の医療情報を手作業で入力するような「DIY型PHR」であり、結局、このようなモデルのPHRがワークしないことが実証されただけであるとの見方が多い。もともと、煩雑さがデメリットであることはわかっていたというわけだ。事実、RevolutionHealthでPHRを利用していたユーザー数は、わずか数百人に過ぎなかったと発表されている。

現在、個人医療情報を蓄積しているのはたとえば医療機関のEHRだが、GoogleHealthやHealthVaultなど新しいモデルのPHRはこれらからデータを入手し、ユーザーが自分で入力することはない。しかしGoogleHealthやHealthVaultなどのPHRが、今後順調に発展していくかどうかについても、最近これを疑問視する見方も出てきている。各種世論調査によれば、米国においてPHRは消費者にほとんど認知されておらず、またその必要性についても肯定的な意見は少ない。これらから、いわゆる「Direct-to-Consumer」型PHR市場の成立は容易ではなく、相当時間がかかるのではないかと見られはじめている。

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