いよいよ7月4日から、dimensionsサービス開始

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紫陽花もそろそろ盛りを過ぎた。もう来週から7月だ。今年も半分が終わろうとしている。年明けから、初の闘病体験リスニング・ツール「dimensions」開発の最終段階の仕上げにとりかかってきたが、いくつか技術的な難問に直面しながらもなんとかこれらを乗り越え、やっとようやく来月からのサービスインが見えてきた。

この半年間に、リサーチ・イノベーションやソーシャル・リスニングなどの考察を通じ、dimensionsという、この全く新しいツールの今日的意義や果たすべき役割などについて、理論的基礎固めができたと思う。またTOBYO本体も可視化領域は約2万9千サイトに達し、当初の目標であった3万サイト可視化まであと少しのところまで来た。言うまでもなく、TOBYOの可視化領域の広さが、dimensionsのツール・パワーの源泉なのである。

今日は日曜日だが、最終段階に来たdimensions開発ミーティングを実施。7月4日(月)からのサービスイン開始を確認した。これにともない、4月からさまざまな方々にモニターしてもらっていたdimensionsデモバーションは、7月1日をもってテスト終了となる。

今後dimennsionsは、主として医療関連分野の企業ニーズに応えながら、さらに新規サービス領域の共同開発、応用分野の研究プロジェクトなど多方面の多様なニーズに対応し、できるだけオープンにコラボレーションする機会を作っていきたいと考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

講演会と新たな気づき

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昨日「医療の未来を考える会」のお招きにあずかり、「闘病体験の共有と傾聴」というテーマでおはなしをした。日曜午後という一週間で一番のんびりした時間帯にもかかわらず、たくさんの方々にお集まりいただいた。感謝。

会のメインテーマに「Health2.0で医療が変わる」とあったので、冒頭、駆け足でHealth2.0の概要を説明した。できるだけ手短に要約しようと今回あらためて考察してみたが、結局、Health2.0の原点は「伽藍とバザール」(1997)と「Cluetrain Manifesto」(1999)に行き着いてしまうと確認した次第。

エリック・レイモンドのオープンソースをめぐる古典的名作である「伽藍とバザール」を、スコット・シュリーブは第一回Health2.0カンファランス(2007)掉尾を飾るスピーチで引用している。伽藍的な知と技術の体系としての医療に対し、スコット・シュリーブは来るべきバザール型医療をビジョンとして提起したわけだ。ここから”User Generated Healthcare”や”Participatory Medicine”などのスローガンを導き出すのは容易だが、この「伽藍とバザール」という対比ほど明確にHealth2.0のビジョンを語る言葉はないと思う。

昨日もお話したが、「知の秩序・枠組みの変換期」という時代認識なしに、単にソーシャルメディア周辺のトピックスでお茶をにごすようなHealth2.0論では、本当に「医療を変える」ことなどできるわけもない。では医療は伽藍からバザールへ実際に移行するのかといえば、そんなに簡単には行かないだろう。おそらく巨大な変革モメンタムを必要とするに違いない。だが、医療を取り巻く状況は確実に動き始めている。
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浸透してきたTOBYOプロジェクト

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新宿御苑では紫陽花が咲き始め、ホトトギスが鳴いている。6月。早いもので、もう今年も一年の半分が過ぎようとしている。だが、振り返って懐かしい過去などベンチャーにはない。ひたすら前へ、全速前進であれ匍匐前進であれ、とにかく前進しなければならない。

「闘病体験の共有と傾聴」を旗印とする私たちのTOBYOプロジェクトは、いよいよdimensionsの来月サービスインへ向け秒読み段階だ。しかし、この時期に来てプログラマがダウンしてしまい入院。早い回復を祈るのみだが、残りの工程は見えているので、予定通り来月サービスインするつもりだ。

最近いろいろな人から聞くのだが、どうやらTOBYOがビジネス界とくに製薬業界でかなり知られてきているらしく、TOBYOを仕事に利用している方も多いとのことである。うれしいことである。それもTOBYOがというよりも、TOBYOを介して、闘病ユニバースに公開された闘病体験ドキュメントに対する関心が高まっていることがうれしい。これらドキュメントは本来、闘病者のみならず、医療関係者にとっても非常に高い価値をもつデータでありながら、これまで効率よく利用する手段がなかったのである。私たちが着目したのはこの「手段」を何らかの形で提供することであった。そして、TOBYOは闘病者のために闘病体験を共有する手段であり、dimensionsはプロフェッショナルの方々のための闘病体験を傾聴する手段なのである。 続きを読む

講演「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」のお知らせ。

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このたび「医療の未来を考える会」様からのご依頼を受け、来る6月19日(日)に開催される「第4回 医療の未来を考える会」で講演をおこないます。全体のテーマは「医療情報と患者さん Health2.0で医療が変わる」とのこと。当方は「闘病体験の共有と傾聴 ~ソーシャル・リスニングの時代へ~」と題し、「闘病ユニバースの生成、TOBYOプロジェクトの現状、ソーシャル・リスニング、dimensions」などを中心にお話しする予定です。

特に今年に入ってから、私たちは「リサーチ・イノベーション、ソーシャル・リスニング」など新しいテーマをTOBYOプロジェクトやdimensionsに導入しようとしているのですが、現時点における進捗状況をお伝えできると思います。どうか奮ってご参加ください。

実施要領は下記の通りです。またお申込みは、申し込みフォームを利用できます。 続きを読む

ソーシャルメディアのデータ利用について思うこと

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もう旧聞に属するが、昨秋公開され話題となったエスエス製薬の「カゼミル」。直近24時間にツイートされたTwitterのデータから、「風邪」、「カゼ」、「かぜ」など風邪関連ワード、そして「のど」、「鼻水」、「さむけ」、「頭痛」、「せき」、「熱」など症状関連ワードを抽出し、ユーザーが公開している現在地データを参照した上で、都道府県単位で風邪の流行状況をアニメーションによって可視化している。

たしかにアイデアもアニメーションも面白いのだが、見せ物にしてしまっては、何かもったいない気もする。せっかくリアルタイム医療情報と位置情報を把握しているのだから、たとえば「全国かぜ予報」みたいな、生活者の健康管理に役立つようなサービスへ展開できるかも知れないからだ。それに全国診療所の風邪患者来院データなどと合わせると、もっと生活に役立つサービスに精緻化できるかもしれない。

このケースでわかることは、ツイートのリアルタイムデータから医療情報を抽出することが技術的に可能だとして、次にそれをどのように実際に有効活用するかという段のノウハウを私達はまだ持っていないということだ。たとえばこれを、従来のレガシー調査の延長で考えていくことはとても容易なのだが、この「かぜみる」のような斬新な発想に決して到達することはないような気がする。 続きを読む