医療を自分のテーマにして以来、さまざまな医療関係の方々からお話を聞いたり、医療関係の本を読んだりしてきたのだが、それらに何か根本的な違和感というものを常に抱き続けてきたと思う。その違和感が何に由来するかを考えてきたのだが、結局、「日本の医療を語る言説空間というものが、どういうわけか歪んでいる」というぼんやりした印象を持つに至ったのである。そのことをこのブログでさまざまに書いてきたわけだが、本書を読み、これまでのぼんやりした「違和感」の霧が晴れ上がったような気がした。日本医療は鎖国していたのだ。
この「鎖国」は、米国シリコンバレーで医療ベンチャーキャピタルを起業した元医師の目から、つまり「外部」の専門家から可視化されたのである。なるほど「鎖国」を内部から見通すことは難しい。そして「鎖国」という指摘によって、今までぼんやりと、しかもてんでばらばらに存在しているかのように見えた日本医療を取り巻く問題の諸相が、一挙にわかりやすく、はっきりと見渡せるようになった。良書である。 続きを読む