三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

Web3.0

Web 3.0 from Kate Ray on Vimeo.

次世代ウェブの行方について様々に語られているが、このビデオはティム・バーナーズ・リークレイ・シャーキー、デビッド・ワインバーガーなど名だたるビジョナリーの発言をコンパクトにまとめあげている。この手のビデオとしては秀逸の出来だ。

このビデオを見ながら思い出したのは、先日パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパ・コンファレンス冒頭に上映されたプレゼンスライドのことである。同じくウェブをテーマとして、同時期に作られた映像素材でありながら、なんと違うことか。Health2.0も、次世代Webのビジョンをもっと意識すべきかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

病院検索サービスの再検討: 医療機関バーティカル検索エンジンのすすめ

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昨日、実はある大学病院の脳神経外科で検査を受けていた。MRIに30分も閉じ込められ、「ドカン、ドカン、ギーッ!」という物凄い機械音に驚かされた。これまでMRIの体験記録などたくさん目にしてきたはずだが、いや、こうまですごい騒音とは・・・・・。閉所恐怖症の人にはとても耐えられないだろう。何事も実際に体験してみないことにはわからないものだ。

幸い、検査の結果は「異常なし」でホッとしたのだが、今回、医療機関サイトをあちこち眺め回したり調べたりして、いくつか気づくところがあった。そのうちの最たるものは、「必要な医療機関情報へダイレクトに辿り着けない」ということである。GoogleやYahooの検索エンジンではゴミやノイズが多すぎる。そこで医療機関検索サービスを利用することになるが、それらサービスの大半は、まず「部位、診療科目、地域」など大分類から選択を始めさせ、何段階か選択を進めた結果、やっと目指す情報にたどり着くような仕組みになっている。

これはユーザー側で予め検索対象情報が明確になっている場合、非常に迂遠な方法であり、ユーザーに時間と手間を強いるものである。つまり探索経路が硬直的であり、しかも最短ではないのだ。特に一刻を争うような場合には、使い物にならないだろう。 続きを読む

医療機関サイトの品質と医療ウェブの成熟度

ここ二三日、必要があっていくつかの病院サイトをあれこれ調べている。病院サイトのつくりだが、以前よりはだいぶ改善されたように見えるが、まだまだサイト内導線やUI、情報配置などユーザーに対する配慮は不足していると言わざるを得ない。特に初診案内のわかりにくさは致命的だ。病院で診察を受けようと初めて訪ねてきたユーザーに、もう少していねいな気配りがあってもよいのではないか。特に診療日時や受付場所など、きわめて基本的な情報が不備であるケースが多いのだ。それに対して、相変わらず院長挨拶とか病院理念などを麗々しく配置しているのを目にすると、医療機関のコミュニケーション・マインドはまだまだ低いと言わざるを得ない。

医療機関ウェブサイトの品質を上げることは、依然として大きな課題である。たとえば「ユーザーが選ぶわかりやすい病院サイト、ベスト100!」などコンテストを設けてみるのもよいかも知れない。TOBYOで病院サイト評価&投票を呼びかけてみようかとも思う。医療評価の一環として、もうすこしサイト評価が注目されても良いのではないか。 続きを読む

ロシア構成主義のまなざし

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(左:「これよりよいおしゃぶりはない。年をとるまで吸いたくなる。」 1923年、ゴムトラスト広告ポスター、ロトチェンコ、マヤコフスキー、右:「あらゆる知についての書籍」1924年、レンギス広告ポスター、ロトチェンコ、マヤコフスキー)

寒い4月が終わると、今度は初夏の5月が始まった。極端な天候の行方に戸惑ってしまう。TOBYOプロジェクトもしばらく小休止し、久しぶりに休暇をたっぷり楽しんだ。とは言え、別段どこへ出かけるわけでもなく、ただ近隣を散歩し、自宅で本を読み、音楽を聞く時間を過ごしただけである。妻と映画館や美術館にも足を運んだが、たまたま見た「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」(東京都庭園美術館)がよかった。

20世紀初頭のロシア・アヴァンギャルド芸術の展覧会は、日本でも過去何回か大きなものが開かれたが、結局、一度も足を運ぶことはなかった。それはかつて「政治の革命と芸術の革命」などと学生時代に語っていたテーマを、再び直視することの気恥ずかしさのためではなかったか。私の卒論指導教官であり昨年亡くなったM先生は、日本のロシア・アヴァンギャルド芸術研究の中心的存在であり、学生の私たちはその周辺でさまざまにロシア文学やアヴァンギャルド芸術を語りあっていた。

だが、やがて「政治と芸術」という古典的な図式で物事を考えることに、私たちはどこかの時点で飽きてしまったと思う。「スターリン体制に圧殺されたアヴァンギャルド芸術」というドラマチックな図式にもだ。何故かと言えば、これらの図式は新しい世界観を何も生産することはなく、それ以降の歴史からも切断された重苦しいアポリア以外に存在のしようがないからだ。そこからどのような出口もなく、ただ滅入るような停滞があるのみだ。 続きを読む

ハイパーリンクからソーシャルグラフへ

ここ一週間ばかりの間に、FacebookがGoogleを抜いて次世代ウェブの覇者になるのではないかとのニュースや論評(「Facebookはついに次世代ウェブの主導権を握ったのではないか?」TechCrunch  )が立て続けに米国から届いた。現在Facebookは急拡大しており、すでに会員ユーザー数月間ユニークユーザー数は5億人に迫ろうという勢い。そして先週発表されたソーシャル・プラグインなどオープン化施策によって、Googleに代わりウェブ・インフラの地位を奪取する戦略が明確になってきた。たしかにFacebookは最大のソーシャルグラフ保有者であり、この点でGoogleに対し優位に立っている。

今回発表されたソーシャル・プラグインによって、外部のサードパーティーはFacebookのデータを使い簡単に新しいサービスを生み出すことができるようになる。たとえば、Facebook内の闘病体験データをアグリゲートし、病院や医師のレーティング・サービスが生まれる可能性がある。またFacebookが新たに導入したLikeボタンによって、ウェブ上の医療情報、医療サイト、さらにリアルの医療機関に至るまで、簡単にクチコミ評価情報を集めて提供することも可能になる。従来のハイパーリンクに基づく検索サービスよりも、より的確な情報をソーシャルグラフをベースとしたサービスは提供できるだろう。 続きを読む