三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

書評:「ネットで暴走する医師たち」鳥集徹、WAVE出版

本書はいろんな意味で「話題の書」になっているらしい。当方は以前、ネット医師とか医師ブロガーと称される方々のブログをかなり集中して読んでいた時期がある。現状医療制度に対する、医師たちの本音や考え方をブログから把握したいと考えていたからだ。ところがいつのまにやら、継続して読む医師ブログはなくなってしまった。別に積極的な理由はないが、これら医師ブログは広い読者層を想定しているようには見えず、狭い医師社会内部の「内輪話」に終始しているように感じたからだ。また、どうやらマスコミを敵視する点で、これらの医師ブログは共通しているようだが、たとえば頻繁に新聞記事を引用し、その一言一句を重箱の隅をほじくるような執拗さであげつらうその”stickiness”に辟易したためでもある。

米国やヨーロッパの医師ブログは数多く読むが、日本と違うのはそれらすべてが実名で書かれている点だ。日本では実名の医師ブログは圧倒的に少ない。海外では医師のみならず、プロフェッショナルな専門職を持つ人ほど実名でブログを書いている。匿名で書くのは自由だが、匿名ゆえの気楽さは、時として自律性を欠いた言論へと暴走することもあるだろう。本書のテーマはそこにある。 続きを読む

Depression is going on

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日本の某宰相の国会答弁は、最近その「ぶれ」っぱなしの迷走ぶりが顕著だが、英国ではブラウン首相の「言い間違え」答弁が物議を醸している。

「世界は恐慌」。英国のブラウン首相が4日、国会でこう口を滑らせた。恐慌(depression)は景気後退(recession)より深刻な長期不況を指す。失業者が急増した1930年代の世界大恐慌を連想させ、企業や個人の景況感にも影響を及ぼしかねないため、首相官邸は「言い間違え」と釈明に躍起になっている。
野党・保守党のキャメロン党首との論戦中に「我々は“恐慌”脱出に向け世界全体で金融・財政政策に合意すべきだ」と発言した。「我々の知らない(恐慌の)兆候があるのか」とすかさず野党が追及し、後で首相報道官が「景気後退と言うつもりだった」と訂正するドタバタになった。(日経090204

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PracticeFusion社の衝撃

先日、NTTPCコミュニケーションズが医療情報サービス企業と組み、診療所向けにEMR(電子カルテ)システムをSaaS(Software as a Service)で提供するとの記事を読んだ。全国約9万件の診療所は、病院のような大規模なEMRを必要としないので、SaaSベースのEMRシステム提供は今後増えるだろう。しかしこの記事を読んで思い出したのは、PracticeFusion社の無料EMRシステムのことである。

米国では最近、改めて「Disruptive Innovation」(破壊的イノベーション)を実現したと同社を評価する声が高まっているが、たしかにPracticeFusionが医療IT市場に与えたインパクトは大きい。何といっても「無料」のEMRである。以前のエントリでも取り上げたことがあるが、従来、既存ベンダが提供する診療所向けEMR価格(初期投資)はおよそ2万ドル。さらにメンテナンスやアップグレードの費用が加算され、医師個人にとって負担は大きく、結局、導入コストがEMR普及の足を引っ張る要因であった。 続きを読む

成熟と老成

エスタブリッシュメント企業やメディアの方々と話をしていて、時々、まったく話が通じないことがある。インターネットに対し、いまだに妙な偏見を持っていることがわかり、シラけてしまうことも多い。予断や偏見はまだ根強く存在するのだ。

TOBYOは闘病サイトに公開された闘病者の知識や体験を活用するツールであるが、なぜかエスタブリッシュメント企業の方々は偽装闘病サイトなどに強い関心を示し、「偽装サイトをどうやって排除するのか」について執拗に聞かれることがある。まるで「ネット上にユーザーが公開したコンテンツなんか信用できるものか」と言わんばかりなのだ。つまりネガティブな粗さがしに熱心で、予断を正当化するような事実だけに注意を向けるような方々が多いのだ。 続きを読む

最近の闘病サイト動向

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TOBYO収録闘病サイトは1万2千を超えたが、全体として、闘病ネットワーク圏はどんどん拡大しているという感触がある。今年に入ってから立ち上げられた闘病サイトも多い。最近目につく主な傾向をいくつか拾ってみると、次のようになる。

  1. メンタルヘルス系闘病サイトの急増
  2. 複数サイトの使い分け
  3. 「吐き出しサイト」の増加

まず、闘病サイト全体の中で、メンタルヘルス系闘病サイトが目立って増加している。特に最近は、やはり不況を反映してか、長期病気休暇の末に職を失うケースが働き盛りの30代、40代で顕著であり、事態の深刻さが闘病サイトからうかがえる。また3番目の「吐き出しサイト」にも関連するが、うつ病などの認知療法の一環として闘病サイトを開設する闘病者も多いようだ。「ブログ療法」を医療者が勧めているケースもある。 続きを読む