以前から「医療wikiの決定版」と言われていたMedpedia。ついに先月ベータリリースされた。すでにTechCrunch「Medpediaは医師、患者ともに利用できる健康情報版のWikipedia」で取り上げられているので、詳しい情報はそっちをご参照あれ。当方も以前からこのサイトに注目してきたが、結局、医療者と一般ユーザー双方をターゲットにしている点、そしてSNS機能を付加している点がこれまでの医療wikiサイトとの際立った違いである。世界トップレベルの医療関係者が結集し「健康・医療分野の情報プラットフォームの決定版になる可能性が十分にあるだろう」とTechCrunchでも評されているが、残念ながら英語版のみである。日本でもこのような「健康医療情報の決定版プラットフォーム」を作ることはできないものか。「Medpedia Japan」。実現できれば素晴らしい。 続きを読む
カテゴリーアーカイブ: Health2.0
Health2.0論の新展開
Health2.0コンファレンス主催者であるマシュー・ホルト氏が、新しいHealth2.0論スライドを公開した。これは、HHS(米国社会保険福祉省)のNCVHS(National Committee on Vital and Health Statistics)およびAHRQ(Agency for Health Research and Quality)の会合でプレゼンテーションされたものである。
プレゼンテーションの相手が医療統計などに関わるセクションであるためか、医療統計のデータソースというアングルからHealth2.0を捉えているところに、いささか違和感を覚える。やはり従来と同じく、冒頭部分はWeb2.0から説き起こされているのだが、これも現在ではいささか古色蒼然という感もある。しかし一方では、これまでのHealth2.0論にはなかった新しいアイデアもいくつか散見される。 続きを読む
消費者ニーズと医療のマッチングサービス:HealthShoppr.com
患者・消費者の医療ニーズを考えてみると、それらは決して一様ではなく、一人ひとり個別で、しかも特殊なニーズであるはずだ。患者の性・年齢などデモグラフィック属性のみならず、患者のライフスタイルや健康意識などによっても、求められる医療は千差万別であるからだ。ところが医療提供側は、そのような多様な消費者側のニーズを無視してしまいがちである。つまり、建前として「患者の選択」を重視するようになってきたとはいえ、現実には消費者が求める医療と、医療界が提供する医療との間にはギャップが存在し、ミスマッチが起こっている。
別の言い方をすれば、消費者の医療ニーズはもともとロングテール状に存在するにもかかわらず、医療機関側はヘッド部分にのみ対応しようとしている。だが、もしも一人ひとりの医療者を可視化できるとすれば、医療提供側にもロングテールが形成されることになり、両者のテール部分をマッチングさせるサービスが登場する余地が出てくる。それはある特殊な消費者の医療ニーズに対し、それを充たす特別な技能や経歴を有する医師を紹介するようなサービスである。 続きを読む
破壊的イノベーションと医療
「破壊的イノベーション」(Disruptive Innovation)とは、ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(Harvard business school press)で展開した経営コンセプトであるが、先月、今度はこのコンセプトを医療に適用した新著「THE INNOVATOR’S PRESCRIPTION: A Disruptive Solution for Health Care」が発表された。
クリステンセンのこの新著は、早速、New York Timesが「Disruptive Innovation, Applied to Health Care」(1月31日)で取り上げている。またHealth2.0コミュニティでも注目を集めており、中心的論客スコット・シュリーブ氏は、自身のブログでクリステンセンの共著者Jason Hwang氏にインタビューを試みている。 続きを読む