d2からd3へ。AI Healthの時代へ!

2023年はLLMや生成AIが爆発的に登場した一年でした。まさに後世から「AI元年」と、人類史上にエポックを画した年として記憶されるでしょう。

思い返すと、ゼロ年代に起動した「Web2.0」「Health2.0」ムーブメントに同期する形でTOBYOをローンチしましたが、今後、AIという”Disruptive Innovation”の波がWeb医療サービスに押し寄せてくる気配です。

長らく、リニューアルもせず当方TOBYOを運営してきましたが、いよいよ新しいコンセプトで全面的な見直しを図る時期が来ました。また、長らくご愛用いただいてきた「患者ブログ調査プラットフォーム:d2」も、新たに「d3」へ進化します。

私たちのサービス進化のための新しいコンセプトは「AI Health」です。

三宅 啓

今年1年を振り返って

今年も今日が大晦日。振り返ると今年はまったくブログを更新できず、なんとこれが初エントリとなってしまった。

来年、10周年を迎えるTOBYO

ブログ更新はサボってしまったのだが、実は私達にとって、2017年は新規プロジェクトが本格的に立ち上がった重要な年であった。来年2018年に、いよいよTOBYOは10周年を迎える。この10年間に、TOBYOは国内で最大の闘病体験データベースに成長した。そしてお陰さまでここ数年は患者ブログ調査プラットフォーム「d2」の充実により、徐々に各方面からの評価をいただいてきている。ようやくネット上に放たれた膨大な量の「患者の声」を医療業界に届け、有効に利用できる環境が整いつつあると言えるだろう。

この10年にわたる私達の経路をあらためて総括してみると、もちろん多少の紆余曲折はあったものの、当初から事業開発の方向感覚はほとんど変わってきていないと思う。途中、いろんな新規SNSの登場、「クラウド、ビッグデータetc」をはじめとするバズワードの変遷、AIや自然言語処理の進化などがこの10年に起きたわけだが、時としてそれらに惑わされることも正直言って少なからずあったが、患者の言葉を集め、それらを解析する方法を磨くという基本動作を愚直にして地味に継続してきたのが、私達のTOBYOプロジェクトであった。

そうでありながら、やはりプロジェクトにとって節目となるポイントがいくつかあった。今年から本格起動した新規プロジェクトは、これまでの節目ポイントの中で最も重要なものであると考えている。実はこの新規プロジェクトの起点となるアイデアは、すでに数年前に生まれていた。しかし、それを実現する方法と技術がはっきりせず、そのまま時にまかせて温めてきたものである。そして近年のAIや自然言語処理技術の著しい進化によって、いつのまにかこのアイデアの実現を可能にさせる諸条件が整えられていることに、遅まきながら気づいたわけなのだ。

物語からファクトへ

Webに放たれた膨大な患者の言葉を解析するためには、これらテキストデータを読解し物語に耽溺するのではなく、ファクト(事実)を抽出・特定し、さらにテキストを数量化することが必要だと、私たちは当初から考えてきた。そのことを「物語(Narrative)から事実(Fact)へ」という言葉を使って説明してきた。

そしてテキストの数量化によって、医療ファクトに対する患者の評価や感情を指標化することが可能となるだろう。つまり患者の言葉による医療評価が可能となり、検査、治療、薬剤、医療者などを、文字通りの「患者視点」で比較することが可能になる。だが現時点ではまだ開発段階であり、諸事情もあり公開できないので、申し訳ないが以上のような表現に留めておきたい。

この一年間、新規開発プロジェクト起動の仕事に取り組んできて、ブログを更新するのががつい後回しになってしまった。来年は新規プロジェクトの成果も含め、TOBYOプロジェクトで得た知見をもう少しブログでお伝えしたいと考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Happenings Ten Years Time Ago

Twitter上の疾患、薬剤、関連企業の話題を可視化するツール「Tweek」登場!

TOBYO開発ブログの10年

「こんにちは。はじめまして。
三宅啓(株式会社イニシアティブ)です。
私たち、㈱イニシアティブは、医療の分野で新しいWebサービスを開発することをめざすベンチャー企業です。この度、新しい医療情報サービス「TOBYO」を、来年2月にリリースする運びとなりました。」

2006年12月18日。以上のような出だしに始まるエントリで、この「TOBYO開発ブログ」は最初の声を上げた。それから早いもので10年が経った。

10年前を振り返ると、2005年から始まったいわゆる「Web2.0」ムーブメントのインパクトを受け、それに呼応する形で「Health2.0」というムーブメントが米国西海岸を中心に、ちょうど開始されたばかりの頃であった。毎日、Health2.0を提唱したスコット・シュリーブなどビジョナリーたちのブログを読み、続々と立ち上がってくる新規サービス群が提示する新しいビジョン、新しいアイデアに驚いたり、感心したりしていたのを思い出す。 続きを読む

d2をファーマコビジランスに活かす

WEB-RADR

ヨーロッパのファーマコビジランス・プロジェクトWEB-RADR。

前回エントリが昨年11月だから、ずいぶんブログ更新が滞ってしまった。暮れ、正月はとっくに越し、すでに立春を過ぎたわけだが、2月というのに今日など異常な高温である。なんだか季節がハッキリしないのだが、とにかく当方は仕事を続けてきた。

昨年秋、患者ブログ調査プラットフォーム「d2」(ディーツー)をリリースしたが、まだ世の中に周知させる前から広く関心を頂戴し、成約もいただき、幸先良いスタートを切ることが出来た。関係者の皆さんに深く感謝している。

d2の用途と利用阻害要因

さて、いろいろな反応を頂戴する中で、最近とりわけ深く感銘を受けそして驚いたのが表題にある「ファーマコビジランス」である。d2開発の過程で、当然さまざまにユーザーの用途を想定していたのだが、このことだけは我々の盲点になっていた。否、正直に言えば、むしろd2のように患者の声を直接届けるサービスにとって、ファーマコビジランス、そして一般に有害事象(AE)報告関連にかかわる諸規制は、むしろ阻害要因になるのではないかと考えていた。

これまで製薬会社の方々からd2について、「d2で患者の声を直接聞きたいとは思うが、有害事象報告の件が・・・・」と言葉を濁されることがたびたびあった。それゆえに、有害事象関連情報を見ないですむような仕組みが必要かとも考え、実際にd2上のツールにそのような機能の実装を考えたり、あるいは他の方法で有害事象関連情報を回避することも検討した。 続きを読む

d2と医療マーケティング

近日公開予定のd2サイト・トップページ・イメージ。

長い道のりだった。この「TOBYO開発ブログ」は2006年12月から開始され、以来9年が経ち、来年にはもうまるまる10年になる。当時米国西海岸に立ち上がったHealth2.0ムーブメントと伴走しようと、患者体験共有「TOBYO」プロジェクト開発に取り組みながら、少しづつその目指すべきビジョンと方向性を固めてきた。ビジネスモデルとしてB2Bのデータサービスが必要であるとはわかっていながら、その具体像を見定めるのに手間取り、出来上がってきた初代「dimensions」には何か物足りなさを感じることさえあった。

さらにそれから、闇の中を手探りで進むような数年が過ぎ、ようやく私たちは「d2」という成果物を幸いにして作り上げることが出来た。そして再びあらためて周囲を見渡してみると、そこには10年前とはまるで違った景観が広がっていた。2005年ごろから始まったweb2.0に触発されて、おそらくHealth2.0も私達のTOBYOプロジェクトも起動されたはずだが、そのweb2.0で夢想された理想主義や予言された革命は、いつの間にかまったく別物の「現実と日常」に置き換わってしまっていた。今日あるようなSNSやコミュニティやネット世論は、当時予想された「ネットの近未来像」とは相当異なった相貌を呈していると言わなければならない。 続きを読む