【予告】新規開発プロジェクト

前駆症状探索ツール「KIZASHI」をICPE2021で発表

一昨年から始動した新規ツール開発プロジェクトは、コードネーム「Jameson」と名付けられ、患者がウエブ上に公開した膨大な体験ドキュメントに基づき、まさに「患者中心医療」を実現するためのツールとして開発が続いている。
「Jameson」で開発が予定されているのは以下のシステムおよびツール群である。

  1. 患者満足度指標
  2. 前駆症状探索ツール「KIZASHI」
  3. ペイシェントジャーニーマップ「PJM」
  4. 仮想アンケート調査システム「Assessment」

このうち前期症状探索ツール「KIZASHI」を国際薬剤疫学会(ISPE)が主催するICPE2021(国際薬剤疫学会学術集会)でこの夏、中外製薬様と共同で発表した。(上図)。今後、Jameonプロジェクトの内容、開発状況を逐次詳しく報告していく予定。ご期待ください。

三宅 啓  INITIATIVE INC

TOBYOプロジェクトの新展開

ずいぶんしばらくぶりです。ご無沙汰しています。皆さん、お元気ですか。
振り返ってみると、なんとまるまる二年間も当ブログを放置していたことになります。しかし、ご安心ください。当方TOBYOプロジェクトは健在であり、間違いなく前進しており、この間も様々な成果を上げてきています。
では、「かくも長き不在」は何故か?と問われれば、ここニ三年急に進展してきたネットの変質に嫌気がさしたとでも答えることになりそうですね。いずれきちんとした形でこれについては説明したいと考えています。とにかくブログやTwitterで発言することが億劫になってしまいました。Facebookは身辺雑記を中心にときどき投稿していましたが、かつてのように「ソーシャルメディアで情報共有万歳!」みたいな能天気な発言をする時代でもなくなりました。
この現実をどう受け止めてどう対処していくか、いつまでも口をつぐんでいるわけにもいかないので、まづはブログを再開し、少しづつ考えをまとめていきたいと思います。 続きを読む

今年1年を振り返って

今年も今日が大晦日。振り返ると今年はまったくブログを更新できず、なんとこれが初エントリとなってしまった。

来年、10周年を迎えるTOBYO

ブログ更新はサボってしまったのだが、実は私達にとって、2017年は新規プロジェクトが本格的に立ち上がった重要な年であった。来年2018年に、いよいよTOBYOは10周年を迎える。この10年間に、TOBYOは国内で最大の闘病体験データベースに成長した。そしてお陰さまでここ数年は患者ブログ調査プラットフォーム「d2」の充実により、徐々に各方面からの評価をいただいてきている。ようやくネット上に放たれた膨大な量の「患者の声」を医療業界に届け、有効に利用できる環境が整いつつあると言えるだろう。

この10年にわたる私達の経路をあらためて総括してみると、もちろん多少の紆余曲折はあったものの、当初から事業開発の方向感覚はほとんど変わってきていないと思う。途中、いろんな新規SNSの登場、「クラウド、ビッグデータetc」をはじめとするバズワードの変遷、AIや自然言語処理の進化などがこの10年に起きたわけだが、時としてそれらに惑わされることも正直言って少なからずあったが、患者の言葉を集め、それらを解析する方法を磨くという基本動作を愚直にして地味に継続してきたのが、私達のTOBYOプロジェクトであった。

そうでありながら、やはりプロジェクトにとって節目となるポイントがいくつかあった。今年から本格起動した新規プロジェクトは、これまでの節目ポイントの中で最も重要なものであると考えている。実はこの新規プロジェクトの起点となるアイデアは、すでに数年前に生まれていた。しかし、それを実現する方法と技術がはっきりせず、そのまま時にまかせて温めてきたものである。そして近年のAIや自然言語処理技術の著しい進化によって、いつのまにかこのアイデアの実現を可能にさせる諸条件が整えられていることに、遅まきながら気づいたわけなのだ。

物語からファクトへ

Webに放たれた膨大な患者の言葉を解析するためには、これらテキストデータを読解し物語に耽溺するのではなく、ファクト(事実)を抽出・特定し、さらにテキストを数量化することが必要だと、私たちは当初から考えてきた。そのことを「物語(Narrative)から事実(Fact)へ」という言葉を使って説明してきた。

そしてテキストの数量化によって、医療ファクトに対する患者の評価や感情を指標化することが可能となるだろう。つまり患者の言葉による医療評価が可能となり、検査、治療、薬剤、医療者などを、文字通りの「患者視点」で比較することが可能になる。だが現時点ではまだ開発段階であり、諸事情もあり公開できないので、申し訳ないが以上のような表現に留めておきたい。

この一年間、新規開発プロジェクト起動の仕事に取り組んできて、ブログを更新するのががつい後回しになってしまった。来年は新規プロジェクトの成果も含め、TOBYOプロジェクトで得た知見をもう少しブログでお伝えしたいと考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Happenings Ten Years Time Ago

Twitter上の疾患、薬剤、関連企業の話題を可視化するツール「Tweek」登場!

TOBYO開発ブログの10年

「こんにちは。はじめまして。
三宅啓(株式会社イニシアティブ)です。
私たち、㈱イニシアティブは、医療の分野で新しいWebサービスを開発することをめざすベンチャー企業です。この度、新しい医療情報サービス「TOBYO」を、来年2月にリリースする運びとなりました。」

2006年12月18日。以上のような出だしに始まるエントリで、この「TOBYO開発ブログ」は最初の声を上げた。それから早いもので10年が経った。

10年前を振り返ると、2005年から始まったいわゆる「Web2.0」ムーブメントのインパクトを受け、それに呼応する形で「Health2.0」というムーブメントが米国西海岸を中心に、ちょうど開始されたばかりの頃であった。毎日、Health2.0を提唱したスコット・シュリーブなどビジョナリーたちのブログを読み、続々と立ち上がってくる新規サービス群が提示する新しいビジョン、新しいアイデアに驚いたり、感心したりしていたのを思い出す。 続きを読む

国際薬剤疫学会でTOBYOが紹介されます

国際薬剤疫学会(ISPE)主催の第32回ICPE(国際薬剤疫学と危機管理会議)が今月25日からアイルランドの首都ダブリンで開催される。その最終日28日(日)、コンベンションセンター・ダブリン・オーディトリアムにおいて、日本から「Analysis of Patient Narratives in Disease Blog」と題する研究発表が実施されることが決まった。

このプレゼンテーションはTOBYOデータベースに蓄積された患者体験データに基づき、中外製薬のプロジェクトチーム「EpiMAX」の皆さんによって行われる。EpiMAXの皆さんは、TOBYOに蓄積された患者体験データがいわゆる「リアルワールドデータ」の一つであり、ファーマコビジランスに役立つ有用なデータであると考察されている。

率直に言って、このような視点は私達にとって意外ではあったが、従来の患者体験データ観に再定義をもたらす重要な示唆を含むものであった。従来、ともすれば「闘病記」という特殊性を重んじる観点、さらに「当事者性」を過度に評価する観点から、患者体験を論じる風潮が強かったのだが、今回、データそれ自体として闘病体験を分析し、ファーマコビジランスに活用する道が提起され、国際学会で研究報告されることはまさに画期的である。そして、それが日本から世界へ報告されるということも、たいへん誇らしいことである。

ここ数年、製薬業界を中心としてRWD(リアルワールドデータ)という言葉が語られる場面が多くなっている。これはレセプトやDPCのデータのように、データベースに蓄積された診療情報、診療報酬情報、特定健診情報、薬局調剤情報、介護保険など、実診療に関わるデータのことを指している。つまり従来の臨床試験や市販後調査ではなく、既に存在する「実世界」のデータを積極的に活用していこうとする機運がにわかに高まってきているわけだ。

もちろん、「リアルワールド」は一つのデータベースによってすべて網羅されるはずはなく、現存する様々なデータベースを相互に補完し、組み合わせ、その結果として全体像が構成されてくるものである。その意味でTOBYOの患者体験データは「リアルワールドデータ」を構成するものの一つであり、他のデータベースにリアルな患者体験データを付加する役割を期待されていると言えよう。

今回、国際学会で日本から新しいファーマコビジランスの取り組みが提起され、TOBYOが紹介されるのはたいへん光栄であり誇りに思う。

中外製薬EpiMAXの皆さんには深く感謝したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.