2012/5/16 水曜日 - 17:38:55 by 三宅 啓

TOBYOプロジェクトの「第三の商品」として、近々、病名別検索エンジン「V-search」(上図はロゴ)が登場する。「V-search」の「V」とはバーティカル(Vertical)検索の「V」であり、また、患者の声(Voice)の「V」である。これは、たとえば胃がん患者の闘病体験だけとか、子宮頚がん患者の闘病体験だけとかというように、ある病名に限定したバーティカル検索を実現する検索エンジンである。「V-search」という名前からも連想されるように、dimensionsの「X-search」を元に単独の検索サービスとして新たにリリースする。
すでに「X-search」では、TOBYO収録の約1100病名から一つをユーザーが自由に選び、個別にバーティカル検索することができる。これに対し「V-search」の方は、あらかじめ決められた病名(複数)の検索を提供することになる。また現在、TOBYOではプロジェクト初期のバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」をテスト公開しているが、「V-search」はこれとは違い、「X-search」で開発された新規検索エンジンと新規データセットを使用している。
「V-search」は医療情報提供サービス・サイト、メディア・サイト、疾患啓発サイト、ウェブ制作会社などでの利用を想定している。たとえば、「胃がん情報ページ」などで実際に体験した患者の声を紹介したい時に、この検索エンジン「V-search」を設置すれば、簡単にしかも大量の患者の声を提供することができる。またAPIを介して当方検索サーバと交信するので、出力イメージ、デザインなど設置サイト側の要望に柔軟に対応できる。 »もっと読む・・・ »
2012/5/11 金曜日 - 20:58:43 by 三宅 啓

「『オープンであること』が支配力を再分配する。」
(「パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ」P282、ジェフ・ジャービス著、NHK出版)
ソーシャルメディアにおいて消費者は、以前は秘匿していたはずのプライベート情報を大胆に公開し始めている。「どこで、どんな商品を、いくらで買ったか。他の商品と比較してその商品の使い心地はどうか、商品に満足しているか」など、以前はわざわざ「消費者調査」を実施し、質問して回答を集めなければ得られなかったようなデータが、今やウェブ上に大量にあふれる状態になっている。すでにウェブ上に公開された情報をていねいに集めれば、あらためてレガシーな「消費者調査」をする必要はなくなっている。
「価格変動、価格差別化、経済指標、商品や店のトレンド。こうした買い物データを小売店の手から取り上げ、その情報を集合としての買い物客の手に渡す---かつて秘密だったその他の公開データと同じように。すると力が消費者に移る。」(同上)
消費者ひとりひとりがソーシャルメディアを通じて自分の買物行動をオープンにしていくと、やがてそれらをアグリゲートし「買い物データベース」として提供するようなサービスが出てくるだろう。従来、流通チェーンはPOSをはじめとする販売データシステムを構築してきたわけだが、これとは逆に、消費者が自分の購買データをウェブに公開することによって、POSなど「販売」側と対抗するようなオープンな「購買データシステム」が出来上がることが考えられる。この購買データシステムによって消費者は、たとえばこれまであまり知り得なかった「売れ筋商品、死に筋商品」などの傾向実態を知って、自分の買い物に活かすことができるようになるだろう。このようにして、消費者のバイイングパワーは強化されるだろう。
これまで消費者は、企業、行政、メディアなどから、さまざまな手法でその意識と行動を計測されデータ化されてきた。そうして集められたデータはすべてが公開されるわけもなく、消費者は自分に関するデータを集められながら、それらデータすべてにアクセスし利用することはできなかった。消費者は「データ収集の対象」であっても、「データを利用するユーザー」ではなかった。自分たちのデータであっても、それを自由に使うことはできなかった。だが、ウェブは消費者に自分たちのデータをオープンにすることを可能にし、それらのデータ集積は、やがて企業、行政などが保有するデータシステムと対抗的に成長していくだろう。
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2012/5/6 日曜日 - 23:24:48 by 三宅 啓

この連休もようやく昨日から5月らしい晴天になった。ところで当方、あいにく体調が悪く、自宅蟄居状態の日々を過ごしていた。どこへ出歩くということもなかったが、雨模様の合間に、妻と新宿へ映画「裏切りのサーカス」を見に行った。この映画は良かった。淡々とシーンを重ね上げる寡黙な作りの映像に好感を持った。ストーリーよりも絵(映像)が良いので、ただじっと見とれていた。あとは自宅で音楽を聞き、本を読み、部屋の片づけをやり、石神井公園を散歩し、あれこれ事業の今後を考えるうちに連休は終わった。
そのあいだも社会は動いている。厚労省は癌患者情報の医療機関による報告義務づけ構想を発表した(日経5月2日「がん情報 全国一元化 病院に登録義務、厚労省検討 」)。
国が集めたがん情報は当面、国立がん研究センターが一元管理する。患者数や生存率の統計はホームページなどを通じて一般市民でも入手できるようになる。将来的にはがんになった際、自分に適した治療法や医療機関を調べる情報源とすることを厚労省は検討している。患者や病院は国や都道府県を通じて情報を提供してもらう。例えば、データベースを通じて症状ごとに治療経験が豊富な病院がいち早く分かれば、患者の早期治療につながる効果が期待できる。
とのことであるが、これまで正確な癌患者数など基礎データ把握さえおこなわれていなかったとは・・・驚かざるを得ない。遅まきながらもデータを収集し公開することに異存はないが、データ公開の方法は「国立がん研究センター」など政府系サイトを通じてではなく、ぜひ海外の「オープンガバメント」のやりかたを研究してもらいたい。すなわち政府系サイトを作るのではなく、データを一般に公開する方法を採用すべきだ。 »もっと読む・・・ »
2012/4/27 金曜日 - 21:20:12 by 三宅 啓

前回エントリ「患者エンゲージメント」で「患者の感情の指標化」ということに触れたが、最近、このことをあれこれ考える機会が多い。特に私たちが注目してきた患者体験ドキュメントの基本性格というものは、「患者感情の表出」を抜きに考えることはできない。
私たちはこれまで、患者体験ドキュメントを患者が体験した「事実」を中心に見てきた。従来、どうしても「闘病記」という言葉で表されるドキュメントには、ある種の過剰な思い入れがつきまとい、それは時として「センチメンタルな物語」という形式に矮小化されてしまい、患者が体験した「事実」の客観的な意味を見失わせてしまいがちであった。
そうであるからこのブログでは、事実の連続体として患者体験ドキュメントを捉え、とりわけ固有名詞に注目し、なるだけセンチメントから距離をおくことを再三表明してきたわけだ。やがて、その成果はdimensionsというツールに実を結ぶ事になる。dimensionsは固有名詞をキイとして事実を抽出し集計するデータ・ツールである。 »もっと読む・・・ »
2012/4/19 木曜日 - 19:57:18 by 三宅 啓

昨年後半頃からだろうか、患者エンゲージメント(Patient Engagement)という言葉が、海外、特に米国の医療関係ブログやメディアなどで盛んに使われはじめ、今やバズワードになっている。だがその中身ははっきりしない。明確な定義もないままに、勝手に言葉だけが一人歩きしているような具合である。
調べてみると、どうやら2006年に米国広告リサーチ協会が新しい広告効果指標としてこの「エンゲージメント」を提唱したことが発端になっているようだ。マスメディア時代のレガシー広告指標に代わるものとして「エンゲージメント」が登場したわけだが、これは従来のともすればクライアント発想に立つ「リーチ、フリーケンシー、GRP」など効果指標を、消費者の主体的な態度としての「ブランドへの愛着、きずな」などブランドと消費者の関係性に関わる「感情の指標化」をめざすものであった。
このようにもともと広告やコミュニケーションの新しい効果指標として登場した「エンゲージメント」だが、その後、マーケティング調査会社などで医療分野でも「患者エンゲージメント」として研究開発がおこなわれてきた。たとえば、世論調査で有名なギャラップ社も患者エンゲージメント調査に積極的に取組んでいる。ギャラップ社の場合、ピッカー研究所が開発した患者経験調査をもとに数年前から米国政府が実施している全国病院患者経験調査(HCAHPS)に、独自の患者エンゲージメント指標を加えた調査サービスを医療プロバイダーに提供している。
このギャラップ社の調査サービスにおいても、やはり患者の医療機関に対する感情的な結びつきを明らかにすることが調査目的に挙げられている。これらは従来の満足度調査や経験調査に代わる、新しい消費者(患者)調査として構想されているようだ。つまり、患者や消費者のブランドに対する態度測定尺度は「満足-経験-エンゲージメント」と移動してきており、それにともない高度な患者エンゲージメントを創造することが医療機関の主要マーケティング課題になってきているとされる。 »もっと読む・・・ »