dimensionsと日本の医療マーケティングの現状

Gyoen_promenade_summer

いろいろなところへお邪魔し、Mac Book Airでプレゼンしているが、相手先プロジェクタとのマッチングに手間取ることがある。ほとんどの企業ではXGAがデフォルトの解像度設定であり、WXGAなどワイド画面対応はまだ少ないようだ。春以来、プレゼンはすべてKeynoteのワイドモード画面で作っているので、今更、「4:3」画面に戻るのもめんどうだし、Lionの新機能を使って、複数のデスクトップ間とアプリ全画面表示をスピーディーに切り替えたり、Safariでページを高速移動することができず、テンポのある見せ方ができなくなってしまう。困ったものだ。

さて、この夏、dimensionsのサービス構成を見なおしてきた。いろいろな方々からのご要望を傾聴し、また価格メニューなどはっきりしていなかった部分を明確化した。それによって、dimensionsのサービスメニューは大きく「dimensions BASIC」と「dimensions CUSTOM」に分けることになった。

「BASIC」では、広大な闘病ユニバースの中を、ユーザーが縦横に探索するための汎用ツールを提供する。当面の提供ツールはディスティラーとX-サーチだが、これは今後増やしていきたい。「CUSTOM」だが、こっちは文字通り、カスタム・ソリューションのためのデータ集計および出力などのサービス群から成っている。二つにサービスを分けることは、これまでもぼんやりとイメージしていたのだが、あらためて明確化したほうが良いと判斷した。

このBASICとCUSTOMの関係だが、まずBASICでユーザーに目的とするデータの大まかなあたりをつけてもらい、その上でもっと深い専門的なデータの分析・出力をCUSTOMでリクエストしてもらう、というようなイメージだ。また、ユーザーには患者体験の継続傾聴によって、現場感覚を暗黙知として蓄積してもらい、さらにそれを専門エキスパートの支援を得て形式知化するというような、「暗黙知-形式知」のダイナミックな知識創造の場を提供したいということもある。

従来、私たちはどうしても「BASIC」だけを焦点化してしまいがちであったが、TOBYOで可視化した3万サイト400万ページのデータを、少数のツールだけに閉じ込めておくのはもったいない。むしろこれら膨大なデータを多数の専門プレイヤーに開放し、そのことでさまざまな高付加価値サービスが生まれるほうが良いかもしれない。膨大な患者体験データ集積をコアとする生態系の誕生こそが求められているのだ。このような患者体験データのエコシステムが創造されることによって、真に現状医療を「参加型医療」や「患者中心医療」へ変えることができるのだと確信するに至った。

あくまで「BASIC」サービスを採用したユーザーに限定する形になるが、「CUSTOM」では定期レポート、テキストマイニング、各種ランキング、ウイークリー短信など、多様なサービスが利用出来るようにしたい。そのためにさまざまなプレイヤーの参画を求めたい。

ところで、たとえば医療マーケティングということを考えてみても、現状は医師をターゲットとするサービス群が多数登場している反面、患者マーケティングのサービスは少ない。医師の声を傾聴したり集めたりするサービスは多いが、患者の声を傾聴するサービスはほとんどなかった。つまりこの国の医療マーケティングは、圧倒的に「医師中心マーケティング」に偏っていたのだ。さまざまなインセンティブが作られ、医師マーケティングにマネーが集まるような企画やサービスやチャネルは誕生したが、本来中心にあるべき患者へ向けたマーケティングについてはどうだったろうか。このような日本の医療マーケティングの跛行性をどう考えればよいのだろうか。実際、「相手が医師ならいくらでも金は払うが、患者には・・・・」という関係者のつぶやきを聞いたこともある。

だが、そのような現実を嘆く必要はない。これまでなかったのなら、これから「患者中心マーケティング」を作ればよい。闘病ユニバースを起点に、闘病体験エコシステムをつくることで、いずれ患者中心マーケティングが徐々に力を持つようになるだろう。しかし「患者中心マーケティング」という言い方も、考えてみるとおかしな言い方だ。医療マーケティングとは、もともと医療の最終顧客である患者が中心に位置することが、当たり前の前提だからである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


dimensionsと日本の医療マーケティングの現状” への1件のコメント

  1. “この国の医療マーケティングは、圧倒的に「医師中心マーケティング」に偏っていた”というのは、同感です。

    私も、2003年ごろ、”患者指向のマーケティング戦略(Patient Oriented Marketing)”をやっていましたが、なかなか広まりませんでした。私の所属している製薬業界は、当時も、今も、「医師中心マーケティング」に偏っているようです。

    http://www.box.net/shared/jymz8j7xp1

    一歩進めて、「患者中心マーケティング」というのは面白いですね。頑張ってください。他の業界では、当たり前のことです。

若杉 徹 にコメントする コメントをキャンセル

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