カードベースのPHR: MiCARD


今日の米国主要メディアは、すべて「Google Health」パイロットテストの話題を取り上げている。昨日エントリーをポストした後で当方が気がついたのは、このパイロットテストが、外部医療機関に分散する個人医療情報をGoogle Healthへアグリゲートする実験であることだ。その点を少し考えてみると、Google HealthがマイクロソフトHealth Vaultやインテル陣営のDOSSIAと、今後、提携医療機関の獲得を巡る競争に突入することが想定される。

また、今回のGoogleのテストパイロットに関し、「GoogleのEHRへの進出」という報じ方をしている業界ニュースサイトやブログが散見されたことも見逃せないことである。つまり、いまだに「医療情報システム」の概念構造が不分明であり、その概念規定が十分周知されたものではないために、PHRとEHRさえもが混同される現実があることを示している。たしかに、「同じ医療情報システムが、ある観点から見ればPHRに見え、また別の観点から見ればEHRに見える」ということが現に起きているわけである。

このような現状を見れば、「Google Health」のみならず、PHR自体が混迷と混乱の只中にあると言わざるを得ない。無論、PHRとEHRを分けるものは技術的差異であるはずもなく、それはこれからの「医療」を、どの地点に立ち、どの方向へ視線を投げかけて透視するか、という「医療観」の問題であるはずだ。たとえば「Consumer-Driven Healthcare」という医療観がシンプルに定立されたときに、おそらくPHRという発想が初めて生まれたのだ、というコンテクストが理解できるかどうかなのだ。

ところで今回紹介する「MiCARD」は、カードベースの何の変哲もないPHR。緊急時にカードベースの情報利用ができ、また、ウェブ上で個人医療情報を保存できるオンラインPHRも使える。カードはやや厚めのICカード上に小型ディスプレイを装備し、次のような個人医療情報をカード上で確認できる。(冒頭プロモーション・ムービー参照)

  • 重大な病状
  • 本人写真
  • 血液型
  • 医師情報
  • 薬物と用量
  • アレルギー
  • 医療保険情報
  • メガネ、コンタクトレンズ処方データ
  • 予防接種

このような商品を見ていると、「PHRとはなんぞや」という真面目な議論が、何か思いっきり、はぐらかされるような気分になる。だが、「PHRの混迷」というものも、実はこのような「フツウ」の商品が具体的に多数登場する中で、徐々に整理され見通しが開けてゆくものだと思う。だから、どのようなPHRも「つまらない」と切って捨てることはできない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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