PHR:Google Healthテスト開始

Ghealth

しばらく話題のなかったGoogle Healthだが、今月末、オーランドで開かれる「MIHSS 08」コンファレンスで、Googleエリック・シュミットCEOのキイノート・スピーチが予定されており、ここで大々的にローンチを発表するのではないかとの噂がもっぱらである。だが、すでに、早くもパイロット・テスト計画は始動しているようだ。本日の米国yahoo!NEWSに掲載された「 Google to store patients’ health records」によれば、Googleは、なんとクリーブランド・クリニックと組んで、患者医療情報の蓄積パイロット・テストを近々開始する。

「このパイロット・テストは木曜日にアナウンスされるだろうが、クリーブランド・クリニックの1500人から1万人程度のボランティア患者が参加し、Googleの新サービスから彼らの医療情報を取り出せるようにするために個人医療情報を電送する。これらの情報は決して一般に公開されない」

「処方箋、アレルギー、そして病歴を含むそれぞれの健康プロファイルは、eメールやパーソナル検索ツールのような、他のGoogleのサービスを使う時に必要なパスワードで守られる予定」

クリーブランド・クリニックと言えば全米でもメイヨー・クリニックと並ぶトップブランド医療機関だが、そう言えば先日、メイヨーがマイクロソフトのHealthVaultに参加を表明したこともあり、Googleとしてもメイヨーと同格の協力パートナーを見つける必要があったのだろう。さらに、クリーブランド・クリニックがすでに簡易版のPHRを持っていたことも、今回提携の大きな要因だったと思われる。クリーブランド・クリニックは、自院患者向けに「MyChart」と名付けられたPHRを持っており、すでに12万人が登録している。GoogleとしてはこのPHRデータを利用できれば、一からGoogleHealthテスト参加者を集める必要が省けるわけだ。

Googleのマリッサ・メイヤーVPはクリーブランド・クリニック首脳に対し、「われわれは、患者が、彼ら自身の医療情報に容易にアクセスでき、それを管理できるようにすべきだと信じている。」と語ったという。これは、「MyChart」に情報登録している患者が、将来、クリーブランド・クリニックを離れても適切な医療を受けられるようにすべきだ、との意味合いを持ち、Googleによるクリーブランド・クリニック説得のための中心ロジックだったようだ。これに対しクリーブランド・クリニックのマーチン・ハリスCIOは、「より効果的で効率的な国民医療情報システムを創造するために、われわれはGoogleと共に仕事をする決断をした。」と述べている。

ところでこのGoogleHealthのニュースとほぼ同時に、皮肉にもプライバシー団体「世界プライバシー・フォーラム」が20日、「Personal Health Records: Why Many PHRs Threaten Privacy」と題する、PHR関係者に冷水を浴びせるレポートを発表して話題になっている。

同フォーラムのパム・ディクソン事務局長によれば、PHRを管理しているサードパーティーのウェブサイトは、プライバシーとセキュリティに関する連邦法の支配下にない可能性があるらしい。同事務局長はこのことを消費者に警告し、次のように述べている。

「オンラインPHRのサインアップ時点で考慮すべき最も重要な事柄は、そのベンダーがHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)にカバーされているか、もしくはHIPAAに準拠しているかである。たいていのケースでは、PHRサービスを運用するテクノロジーやネット関連の企業は、HIPAAの医療プライバシー・ルールに制約されないのであり、彼らのプライバシー・ポリシーはいつでも改変できるのである」

このように述べた上、さらに同事務局長は、消費者の個人医療情報がマーケティング目的で流用され使用される危険性を指摘している。

PHRとプライバシー保護の問題は常に論争の的になってきたが、PHRの有用性と、次世代医療における重要な位置が次第に周知されてきた今日、ここで徹底的に議論して、今後のために社会的なコンセンサス作りを進めていくほうが良いだろう。だが最早、「プライバシーとセキュリティ」という「呪文」を唱え、脊髄反応的なイデオロギー反応をするような時代でもあるまい。従来とは違う、生産的で開放的な議論のテーブル作りが必要だと思う。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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