近未来に、SNSは空気のようなものになる?

以前から、当方がよく読んで参考にしているSteve Rubel氏のブログ「Micro Persuasion」に、“The Promise and Peril of Ubiquitous Community”というエントリがポストされた。来週号AdAge誌のコラムに掲載されるようだが、SNSを中心に近未来のウェブ進化を論じたものである。

このエントリでは、今日のSNSが実現しているようなソーシャル機能が、やがて「ウェブ全体のソーシャル化」によってユビキタス化される、というビジョンが提起されている。つまり、特定のSNSサイトを訪問することによって提供されているソーシャル機能やコミュニティ機能が、いずれ「空気を呼吸するように」、ウェブ上のどこにユーザーがいようとも、いつでも即座に利用できるようになるはずだと予測しているのである。

実はこれはSteve Rubel氏のオリジナル・シナリオではなく、フォレスターリサーチ社のアナリストであるCharlene Li氏が、この三月に発表したレポート”The future of social networks: Social networks will be like air”に触発されて書かれたものだという。この論考をまとめたプレゼン・スライドを上に掲出しておく。Charlene Li氏も、以前から当方が注目していたビジョナリーであり、彼女のブログもずいぶん勉強させてもらってきた。

スライドを一通り見てもらえばCharlene Li氏予測の概要はわかるが、あえて注目しておきたいのは、スライド24ページ目にある「Evolution of open platforms」である。ここでは1990年代初頭から2013年までの時間軸上に、各時期の支配的なコンセプトが示されている。

  • 1990年代初頭: Walled garden service
  • 1990年代末: Portal aggregators
  • 2003年: Search freedom
  • 2008-9年: Data portability
  • 2013年: Ubiquitous social networks

まず1990年代初頭は「Walled garden」の時代であり、Prodigy、Compuserve、そしてAOLなどが主導権を握っていた。それらは1990年代末には「Portal aggregators」へと進化し、
Yahoo!、MSN、そしてAOLなど巨大ポータルが主役となる。だがこの時代は結局、次の「検索主導時代」へと扉を開く役割を担い、ウェブ上のすべての情報リソースを利用可能とするような検索サービスとしてGoogleが登場する。そこから現在に至るまで、大規模SNSが闊歩する時代になったのだが、これをCharlene Li氏は「1990年代初頭の”Walled garden”期へと退化してしまった時代」と見ているのが面白い。そう言えば、現代の巨大SNSに対して、昨年Steve Rubel氏が「Walled Garden」と批判していたことが思い出される。

この批判以降、米国の一部からSNSの閉鎖的な「ユーザー囲い込み」に対する批判が強まり、それが昨年9月の「ソーシャルウェブ・ユーザー権利章典」(A Bill of Rights for Users of the Social Web) 発表へとつながって行く。(Steve Rubel氏は章典起草メンバーに名を連ねている)。そして、これらの動きは「Data portability」問題を顕在化させることになったのだ。

さて、「Walled Garden」へと退化していると見なされてしまった巨大SNSだが、今後、衰退することが予測されている。では巨大SNSにかわって、次代のウェブを支配する者はいったい誰なのか?。Charlene Li氏によれば、それは再び「ポータル」であり、その顔ぶれはYahoo!、Microsoft、GoogleそしてAOLになるだろうというのである。スライド20ページ目では、Yahoo!を例にとり、ポータルがいかにSNSと連携を取りやすいかを例証している。

現在のSNSが過去「Walled Garden」であり、これからまたまたポータルが再起するとなれば、これは文字通り「歴史は繰り返す」ということではないか。これを乱暴に要約してみると、「Walled Garden→Portal→Search」という進化サイクルをインターネットの歴史は繰り返していることになる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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